クルマに詳しい人なら、日本でも愛好家の多いルノー・カングーのライバル車だと捉えるかもしれない。欧州で商用車のベストセラーたるシトロエン・ベルランゴとは見た目の上では、ステアリングが小径だったりインテリアが異なる訳だが、プジョーはリフターを「商用車起源のワークスタイル」ではなく、最初からあくまで乗用車だと主張する。本国には「パルトネール」という商用モデルも存在するものの、確かにリフターは308や5008と共通のEMP2という、近年の欧州メーカーの中でも図抜けた出来映えのプラットフォームに基づいている。そこに燃費と航続距離に優れるディーゼル1.5リッター、BlueHDI 130ps・300Nmに、アイシンAW製の8速ATという最新世代のパワートレインを載せている。商用車離れした成り立ちであることは確かだ。
外観はいわゆるツーボックス的な形で、ボディパネルのプレスもごくシンプルだし、無駄に凝っているような部分はない。リアのドアは左右ともスライド式。後席シートは3座それぞれが独立しているが、前後スライド機能はない。ちなみにリアのウィンドウは全開とはならず、下ろした時も上部2割ほどが残る。一方でウィンドウ内側に備わるロールシェードは、西日などに悩まされずロングドライブが快適になるディティールといえる。ちなみにルーフレールの造りも、見る限りだが相当にしっかりしている。
“正統派”とは異なるスポーティな4ドアサルーン
前列シートについては、SUV人気の影響だろう、着座位置が高いので見晴らしはよい。艶消しのカッパーを多用したダッシュボードやセンターコンソール周り、ツイード生地を彷彿させるシート生地など、インテリアの素材感や雰囲気もいい。マルチ・パーパス・ヴィークル(MPV)とはいえ、ミニバンのように事務的ではないが、SUVクロスオーバーほどゴテゴテせず、ほどよいシンプルさだ。
ドライビング・ポジションは足を投げ出すタイプではなくアップライト気味で、そこにプジョー独特の「i-コクピット」と呼ばれるドライビング環境、つまり小径ステアリングとその上から読み取るメーターパネルは意外かもしれない。ところがいざ走り出すと、縦方向にはしなやかな乗り心地だが、低重心ゆえに横方向の動きはキビキビとしている、EMP2プラットフォームの長所がきっちり感じられる。平面的なボディパネルもあって車両感覚が掴みやすく、少ない動作で正確に操れる楽しさの方が優るのだ。ディーゼル特有の太いトルクとスムーズなATマナー、そしてACCやレーンキープアシストといった運転支援機能の制御もマイルドで粗がない。
ちなみに近頃のプジョー・シトロエンのレーンキープアシスト機能は、ACCオンにした時に車線内の右寄り/中央/左寄りといったポジションをメモリーするので、使いやすい。凡百のミニバンには望むべくもないような動的クオリティを備えている。しかも4駆でこそないが、氷雪路や砂、泥の路面でスリップを防ぎつつ、ヒルディセント機能をも含む「アドバンスドグリップコントロール」も付いている。今回は本国での試乗だったため、6速MT仕様だったが、AT仕様はダイヤルを回してPRNDを選ぶ操作となる。