あなたが高級時計に求めるものはなんだろうか？　もしそれが、歴史とクラフツマンシップに裏打ちされた普遍的美しさであるならば、ブランパンの「ヴィルレ」は間違いなく、想像以上の喜びをあなたにもたらしてくれるはずだ。王道ドレスウォッチの佇まいに秘められた伝統と進化、そしてあらゆる細部に宿る職人の叡智。その全容をつまびらかにしよう。

繊細にデザインの再解釈を行なったマスターピース

ブランパンがスイス・ジュラ地方のヴィルレ村で創業したのは1735年のこと。現存する機械式時計ブランドのなかで世界最古を誇る、老舗中の老舗である。マニュファクチュールとして290年以上の歴史を刻んできた同社。その叡智を結集して生まれたドレスウォッチコレクションが、創業地の名を冠した「ヴィルレ」だ。モデル名の初出は2003年だが、そのルーツは1980年代に遡る。

クォーツショックという荒波の中でもがきながら、機械式時計の復権に向けてスイスの名門がさまざまな挑戦を行っていた当時。ブランパンは、時計師のクラフツマンシップを託す６本の複雑機構時計を発表する。それらは機械式時計復興の旗印として本格時計業界に大きな希望を与え、後に「シックス マスターピース」と称されることとなった。そんな記念碑的名作のDNAを受け継ぐのが「ヴィルレ」なのである。

そして今年、同コレクションのデザインを再解釈した計16種の後継リファレンスが誕生。クラシック＆エレガンスを基調としたデザインコードは引き継ぎつつ細部が丹念に見直され、いっそう研ぎ澄まされた美しさを宿す顔つきにアップデートされた。ムーンフェイズの造形まで精緻に描き込まれたデザイン画を見れば、いかに入魂の作であるかがよくわかるだろう。以下、その詳細を見てみよう。

卓越した技巧美を継承しつつ、細部に磨きをかけた造形に注目

活き活きとした表情を浮かべる18Kゴールド製ムーンフェイズ

月相を表示するムーンフェイズには、古来のスタンダードに則って顔を描くのが「ヴィルレ」流。しかもその表情が実に味わい深い。くっきりとした眉に、流し目のような視線。ふくよかな鼻と口元。今にも語りかけてきそうな、活き活きとした様子が魅力だ。それを可能にするのはもちろん、精緻な表現を可能にする至高の職人技である。

インデックスの面ごとに仕上げを変える精巧さ

アプライドインデックスをよく見ると、表面はテクスチャーのあるサテン仕上げ、側面はピカピカに磨き上げられたポリッシュ仕上げと、２種類のフィニッシュを使い分けていることがわかる。これが光を受けて立体的な造形美を描き出し、文字盤の存在感に貢献。ちなみに今回の新作では12時表示をローマ数字からJBロゴに変更し、さらにアイコニックな顔つきに。また時分針は従来くり抜きの意匠が施されていたが、今作では夜光を採用。

オープンワークが美しいレッドゴールド製ローター

ムーブメントの駆動を観賞できるシースルーバックを採用しているのは従来どおり。贅沢に18Kレッドゴールドを採用しているのも同様だが、新作ではJBロゴを印象的に効かせたくり抜きのデザインを取り入れている。ここにもサテンとポリッシュ2種類の仕上げが使い分けられ、芸術的なまでに美しい姿を実現している。「ヴィルレ コンプリートカレンダー」に採用されるアンダーラグコレクター（ラグの下に隠されたスイッチを押して各表示を調整できる特許取得機構）も健在だ。

日常のあらゆるシーンを彩る「ヴィルレ」の輝き

柔和なエレガンスでビジネススタイルに洗練を

さてここからは、新作「ヴィルレ」コレクションから4本をピックアップして、そのスタイリング例をご紹介したい。まずは最もシンプルなSSケースの「ヴィルレ ウルトラスリム」。タイドアップしたクラシックスーツにマッチするのはいわずもがなだが、実はノータイのビジネスカジュアルにもよく映える。要因は、控えめでありながら柔和さも備えた顔つきだろう。40mmという適度なケース径、さりげなくアクセントの効いた夜光針、そしてうっすらベージュのニュアンスを帯びたオパリンダイヤル。ドレッシーでありながら洒脱さも漂わせる絶妙な顔つきが、今どきのリラックス感あるビジネススタイルにいっそうの洗練を与えるのだ。

アイコニックなブラウン文字盤は休日使いにも最適

「ヴィルレ ウルトラスリム」の新作には、ブランパンとしては珍しいブラウン文字盤もラインナップ。同じモデルでも、ダイヤル色が変わるだけで表情はガラリと異なるものに。こちらはツィーディなブルゾンやローゲージニットなど、トラッドなカジュアルスタイルにも絶好の相性だ。暖色系の文字盤ゆえ冬の装いに幅広く合うのはご想像のとおりだが、軽装にも意外なほどマッチ。春ならベージュのリネンジャケットに合わせて同系色でまとめてもいいし、白Tシャツ一枚で合わせてもいい。渋い輝きをたたえたダイヤルが手元に上品さをプラスし、スポーティな服にも大人らしさを添えてくれるのだ。

静かな時をともに刻むムーンフェイズウォッチ

ムーブメントから自社で製造するマニュファクチュール、ブランパン。その真骨頂を見せるのが「ヴィルレ コンプリートカレンダー」だ。月・日付・曜日のすべてを表示し、月相を示すムーンフェイズも搭載した複雑機構時計である。時計師たちの技が凝縮されたメカニズムのロマンに加え、見た目の華やぎでファッション好きも魅了する一本だ。前述の表情豊かなムーンフェイズに加え、優美なS字カーブを描くブルースチールのサーペント針も目を惹くアクセントとなっている。表側からはカレンダー調整のスイッチが見えないアンダーラグコレクターによって、すっきりとしたフォルムにまとめられているのも特色だ。それゆえにスーツからカジュアルまで馴染み、手元で静かに時を刻む。その佇まいに惚れ惚れしてしまうはずだ。

ラグジュアリーな一夜に映えるレッドゴールドの煌めき

18Kレッドゴールドケースにブラウン文字盤をあしらった「ヴィルレ コンプリートカレンダー」は、新作コレクションのなかでも抜群のラグジュアリー感を放つ一本。暖色系のケースとダイヤルがグラデーションのように一体となりつつ、際立つ煌めきを手元で放つ。それでいて、径40㎜の薄型ケースによる知的な品格もあわせもっているところが醍醐味だ。もちろんビジネスシーンで活用するのにもぴったりだが、たとえば格式あるレストランで、シャンパーニュとフルコースに興じる一夜にも絶好。心地よい緊張感を味わいながら楽しむ日常の一歩外を、一段と豊かに彩ってくれるだろう。

撮影＝若林武志　スタイリング＝武内雅英　ヘアメイク＝伊藤歌苗　構成・文＝小曽根広光

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