小型大衆車×スポーツを体現し続けるGTIの最新版
ゴルフという小型大衆車にスポーツカーのような性能を与えたらどうなるのか。そうしたエンジニアの希望をかたちにしたのが、ゴルフ「GTI」だ。初代ゴルフが登場したのは、1974年のこと。その翌年には、初代GTIのコンセプトカーが発表されている。大きな反響をよびフォルクスワーゲンは5000台の限定生産を決めるも、10倍の注文が殺到したという。
以来、GTIはゴルフの歴史において欠かせない重要なモデルとなった。そして、2022年1月、8世代目となる新型ゴルフGTIが国内でも発売された。
初代ゴルフのデザインは、数々の名車はもとより、さまざまな工業製品のデザインを手がけてきたイタルデザインの創始者、ジョルジェット・ジウジアーロによるものだった。直線基調のスタイリングで、ブーメランを思わせる太いCピラーを備えるという点は、初代から最新の8世代目までずっと受け継がれてきた特徴だ。
ラジエーターグリルの赤いラインやGTIのバッジも初代からいまに受け継がれている。新型では専用のフロントバンパーを装備し、下部にはブラックのハニカムエアインテークを採用、その左右に印象的なX字形のLEDフォグランプを配している。またリヤバンパーやディフューザー、サイドスカート、リヤスポイラーなどもGTI専用となっており、ベースモデルとの差別化が図られている。
こうした各ボディーパーツの開発は風洞実験室を使って行われたものだ。空力性能は、操縦安定性や静粛性、そして燃費性能へ大きく影響する。背の低いスポーツカーのように前面投影面積を小さくすれば空気抵抗を減らすことは可能だが、ゴルフのように人も荷物もしっかりと積載できる高い実用性が求められるモデルでは容易なことではない。ドアミラーの形状やボディーコーナーの処理、ルーフスポイラーやボディーのアンダーパネルなど、細かな改善の積み重ねによってCd 値を先代の0.3から0.275にまで低減している。
インテリアでは、赤いチェック柄のスポーツシートが目に飛び込んでくる。これも初代GTIから受け継ぐ意匠だ。
ドライバー正面のメーター類は10.25 インチの液晶ディスプレイとなっており、ダッシュボード中央には10インチのタッチ式ディスプレイが配置されている。センターコンソールがドライバー側に傾斜したドライバーオリエンテッドなデザインとなっているのはベースモデルとも共通するものだ。専用のフラットボトムタイプのステアリングには、赤いアクセントとGTIエンブレムが備わる。デジタル液晶メーターの中央にはGTIのロゴがついたタコメーターが設置されており、ビューの切り替えによってブースト圧や走行中のエンジン出力を表示することも可能だ。
ADAS(先進運転支援システム)もベースモデルの進化に準じたもの。特にステアリングホイールに静電容量式センサーを採用したことで使い勝手が向上している。標準装備の「トラベルアシスト」(0~210km/h で作動する同一車線内全車速運転支援システム)を使用する際は、ステアリングを軽く握っているだけで、高度レベル2の自動運転が味わえる。
パワートレインは、最高出力245ps/最大トルク370Nmを発揮する2リッター直列4気筒ターボで、7速DSGを組み合わせる。スペックは先代比で15ps/20Nmのアップとなる。先代の特別仕様車、ゴルフGTIパフォーマンスとは同じ数値だが、エンジンはインジェクターの改良、フリクションやノイズの低減など、evo3からevo4へと1世代進化したものとなっている。