舘ひろし&柴田恭兵が語る「タカ&ユージ、それから愛。」

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2016年の映画『さらば あぶない刑事』から8年の時を越えて、タカこと鷹山敏樹と、ユージこと大下勇次が帰ってくる!! 1986年にテレビドラマとしてスタートしてから40年近く支持を集め、劇場版も5月24日に公開される『帰ってきた あぶない刑事』が8作目。主演の舘 ひろしさんと柴田恭兵さんのお二人が、全く新しくなった「あぶ刑事」の世界観やこだわり、スタイリングのポイント、そして70代を迎えて向き合うタカとユージへの思いを語る。

あの2人が、帰ってきた!
舘 ひろし&柴田恭兵

タカ&ユージ、それから愛。

舘ひろしさん&柴田恭兵さん

かつてない「あぶない刑事」の誕生

M.E. 前作『さらば あぶない刑事』でお別れかと思われた、ダンディー鷹山とセクシー大下が帰ってきます!!

舘 これまでの「あぶない刑事」とは全く違った「あぶない刑事」が出来上がったと思いますね。監督は、テレビシリーズの「あぶない刑事」で仕事をともにした原 隆仁監督のご子息の原 廣利監督。カメラマンも若手で、スタッフも一新。昔はワンカットで撮るのがよしとされていましたが、今回はアクションシーンも細かくカット割りされていて映像も新しいし、引きの画がすごく大胆。テンポ感も全く違う。

柴田 「またやりましょう」という話を頂いたとき、どんなストーリーになるのか聞いてみると、タカかユージか、どちらかわからないけれど、娘が登場すると。若き日の二人が一人の女性を本気で愛した、そういう女性に会ったっていう芝居は今までなかった。これまでの「あぶない刑事」は、ミサイルが飛んだり、大型タンカーを二人で止めたり、バカバカしくて荒唐無稽なところが楽しめましたが、今回は見終わった後に少し心に残るというか、今までとは違うタカとユージの人を愛する根っこの部分の想いとか、余韻を感じてもらえるんじゃないでしょうか。

M.E. “お約束”のアクションシーンを期待されているファンも多いかと?

柴田 舘さんがバイクでショットガンをぶっ放すシーン、今までで一番カッコいいですよ。迫力があってダンディーだし、惚れ直しました(笑)。

舘 ガンアクションとか背景とか、撮りたいイメージを僕からリクエストしたんです。いつも言うんだけど、芝居の担当は恭サマで、僕は芝居以外(笑)。「あぶない刑事」を建物に例えるなら僕は土台で、上物のデザインやコミカルな部分は恭サマが作っていく。そこはあまり変わっていないと思います。

柴田 僕はギャグや笑いやアドリブもいっぱい打ちたいほうなので、外れても打ち続ける(笑)。コメディな部分とシリアスな部分とのバランスを取る難しさはありましたね。シリアスになり過ぎても「あぶ刑事」っぽくないし。アクションシーンでは、CGを使える時代ですが、舘さんも僕もなるべく生身で体を張って。次の日、ボロボロでしたけどね。

M.E. 撮影前に肉体的な準備もされた?

舘 体を動かすのはゴルフだけ。普段通りなものだから、ワンカット撮り終わるたびにハアハアしてましたよ(笑)。

柴田 コロナ中は好きな野球もできなかったし、以前は舘さんとゴルフをご一緒することもありましたが、ご自身の事務所を設立されてからお忙しくて。

M.E. 21年に石原プロモーションの解散を受けて、舘プロを設立されました。どんな変化がおありでしょう?

舘 あんまり変わらないですよ。若い俳優も所属していますから、彼らに頑張ってもらって左団扇といければ(笑)。

M.E. 若手俳優に受け継いでいこうという意識もあるのでしょうか?

舘 僕は全くそういうのないですね。俳優って皆それぞれの個性がありますから。それに僕は芝居に関して教えることはないですね。教わることが多いので、偉そうなことは何も言わないです。

M.E. ご謙遜されていますが2018年の映画『終わった人』では日本の映画賞のみならず、モントリオール世界映画祭で最優秀男優賞に輝かれました。

舘 そういう賞を頂けるタイプじゃないですが、ラッキーでした(笑)。

M.E. 受け継いでいく意識については、柴田さんはいかがですか?

柴田 現場に行くと俳優さんだけでなく、スタッフも自分の息子娘世代ですから、優しくというか、温かい感じでいつも現場にいるようにしていますね。今、ふと思い出したんですが、僕が初めてテレビに出たときに石原裕次郎さん、渡 哲也さんと絡むシーンがあって、終わってから裕次郎さんに「ウチに来ないか?」とお誘いを受けたことがありました。当時は東京キッドブラザースという劇団に所属していて実現することはなかったんですが、でも嬉しかったですよ。「あぶない刑事」が始まってから、また裕次郎さんにお会いした際「ひろしを頼むぞ」って言われたことも思い出しました(笑)。

「タカのアクションシーン、迫力があってダンディで惚れ直しました」
――Kyohei Shibata as “YUJI”

 
柴田恭兵さん


コンサバVSモード系、タカとユージの着こなしのポイント

M.E. お二人の劇中の衣装や着こなしについても伺いたいのですが。

舘 僕は相変わらずコンサバなスーツ。保守的な洋服が自分でも好きですね。今回、ダブルも着ていますが、基本的には拳銃が出しやすいシングル。靴は音をさせないようにラバーソール。そういう機能性は意識します。トレンチコートは、長い付き合いの “仕立屋銀次”ことテット・オムの加藤和孝に何年か前に作ってもらったもの。長さといいシルエットといい、彼が作るトレンチコートは世界で一番素敵だと思います。このトレンチコートが、ステラ・リーという吉瀬美智子さんが演じる謎めいた女性とのシーンで、いい仕事をするんです。アドリブ的にやったことなんですが、気に入っているシーンですね。

柴田 僕は今回も山地正倫周さんのRYNSHUの服。ちょっと危険なニオイがして、生地にも凝っていて。以前、オペラ座の地下で行われたRYNSHUのパリコレのランウェイにも出たことがあるんです。身に着けるだけで演じるときの気分が全然違う。ユージに入りやすくなりますね。

M.E. タカが思わぬ腕時計の使い方をするシーンもありますね。

舘 あれはジェームズ・ボンド(笑)。007の初期の『ドクター・ノオ』とか『ロシアより愛をこめて』とか、ショーン・コネリーのアクションはずいぶん参考にさせてもらっています。コルトガバメントの撃ち方は『ゲッタウェイ』のスティーブ・マックイーンだし。芝居以外の部分にはロマンを感じて、いろいろやるわけですよ(笑)。

「恭サマがいるから安心していい加減なことばっかりやって。でも、それが楽しいんです」
――Hiroshi Tachi as “TAKA”

 
舘 ひろしさん


「あぶ刑事」誕生当時の今だから言える話

舘 「あぶない刑事」って、最初作ったときすごく新しかった。それまでの刑事モノって必ず悲壮感が漂っているのが良しとされてきたんですが、それを全否定した。文化的大事業だったと思ってるんですよ。

M.E. 「あぶ刑事」には、開始当初はもちろん、今もそこはかとなく昭和のニオイが漂っているのも魅力かと。

舘 昭和って何? ってことですけど、人間関係が“濡れてる”感じがする。今みたいに割り切ってドライじゃなくて。それがよく思えてきたんじゃないかな。

柴田 スマホのない時代には、ちゃんと向き合って想いを伝えて、っていう。それはとてもいい時代だったし、大事なことなんじゃないかと思いますね。

舘 そんな時代に、ハコぐらいあるでっかい携帯電話を撮影現場に持ち込んで、デートの約束とかしてたなあ(笑)。

柴田 僕は台本読んでて「舘さん、このシーンどうします?」って聞いたら、「今、それどころじゃない」って(笑)。

舘 その頃は遊ぶのが楽しくて、台本を全部読んでる暇がなくてね。

柴田 だから犯人だと思ったらすぐ撃っちゃう、わざと泳がすシーンでも(笑)。

舘 恭サマがいるから安心していい加減なことばっかりやっていたよ。でも、それが楽しかったんだよね。現場が楽しくないと、絶対作品も楽しくないと思う。現場で笑っちゃって何度NG出したか分からないもんね。

M.E. 8年前のインタビューの際、60代で「あぶ刑事」をやるよりも70代でやったほうがいいものができるんじゃないか、とおっしゃっていたんですが、実際70代を迎えて、いかがでしたか?

舘 恭サマも、ふたりが白髪になってやったらきっと楽しいよって言ってたよね。今回やってみて、こういうことだな、というのは分かった。悲壮感を全否定していたけど、ちょっとだけペーソスが入るとか、ちょっと濡れた感情の部分があるとか。そういうものを入れてもいい年齢になったのかなと。

柴田 プロデューサーの黒澤 満さん、長谷部安春監督、カメラマンの仙元誠三さん、殺陣師の高瀬将嗣さんという、「あぶない刑事」を作りあげてくださった4人が亡くなっているんです。見守ってくれてありがとうございましたという思いがあるし、40年近く応援してくださった人たちへの恩返しで、素敵な作品ができてよかったなと思っています。

舘 その感謝の気持ちの上に、全く新しい「あぶない刑事」が出来上がっているんだと思いますね。



『帰ってきた あぶない刑事』

『帰ってきた あぶない刑事』
©2024「帰ってきた あぶない刑事」製作委員会

刑事を定年退職し、ニュージーランドで探偵として第二の人生をスタートさせたタカとユージだったが、8年後、現地の警察官と問題を起こし、横浜に舞い戻って探偵事務所を開く。依頼人第一号として現れたのは、二人どちらかの娘かもしれない永峰彩夏(土屋太鳳)。母の夏子を探して欲しいとの依頼。かつて夏子とタカ&ユージとはどんな関わりが? チャイニーズマフィア、謎めいた美女ステラ・リー、元銀星会組長の息子が企てる横浜カジノ構想に絡むテロ計画……、二人の周辺に危険な香りが立ちこめ、久々のハマでのショータイムの幕が開く!! 真山 薫(浅野温子)、町田 透(仲村トオル)ほかお馴染みの顔ぶれに加え、吉瀬美智子、岸谷五朗、西野七瀬、早乙女太一らの新たなキャラクターも「あぶ刑事」の世界観を彩る。5/24(金)ロードショー。




これまでと全く違う「あぶ刑事」、映像もテンポ感も新しくて大胆。かすかな愛の余韻も。

舘 ひろしさん&柴田恭兵さん
【舘さん】スーツ19万300円/タリアトーレ、シャツ2万7500円/ギ ローバー(以上トレメッツォ) チーフ6600円/ブリッラ ペル イル グスト(以上ビームスF) タイ〈スタイリスト私物〉


舘 ひろし Hiroshi Tachi
1950年愛知県生まれ。高校時代はラグビー部で活躍。’74年オートバイチーム「クールス」を結成。’76年映画『暴力教室』で俳優デビュー。82年ドラマ「西部警察」(テレビ朝日)出演をきっかけに、’83年石原プロモーション入社。’86年にスタートした「あぶない刑事」(日本テレビ)で柴田恭兵とダブル主演、大きな人気を集める。2018年映画『終わった人』でモントリオール世界映画祭最優秀男優賞受賞。’21年石原プロモーション解散に伴い、舘プロを設立。

柴田恭兵 Kyohei Shibata
1951年静岡県生まれ。サラリーマン時代を経て、’75年「東京キッドブラザース」に入団、ミュージカル『十月は黄昏の国』で舞台デビュー。’77年「大都会PARTII」(日本テレビ)でテレビドラマ初出演。’86年にスタートした「あぶない刑事」(日本テレビ)で舘 ひろしとダブル主演、大きな人気を集める。その後も多くのドラマ、映画に出演。シリアスな演技からコミカルな役柄まで、また現代劇から時代劇まで、高い演技力に定評がある。



[MEN’S EX Spring 2024の記事を再構成](スタッフクレジットは本誌に記載)
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