使いやすさや質感をさらに追求
初代から2代目の時も大きくなったが、これは通常なら6~7年に一度はモデルチェンジする他の欧州乗用車と違い、商用車ベースのカングーはモデルチェンジ間隔がほぼ2倍の14年にも及び、衝突安全基準や燃費の目標など従うべき開発要件が大きく変わっているためだ。逆にいえば、向こう10数年の計を見据えて開発される訳で、数値上では大きく変わっても質の進化が問われる。そこにカングーならではの凝縮度・濃縮感が表れてくる。
たとえば荷室は独立3座の後列シートを立てたまま775リッター、助手席まで倒せば最大3500リッター、荷室長は2.7mにも及ぶ。この数値が圧巻というだけではない。じつはルーフ高が実質的に下がって44mmほど先代より天井が低いが、その分、荷室幅は46mm広がってもいる。重ねるか並べるかでいえば、後者の方が楽なことはいうまでもない。また前席だけでも、伝統のオーバーヘッドコンソールやセンターコンソール、ドアポケットだけでなく、グローブボックス内の引き出し収納やダッシュボード内の大小のトレイなど、49リッター分もの収納スペースが設けられている。
積載性を質と量で追求するだけでなく、内装の仕上げ品質や居住性にもこだわっている。試乗グレードのインテンスには何と、ダッシュボードにグレーのウッドパネルが張られていた。それが背伸びした風でもなく、意外と自然に。その昔、アメ車のシェビーバンやアストロで、ウッドパネルが上から鍋皿ネジ丸見えでアドオンされていたのに比べたら、フランス式の芸の細かさに驚く、それほどの質感だ。中央の8インチ・タッチスクリーンはスマートフォンと連携させるためのアンドロイドとアップル、いずれのエミュレート機能も備え、音声認識機能が搭載される。メーターパネル脇にはスマートフォン用のホルダーがあり、2連アナログメーター中央には液晶表示で、14以上も搭載されたADAS機能や車両設定、ナビやメディアといったインフォテイメント情報が映し出される。いわばコネクティッド環境と情報インターフェイスの強化だ。さらにフィジカルな部分では、タッチスクリーン下にはトグルスイッチが並び、クロームに縁取られた3連ダイヤル操作によるバイゾーン式オートエアコンを備え、スマートフォン用に15Wコードレス充電トレイをも配されるなど、まったくもって商用車離れしている。イケている企業のオフィスがお洒落なラウンジか何かであるように、ワークバン・ベースの内装とはいえ、乗用車ライクな居心地よさに腐心しているのだ。