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CEO Talks e-tron ~Future is an Attitude~ #5 パイオニア 代表取締役 兼 社長執行役員 矢原史朗さん《後編》
2022年に4回にわたり連載してきた、アウディ ジャパンのブランドディレクター、マティアス・シェーパースさんと異業種企業の社長がSDGsについて、Audi e-Tronに乗りながら語り合う「CEO Talks e-tron ~Future is an Attitude~」。今回はシリーズ初の自動車関連業界の社長同士の対談となる。サステナブルなクルマ作りを最重要課題とするアウディと、カーナビなどの車載機開発からクルマのデータを活用したソリューションサービスの提供まで行うパイオニア。両者は具体的にどのようなモビリティの未来像を描いているのか? シェーパースさんとパイオニアの代表取締役兼社長執行役員の矢原史朗さんが本音でとことん語り合った。
CEO Talks e-tron ~Future is an Attitude~ #5《前編》はコチラ
CEO Talks e-tron ~Future is an Attitude~ #5
第1回
サステナブルな未来へ、アウディとポーラが描くビジョンとは【CEO Talks e-tron #1《前編》】
第2回
自然環境を大切にするアウディと星野リゾートとの共通点とは?【CEO Talks e-tron #2《前編》】
第3回
アウディと山本山の「未来を大事にする組織づくり」とは?【CEO Talks e-tron #3《前編》】
第4回
クルマと食、アウディとカルビーはそれぞれどう社会と向き合うのか?【CEO Talks e-tron #4《前編》】
モノ×コト、EVは未来の移動体験をどう変えていくのか?
シェーパースさん オーディオのようなホームエンターテインメントから始まり、クルマのインフォテインメントの世界へとスイッチしてきたパイオニアですが、ここから次は何を目指すのでしょう?
矢原さん いまは改革の真っ最中です。私は4年前にパイオニアに入社したのですが、その頃から標榜しているひとつの言葉があるんです。それは「モノ×コト」という言葉です。
シェーパースさん 「モノからコトへ」という言葉は一時期よく聞きましたが。
矢原さん 「モノからコトへ」だと、モノづくりのことはいったん忘れてコトにシフトしていこうというニュアンスになってしまいます。そうではないなと。パイオニアの強みは、高品質なモノづくりです。その強みを生かせば、環境やSDGsに対してもっと強くアプローチできる。ただそれにはコト、つまりサービスを掛け合わせる必要があるんじゃないかと考えたわけです。せっかく我々はクルマの車内空間という非常にいいスペースを与えられているわけですからね。
シェーパースさん モノというハードウェアに注力しつつ、ソフトウェアで各種のサービスを提供するということでしょうか。
矢原さん そうです。たとえばカーナビのような車載機から得られるさまざまなデータをクラウドにあげ、外部のデータと掛け合わせる。こうすることで、ユーザーはもちろん、ある業種のお客様に対して、非常に有益なデータソリューションを提供できるはずです。パイオニアのモノづくりの強さを生かすためにも、外部のサービス事業に携わってきたエキスパートなどにも参画してもらい、そうした商品や事業モデルの開発を進めているところです。
シェーパースさん なるほど。
矢原さん 最近私たちは企業ビジョンを「Creating the Future of Mobility Experiences(未来の移動体験を創ります)」と新しくしました。モビリティの未来に、脱炭素は最重要項目です。パイオニアも当然そこを一層進めてまいります。生産過程や物流、販売などの面で脱炭素化をはかるのはもちろん、会社としてもっと大きな社会的インパクトを与えることはできないかと考えています。
シェーパースさん 具体的にはどのような取り組みがあるのでしょう。
矢原さん 車載機でいえば、軽量で省エネ型の電気自動車用スピーカーの開発などが例として挙げられます。またユーザーが電気自動車を使うときにどれだけ脱炭素にシフトできるかをテーマとした技術や商品の開発を日々行っています。具体的には、移動するクルマ、それは2輪車でもいいのですが、それがリアルタイムでクラウドに送信するデータを活用して、ユーザーの目的にかなった解決策を提供するサービスを提案することです。バッテリーEVの残存電池量を考慮しながら目的地までの最適ルーティングをアルゴリズムで提案することなども一つの例ですね。途中で充電が必要かどうか、必要な場合はどこの充電設備に立ち寄るのが最適か、といったようなストレスフリーなレコメンデーションを出すアルゴリズムで、パイオニアが長年構築してきたカーナビのノウハウやIPを生かしたいと考えています。
シェーパースさん とても共感できるお話です。クルマのお話でいうと、電動化だけでなく、AIなどのデジタル技術や自動運転の技術の開発が進んでいます。こうしたテクノロジーをどのように生かしていくかにモビリティの未来がある。それと同時に、自動車ブランドとして、若い世代に対してアプローチすることも大事だと考えています。常に進化を続けるアウディのストーリーを持続的に伝え、かつ体験してもらえるような打ち出しですね。もちろんサステナブルに配慮したプレミアム自動車ブランドであることを伝えていきたい。
矢原さん 若い世代向けの試みとしては、カロッツェリアブランドをはじめとしたカーエレクトロニクス商品開発で培ってきた知見を生かし、快適で安心な運転をサポートするスマートフォン専用カーナビアプリ「COCCHi(コッチ)」を23年9月にローンチしました。助手席目線のわかりやすいルート案内、またCO2排出量を可視化してエコドライブもサポートするアプリで、搭載が増えているディスプレイオーディオと連携するスマートフォンアプリとして展開しています。アプリなので、若い世代の方々にとって親和性があり、カーシェア、中古車などさまざまな車利用シーンでの活用を想定しています。また誰もがモビリティ分野における脱炭素への一歩を気軽に踏み出せる仕組みをつくる、カーボンニュートラル実現に向けた取り組み「Pioneer Green Mobility Program」を推進しています。こちらは、独自の燃費/電力消費率推定技術などを活用したクラウドプラットフォーム「Piomatix for Green」により、自動車のCO2排出量を可視化し、 CO2排出削減につながるEVへの切り替えやシェアモビリティなどの提案、貢献インパクトを可視化するソリューションも提供するというものです。こうした商品やソリューションを通して、モビリティにおけるパイオニアというブランドを打ち出していきたいですね。
シェーパースさん ところで矢原さんは何台も電気自動車を乗り継いでいらっしゃるということですが、どのような点にメリットを感じていらっしゃいますか?
矢原さん 環境に優しいクルマに乗っているという気持ちの良さに加えて、加速を含めた走行性能の優位性、さらにお財布に優しいなど、いろんなところで感じています。私は自宅に充電設備があるので、とくにメリットを感じるのかもしれません。
シェーパースさん 矢原さんと違って自宅に充電設備がない方だと、電気自動車の充電に対して不安に感じる部分があると思うんです。そこでアウディはこの2年間、日本において急速充電のネットワークを構築することに力を傾けてきました。誰かがスタートするのを待っていても意味がない。やっぱり自分たちがイメージする未来に対して投資するのが我々のやり方ですから。ただ1社では普及スピードに限界があるため、「プレミアム チャージング アライアンス(PCA)」として、ポルシェ、フォルクスワーゲンと組み、3ブランドのディーラーネットワークを中心に、プレミアム充電サービスを展開しています。将来的にはクルマ業界じゃないパートナーともコラボできればとも考えています。また急速充電とはどういうものかを皆さんにアピールするため、24年にはアジアでは初の「アウディ チャージング ハブ」をスタートさせます。ここは都市型の急速充電ステーションとして、どのメーカーの電気自動車ユーザーでも使えるように設計しています。
矢原さん それは素晴らしい。電気自動車の普及は、充電インフラの整備が一番の鍵だというところで、そこまで踏み込んでご投資をしてらっしゃるということが、感銘を受けました。
シェーパースさん 電気自動車は商品として大きく進化していますし、さらなる無限の可能性も秘めているんですよ。100年以上クルマを作ってきた我々は自信を持ってそう言い切れる。走りを大切にしてきたアウディのDNAや今までのコンセプトを犠牲にせず作っていますし、今まで以上にデザインの美しいクルマが作れます。また今後、自動運転が当たり前になってきたときにも、電気自動車だからこそ、よりラグジュアリーな車内空間も作れると思うんです。飛行機のビジネスクラスやファーストクラス、あるいは移動する別荘みたいな。いずれは寝ながらA地点からB地点まで行けるような時代もやってくるでしょう。運転を楽しみたかったけれど、今日は渋滞だからリラックスしようなんて。そうした世界のスタートに電気自動車があると考えています。
矢原さん 先ほど申し上げた当社の企業ビジョン、「未来の移動体験を創ります」にもリンクしてくるお話ですね。たとえばオーディオでスタートした当社ですから、当然カーオーディオにすごく力を入れています。釈迦に説法ですが、バッテリーEVとなるとクルマのシャーシ設計も、これまでのエンジンを搭載した内燃機関の車とは違ってきますよね。そうなると、スピーカーを置く適正な位置、あるいはチューニングの仕方も変わってくる。我々にはそのあたりのプロフェッショナルがたくさんいますから、アウディさんのように、バッテリーEVにどんどん転換されているメーカーさんに協力できることは多いんじゃないのかなと考えています。
シェーパースさん ぜひとも一緒にモビリティの未来を創造していきましょう。本日はありがとうございました。
今回乗ったクルマはコチラ
Audi Q8 e-tronアウディの電気自動車の頂点に立つ、Audi Q8 e-tron。写真のAudi Q8 Sportback e-tronは、アウディの正統的なSUVの力強さと、リヤに向かって美しく弧を描く流麗なシルエットを兼ね備えたモデルだ。フロア下に敷き詰められた駆動用バッテリーは114kWhの大容量で、走りの効率性を高めたエアロダイナミクスや優れたエネルギー回生システムにより、一充電走行距離501㎞を実現している。再生ポリエステル繊維を用いたダイナミカとレザーのスポーツシートや、プラスチック廃棄物を再生したシートベルトカバーなど、高い質感と環境への配慮を両立したインテリアも魅力だ。全長4915×全幅1935×全高1620㎜、最高出力300kW、最大トルク664Nm。1317万円〜。 Audi e-tronスペシャルサイト
マティアス・シェーパースさん
1975年東京生まれ。国際基督教大学卒業、経営学(MBA)修士。2002年にアウディ(ドイツ)入社後、アウディジャパンに出向。営業、ネットワーク開発、販売店などの責任者を歴任し、2018年にはアウディ フォルクスワーゲン台湾社長としてフォルクスワーゲン グループ販売法人社長とアウディブランドの責任者を務めた。2021年、アウディ ジャパン社長とフォルクスワーゲン グループ ジャパン代表取締役社長を兼務、現職に至る。
矢原史朗さん
1961年愛媛県生まれ。東京大学経済学部卒業、ミシガン大学MBA取得(1993年)。大手商社の自動車部門を経て、GEグループに入社。その後ベインキャピタルジャパンではさまざまな事業会社のトップを歴任。産業ガスの大手、日本エア・リキード社長を5年間務めたのち、2019年にパイオニア入社。20年1月より現職。
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撮影=仲山宏樹 文=吉田 巌(十万馬力)