未舗装路に足を踏み入れて、新たなライフスタイルを
走りについては、しなやかさを得たサスペンションによって、乗り心地が大きく改善され快適性を増し、さらに路面をしっかりとトレースしている安心感も手に入れた。ハンドリングはしっかり感を得て、特に高速域における安定性を確保しながら、ワインディングでは操る愉しさを提供。オフロード走破性については、基本性能である優れたグランドクリアランス性能は数値だけではなく、下回りをヒットしづらいデザイン、前後リジッドサスペンション、前後に確実なトラクションを伝達するパートタイム式4WD、さらにギア比を低くして速度を落としながらじんわりと突き進むことを可能としたローレンジなど、旧型と同じ。
ところが、ストローク量が変わらないとされているサスペンションはしなやかな動きに。そのため路面追従性が高められ、タイヤが浮いてしまうようなシーンに陥っても、新たに加わったトラクションコントロール(旧型ジムニーシエラの最終モデルには付いていた)によって、空転しているタイヤにブレーキを掛けて、接地しているタイヤへとトラクションを積極的に伝達し、クリアしてしまう。ハイレベルと言える走破性を手に入れている。
20年分の進化だと言われてしまえばそれまでだが、旧型ユーザーとしては、とてもクヤシイ。しかし、注意したいのは、そこには「これだけのオフロード走破性をもちながら」、「旧型と比較して」という2つの前提が付くこと。
実は、マスコミ向け試乗会において、スポーツカー絶対というモータージャーナリストと同乗した。彼は、ハンドリングに曖昧さがあること、タイヤがドタバタと動きまわって乗り心地が悪いこと、そして、路面追従性に物足りなさがあることなど、筆者が掲げた美点をことごとく否定するような評価をした。さらに、ステアリングにテレスコピック機能がないこと、シートリフターがないことまで指摘したのだ。
彼の指摘は間違ってはいない。乗用車やスポーツカーからすると、ジムニーは、オンロードの走りも装備も、スズキ・ハスラーやダイハツ・タフトといった最新軽乗用系クロスオーバーモデルにすら届いていない面がある(テレスコピックはいずれも不採用)。
ただ、彼の評価もオフロードを走った後ならば、あれだけオフロードを走破できるのに、オンロードでここまで仕立てるとはすごいね、と感心するはず。そして、旧型と比較すれば、すごく良くなっているね、と絶賛に変わるはず。新型ジムニーは、性能にマイナス面があろうとも、それはドライバーや乗員を不安にさせるようなものではないし、指摘されたシートリフターだって、なくてもなんとか我慢できる。
ディーラーのテストドライブでオフロード走行を行うことはほぼ無理だが、そこにどことなく惹かれているならば、ジムニーをオススメしたい。そして、ユーザーとなったならば、ハードなシーンでなくていいから、未舗装路に足を踏み入れて欲しい。知らなかった愉しさと、新しいライフスタイルに驚き、そして、自らにジムニーを合わせていきたくなるはずだから。