PR
CEO Talks e-tron ~Future is an attitude~ #2 星野リゾート代表・星野佳路 さん《前編》
持続可能な開発のため2015年に策定されたSDGsは、到達目標の2030年に向けていま加速度を上げる。シリーズ第2回は、アウディ ジャパンのブランドディレクター、マティアス シェーパースさんと星野リゾート代表の星野佳路さんとが対談する。訪れたのは軽井沢。リゾート運営と自動車というそれぞれのビジネスにおいて、変わりつつある時代や価値観に向き合い、進める自然環境への配慮やSDGsへの取り組みとは。
CEO Talks e-tron ~Future is an attitude~ #2
※第1回の記事はこちらから
CEO Talks × e-tron ~Future is an Attitude 未来は 考え方ひとつ。~ 《前編》
自然環境を大切にするアウディと星野リゾートとの共通点とは?
シェーパースさん 今回「星のや軽井沢」に伺うのを楽しみにしていました。どうぞよろしくお願いします。
星野さん 早速ですが、私は電気自動車に乗っていて、今朝役場に充電に行ったら見慣れないアウディが止まっていてビックリしましたよ。
シェーパースさん 週末にちょっと使ったので、こちらに着いたらチャージするつもりでした。星野さんはもともと電気自動車に興味があったんですか?
星野さん 乗り始めたのはもう20年ほど前です。水力発電をやる中で、夜中の余剰電力を使うのにいいんじゃないかと。でも当時は性能が劣っていて諦めました。近年実用レベルになったので自分でも乗りながら、チャージ施設を東京周辺の旅館やホテルすべてに設置する予定で進めています。インフラとしてそれだけ顧客のニーズも増えてきているし、今後も増え続けるのは確実です。
シェーパースさん さすがですね。アウディのディーラーでもチャージャーを積極的に導入し、ガソリンスタンドみたいに使えるように計画しています。急速充電器の使用料金はかかりますが、コーヒーを飲みながらチャージできるし、サービスもいい。ディーラーにとってもお客様と触れ合うチャンスが増え、特に電気自動車は女性のお客様の興味が高く、ご満足いただけると思います。ところで水力発電の話がありましたが、SDGsにはどのように取り組まれてきたのでしょう。
星野さん じつはSDGsという言葉に私は違和感を覚えていて、流行しているPRワードという印象があります。そこで社内で議論して生まれたのが“勝手にSDGs”というワードです。もともとやるべきことは取り組んできたし、言われてやるのではなく価値観に合う内容だけ勝手にやっているというスタンス。星のや軽井沢は、地熱利用で暖房を賄って灯油の購入はゼロです。
シェーパースさん それは素晴らしいですね。そうした取り組みはグループ全体で?
星野さん そうです。地域によって変わりますが、沖縄の竹富島では太陽光発電で海水を淡水化する装置を備え、ペットボトルをすべて廃止し、災害時にも島内で水を供給する体制を整えています。これもSDGs的ですが、そういう言葉がなくても私たちは自分の価値観としてやらざるをえない。例えば、離島の場合にはペットボトルは、わざわざ運んできて、再び島外に運んで捨てるという無駄なコストがかかります。ですから私たちは、ただ環境に良いからというのだけではなく、コスト削減になり、環境にもプラスになる。この両立が達成できることに取り組んでいます。そうでないと、結局不景気になったらコストがかかる環境対策はすぐにやめようとなりかねない。利益にするまで創意工夫して考えてレベルを上げることを我々のSDGs取り組みの基準にしています。
シェーパースさん アウディもSDGsという言葉が生まれる前から環境に負荷をかけないクルマ作りを進め、工場をカーボンニュートラルにしたり、42万枚のパネルを備えたドイツ最大のメガソーラーを作り、ヨーロッパ各国でも風力発電所に投資しています。電気自動車をただ作って売るだけじゃなく、その後のバリューチェーンにどう貢献するか。そうしたSDGsに積極的に取り組んでいます。
星野さん 私たちも、どうして環境対策をやっているのかとよく聞かれます。それは単に好きなんですよね。快感があるというか。地面を掘ってパイプを通すと地熱で暖房ができちゃうとか楽しいし、お客様への付加価値にもなる。そういう面白さでやっているところがあります。あそこをどうやってエネルギーフリーにしようとか、カーボンニュートラルにしようかという発想。各地の地域性や自然環境を踏まえて、現場の発想から生まれる創意工夫の楽しさを味わっています。
シェーパースさん 気持ちはすごく分かります。おっしゃる通り、楽しくなければ積極的になれないし、長続きもしないですから。それもリゾート的だし、まさに“勝手にSDGs”ですね。
消費者が自然とSDGsに関われる商品開発、設備投資へ
星野さん 電気自動車については、それで旅行する人をどうサポートしようかと考え始めています。これまでは排気ガスや音の関係で駐車場も離していましたが、電気自動車って家電ですからね。そのまま部屋に入れても問題ないと捉えると、どうあるべきかと。
シェーパースさん 客室にクルマを停めてベッドが横にあるなんてことが起こりうる。
星野さん スタッフが荷物をお部屋まで運ぶという概念が変わります。車内がクローゼットになったようなもので、ホテルの部屋も変わるし、電気自動車になった途端に様々な発想が生まれ、劇的な変化がある気がします。
シェーパースさん 電気自動車っていうのはデザインにも大きな影響があって、居住空間としてものすごく使いやすくなります。アウディも電気自動車の次のステップは自動運転と捉え、ビジネスクラスみたいなリクライニングシートで4人がゆったり過ごせるようなコンセプトカーを発表しています。
星野さん 滞在中にチャージしながら、家電としてクルマの機能を使う。これができてくると旅のスタイルや提供するサービスも大きく変わります。近い将来、電気自動車専用のグランピングリゾートが出てくる可能性もあると考えています。
シェーパースさん そこまで電気自動車に積極的とは知りませんでした。でもそうした変化はわかりやすいのですが、SDGsへの取り組みは伝えにくいのも正直なところです。
星野さん 環境にいいホテルを作ったので泊まってくださいと言っても、現時点ではそれだけでは泊まる理由にはなりづらいです。
シェーパースさん 確かに自動車業界でも、シートにペットボトルをリサイクルしたマテリアルを使っても言われなければ分からないし、それを選ぶ満足感が得られても購入までには到りません。でもアウディのお客様には、そういうクルマに乗ることが自分の価値観の表現になることを伝えたいと思います。特に「星野や軽井沢」に来られるインターナショナルなカスタマーもそうではないですか。
星野さん そうですね。先進的な環境対策は、直接の集客に効かなくてもブランドロイヤリティを高める効果はあると思います。この春アメニティの廃止についてアンケートを実施し、その中で使い捨ての歯ブラシを置くことをやめて、上質なものをショップで販売することについて顧客はどう思うか調査しました。するとすでに歯ブラシを持参している方が48%ぐらいいらした一方で、こういう対策にネガティブに回答した、方も3割いました。しかし、7割は同意し、むしろホテルに対する印象が良くなるという結果が出ました。こういう情報をぜひ業界全体に共有したいと考えています。それこそSDGsとして取り組むべきことで、日本全国のホテルで部屋に歯ブラシを置くことをやめませんかと。
シェーパースさん 海外では歯ブラシはほとんど置いてないですからね。
星野さん そうなんですよ。日本でも一律に置くということを考え直す時だと思っています。
シェーパースさん それにみんなでやらないとあまり意味がないですしね。
星野さん こういう環境対策は、ホテル間の競争のネタにしてはいけないと思っています。せっかく環境のことに取り組んでいくのだから、そこに皆で踏み切ろうということを呼びかけています。
シェーパースさん それは電気自動車のインフラ整備も同じで、先日発表したプレミアム チャージ アライアンスではポルシェと一緒になり、両者のディーラーでチャージできるようにしたことでスケールメリットとともに、利便性も増しました。そういった流れを作っていきたいですね。
>>>後編に続く
今回乗ったクルマはコチラ
Audi RS e-tron GTEV初のRSモデル「Audi RS e-tron GT」は、未来のグランツーリスモの姿をアウディ流に解釈したモデル。サステイナビリティを強く意識したコンセプト、エモーショナルなデザイン、パワフルな駆動システム、ダイナミックなハンドリングがこのクルマの特徴を明確に表現している。ドライブコンセプトだけではなく、ベーリンガーホフ工場におけるすべての生産工程が、カーボンニュートラルな方法で行われている。全長4,990×全幅1,965×全高1,395 mm、最高出力475kW、最大トルク830Nm、一充電走行距離534km(WLTCモード)。1,799万円~ Audi e-tronスペシャルサイト
マティアス・シェーパースさん
1975年東京生まれ。国際基督教大学卒業後、NIMBAS経営大学経営学(MBA)修士課程修了。2002年にアウディ(ドイツ)入社後、アウディジャパンに出向。ロジスティックはじめ、東南アジアや日本のマネジャーを務め、アウディ フォルクスワーゲン台湾社長から昨年アウディ ジャパン社長を経て、今年フォルクスワーゲン グループ ジャパン代表取締役社長と現職の兼任に。
星野リゾート代表 星野佳路さん
1960年生まれ。長野県出身。慶応義塾大学経済学部を卒業後、米国コーネル大学ホテル経営大学院修士課程修了。1991年星野温泉(現在の星野リゾート)社長(現在の代表)に就任。所有と運営を一体とする日本の観光産業でいち早く運営特化戦略をとり、運営サービスを提供するビジネスモデルへ転換。国内外でテレワークを実践するとともに、年間60日以上のスキー滑走を目指し、今年はすでに達成した。
撮影=仲山宏樹 文=柴田 充