挑戦を掲げるアウディとパイオニアが描くモビリティの未来とは?

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シェーパースさんと矢原史朗さん

CEO Talks e-tron ~Future is an Attitude~ #5
パイオニア 代表取締役 兼 社長執行役員 矢原史朗さん《前編》

2022年に4回にわたり連載してきた、アウディ ジャパンのブランドディレクター、マティアス・シェーパースさんと異業種企業の社長がSDGsについて、Audi e-Tronに乗りながら語り合う「CEO Talks e-tron ~Future is an Attitude~」。今回はシリーズ初の自動車関連業界の社長同士の対談となる。サステナブルなクルマ作りを最重要課題とするアウディと、カーナビなどの車載機開発からクルマのデータを活用したソリューションサービスの提供まで行うパイオニア。両者は具体的にどのようなモビリティの未来像を描いているのか? シェーパースさんとパイオニアの代表取締役兼社長執行役員の矢原史朗さんが本音でとことん語り合った。

CEO Talks e-tron ~Future is an Attitude~ #5《後編》はコチラ

未来に対して挑戦を恐れないことが大切

シェーパースさん

シェーパースさん こんにちは。本日はどうぞよろしくお願いいたします。先ほどQ8 e-tronに試乗していただきましたが、ご感想はいかがですか。

矢原さん とても洗練されたデザインで、乗り心地も非常に上質です。走るスイートルームみたいな高級感がありますね。かなり気に入りました。

シェーパースさん ありがとうございます。ご存じの通り、Q8 e-tronはアウディが初めて出した電気自動車e-tronの後継モデルとして今年発売したフラッグシップモデルです。アウディは現在「Future is an Attitude(未来は考え方ひとつ)」というブランドビジョンを掲げています。そこには“未来に対して挑戦を恐れない”という意味も込められているのですが、それを最も体現した商品のひとつだと自負しています。御社のパイオニアという名前にも一脈通じるものがあるのではないでしょうか。

矢原さん 私は電気自動車を乗り継いでいますが、Q8 e-tronはラグジュアリーな乗り心地のうちにも、たしかに今までの電気自動車の限界を打ち破ろうという精神が感じられ、そこに当社の気風と通じるものがあるなと感じました。

シェーパースさん パイオニアさんは今年創業85周年ですよね。

矢原さん そうです。パイオニアという名前は、もともとは創業者の松本 望が、1937年に発売した家庭用のダイナミックスピーカー「A-8」のために考え出した商標です。その後、オーディオシステム全般を手がけるようになり、世界初の製品も数々作りだしてきました。一世を風靡したレーザーディスクカラオケも当社が開発したものです。

シェーパースさん レーザーディスクカラオケはパイオニアの発明だったのですか。

矢原さん プラズマテレビに挑戦したこともありました。ディスクジョッキー用の機材も私どもが開発したものが多く、PIONEER DJの製品は今なお世界で圧倒的なマーケットシェアを誇っています。じつは市販用のカーナビゲーションも、パイオニアが世界で初めて開発したんですよ。

シェーパースさん 市販用カーナビもパイオニアが先駆だったとは。そういえば海外では市販のカーナビはほとんどないんですよね。メーカー純正のカーナビか、もしくは最近はスマホのカーナビソフトを使う人が多くて。

矢原さん 日本は道路事情が非常に特殊でして。確かにスマホのカーナビを使っているユーザーさんもたくさんいらっしゃるんですが、やはり画面の小ささや、あるいはそれを使っている間に他のスマホ機能が使いづらいといったことを気にする方も多く、日本の道路事情に特化した市販のカーナビ製品が安定して売れているんです。

矢原さん

シェーパースさん 自動車開発史の中でアウディは様々な革新を起こしてきました。パイオニアの強みも、創業以来のパイオニアスピリットで常に新しいイノベーションを起こしてきた点にあると考えています。

矢原さん 世界初の製品を数多く開発してきたDNAは社員の中にしっかり根付いています。ただデジタル社会になって世界初のハードウェア製品を生み出すのは以前よりも難しくなってきているように思います。現在パイオニアはカーナビをはじめとする自動車用インフォテインメントの分野とオーディオシステムに特化して商品開発をしていますが、これからは高品質のハードウェアに新たなソフトウェアを組み込む形で、世界初のユーザーエクスペリエンスを提案しようと考えています。そのためには、アウディさんのFuture is an Attitudeではありませんが、失敗を恐れずにチャレンジしよう、自分の組織の殻に閉じこもらないようにしようなどということを、普段から社員と対話しています。

シェーパースさん お話を聞いていると、パイオニアとアウディのDNAはますます似ているような感じがします。アウディは1971年以来、「Vorsprung durch Technik(技術による先進)」をブランドスローガンとしています。Vorsprung というのは、一歩リードする・前進するという意味で、つまりは、常にチャレンジして既成概念を壊していこうと意味ですね。アウディはフォルクスワーゲングループから買収された後、ただの生産工場になりかけていた時期があります。そのとき技術者たちが奮起して開発したのが『アウディ80』でした。これがブレークしたおかげでアウディブランドは生き残ることができたんです。その後もフルタイム4WDでWRCを席巻したり、ル・マン24時間レースではディーゼルエンジンで初めてガソリンエンジンに勝利するなど、モータースポーツの常識を変えてきました。こうしたチャレンジスピリットがパイオニアさんと似ていると感じるんです。

矢原さん そうですね。85年もの長い歴史を持つ企業、しかも電機業界となりますと、わりとコンサバディブな体質となるところが多いかもしれませんが、当社は違います。一人一人の社員に、パイオニアたれという精神が息づいている。ちなみに私の座右の銘は「Control your own destiny or someone else will(運命は自分で決めよ。さもないと誰かに決められてしまう)」。以前、私はGEゼネラルエレクトリック社に勤めていまして、これは当時のジャック・ウェルチ会長がよく話されていた言葉です。もともとパイオニアにはそうした気風があるのですが、今後はますます、社会の変化に反応する後出しではなく、自分たちが社会をこうしていきたいというメッセージを強く打ち出せるように、商品開発をしていきたいと考えています。

今回乗ったクルマはコチラ

Audi Q8 e-tron
Audi Q8 e-tron

アウディの電気自動車の頂点に立つ、Audi Q8 e-tron。写真のAudi Q8 Sportback e-tronは、アウディの正統的なSUVの力強さと、リヤに向かって美しく弧を描く流麗なシルエットを兼ね備えたモデルだ。フロア下に敷き詰められた駆動用バッテリーは114kWhの大容量で、走りの効率性を高めたエアロダイナミクスや優れたエネルギー回生システムにより、一充電走行距離501㎞を実現している。再生ポリエステル繊維を用いたダイナミカとレザーのスポーツシートや、プラスチック廃棄物を再生したシートベルトカバーなど、高い質感と環境への配慮を両立したインテリアも魅力だ。全長4915×全幅1935×全高1620㎜、最高出力300kW、最大トルク664Nm。1317万円〜。
Audi e-tronスペシャルサイト

 
マティアス・シェーパースさん

マティアス・シェーパースさん

1975年東京生まれ。国際基督教大学卒業、経営学(MBA)修士。2002年にアウディ(ドイツ)入社後、アウディジャパンに出向。営業、ネットワーク開発、販売店などの責任者を歴任し、2018年にはアウディ フォルクスワーゲン台湾社長としてフォルクスワーゲン グループ販売法人社長とアウディブランドの責任者を務めた。2021年、アウディ ジャパン社長とフォルクスワーゲン グループ ジャパン代表取締役社長を兼務、現職に至る。



矢原史朗さん

矢原史朗さん

1961年愛媛県生まれ。東京大学経済学部卒業、ミシガン大学MBA取得(1993年)。大手商社の自動車部門を経て、GEグループに入社。その後ベインキャピタルジャパンではさまざまな事業会社のトップを歴任。産業ガスの大手、日本エア・リキード社長を5年間務めたのち、2019年にパイオニア入社。20年1月より現職。


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撮影=仲山宏樹 文=吉田 巌(十万馬力)

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