1990年代初頭までは頑なに「空冷」にこだわっていたポルシェでしたが、年々厳しくなっていくいっぽうの排ガス規制を、古くさい空冷方式でクリアするのもさすがに難しくなってきました。
そのためポルシェは1990年代前半、伝統の空冷方式を捨てることをついに決意。排ガスのマネジメントなどを行いやすい「水冷方式」のエンジンに転換させることになったのです。で、その最初の世代となったのが、今回ご紹介する「996型」(Type996)とカーマニアからは呼ばれているポルシェ911です。
最初の911にはピッタリなのがタイプ996
1997年から2001年途中までの前期型カレラ(もっとも一般的なグレード)に搭載された水冷エンジンは、最高出力300psの3.4L水冷水平対向6気筒DOHC。エンジン回転数1500 rpmと5820 rpmでオーバーラップを切り替える可変バルブ機構「バリオカム」と、吸気管を切り替える「バリオラム」が採用されたエンジンでした。そこに組み合わされるトランスミッションは6MTまたは「ティプトロニックS」という名称の5速ATです。
2001年5月にはマイナーチェンジが行われ、カレラ系のフロントマスクを変更するとともに、エンジン排気量を3.6Lに拡大。そして前述のバリオカムは、バルブタイミングが連続可変となる「バリオカムプラス」に進化。ここから2004年に販売終了となるまでの世代が、俗に後期型と呼ばれています。
で、そんな996型のポルシェ911は、「ターボ」や「GT3」などという特殊なグレードはもちろん高額なのですが、一般的な「カレラ」であれば、前期型も後期型もメチャ安です。前期型であれば車両170万円スタートで、後期型でも車両190万円ぐらいから見つけることができます。
例えば後期型カレラのティプトロニックSで車両価格190万円だとしたら、総額は210万円ぐらいですので、「俺でも買える!」という感じで夢は大きく膨らむことでしょう。
しかし世の中に「うまい話」というのは基本的にはないわけで、996型ポルシェ911の中古車相場が安いのにも「理由」があります。
簡単に言うと、たまに壊れるんですね、この世代の水冷エンジンは。
996型と、その次の997型の前期モデルのエンジンには「インターミディエイトシャフト」という部品が使われていました。これのボルトとベアリングが経年劣化と負荷の集中により破損することがあり、万一走行中にそうなると、エンジン全体が壊れてしまうのです。
もちろん「すべての996型で壊れる」という話では決してないのですが、少数ながら破損するケースの可能性を否定できないのが、996型後期と997型前期なのです。
そして996型の前期モデルは、デュアルタイプのベアリングを使っていたためインターミディエイトシャフトが破損する可能性は低いのですが、メンテナンスが悪かった個体では、エンジン内部が焼き付いて壊れるというケースがたまにありました。
こういった事情があるからこそ、996型ポルシェ911の中古車相場は安いのです。