【加藤綾子 一流思考のヒント】
第33回 メルセデス・ベンツ日本 代表取締役社長 上野金太郎さん［後編］
加藤綾子 Ayako Kato
1985年埼玉生まれ。2008年フジテレビ入社、看板アナウンサーとして活躍。’16年、フリーアナウンサーとなり女優としても活動。現在は報道番組『Live News イット!』（CX）のメインキャスターを務めるほか、『ホンマでっか!? TV』（CX）にレギュラー出演中。
著書に『会話は、とぎれていい―愛される48のヒント』（文響社刊）など。
上野金太郎 Kintaro Ueno
1964年東京生まれ。’87年に早稲田大学社会科学部を卒業後、メルセデス・ベンツ日本に新卒採用1期生として入社。社長室室長、商用車部門取締役、常務取締役、副社長などを経て、2012年12月より現職。著書に『なぜ、メルセデス・ベンツは選ばれるのか？』（サンマーク出版）。
「メルセデス ミーができたとき、『コーヒーとかも絶対に高い』と勘違いしていました（笑）」（加藤さん）
加藤 社長になられて、今度は上野さんが「あれをやろう！」と旗を振る役割になったわけですが、自身のあり方として心がけていることはありますか？
上野 社長というのは嫌われたくないと思っても嫌われるものなので（笑）、自分の方向性やビジョンを掲げたら社員としっかりシェアして、それでも腑に落ちてないんだろうなと感じる人には「みんなで決めたことに対して同じ方向を向いてもらえないのなら、仕方がないよね」とはっきり言うようにしています。うやむやにして先に進むというのが嫌いなんですよ。やっぱり担当の社員が乗り気じゃないと前に進まないし、成功しないですよね。
加藤 一見ドライなように聞こえますが、逆に本当の意味でコミュニケーションを大切にしていらっしゃるんですね。
上野 うちは部長が10人くらいで決して大きな会社ではないので、一人ひとりと向きあって対話を続けていくことを大事にしています。いろいろ話をしていくと、やる気がある人も心が折れてしまっている人もわかる。後者にどう発破をかけて、改めて目標を共有した上で「キミがどう到達させようとしているか、教えてくれよ」と聞いて、アドバイスできることはしていきます。
加藤 上野さんは先ほど人事部も兼務されていた時期があるとおっしゃっていましたが、適材適所の配置も巧みなんでしょうね。
上野 まず「何をやらせてもちゃんとやる」という人と「こういうことしかできない」という人がいて、あとは「筋道を立ててあげればできるんじゃないか」という人もいる。無理をして方向転換をさせたり全く違う職種をぶつけてみるのも一つの手なんですけど、大体は無理をして体を壊しますよね（苦笑）。そういう意味でわかる範囲で本人に合ったような役割を担ってもらってはいます。いずれにしても人の特性を見抜くのは簡単ではないです。
加藤 人員の配置は基本的に上野さんがお一人で決めるんですか？
上野 何人かで話し合って決めます。というのも、社長になると何でも「社長はどれがいいですか？」という聞かれ方になって、僕が「みんなはどう思う？」と聞くようにしないと、独断専行になってダメだと思ったんですよね。コロナ禍でリモートワークが増えて、出勤がない中で課長たちと同じペースで物事を考えられない部下たちも当然いて、なかには心が折れてしまう人もいる。それは会社にとって大損失なので、以前のように顔を合わせて肉声で伝えることが難しくても社内報や動画の配信、オンラインミーティングなどを介して、できる限りメッセージを発信するようにしています。
