最長航続距離を備えたエントリーグレード
新たに追加された「4S」とターボ系との違いは、まずバッテリーが小型化されたこと。容量 79.2kWhの1層構造のパフォーマンスバッテリー(PB)を標準装備する。ただし、オプションでターボ系と同じ 93.4kWhの2層構造のパフォーマンスバッテリープラス(PBP)を装備することも可能だ。
それからモーターが異なる。フロントモーターはターボ系と同様のもので、リアには有効長を80mm短く小型化したモーターを採用。前後計2基の永久磁石同期モーターと、リアアクスルには加速と最高速への要求を満たすために2速トランスミッションを搭載している。
PB仕様車の定格出力は435ps、ローンチコントロール使用によるオーバーブースト時には最大530ps。一方PBP仕様車は490psで最大571psを発揮。0-100km/h加速は4.0秒、最高速度は250km/hは両者共通スペックだ。PB仕様車の航続可能距離はWLTPモードで407km、PBP仕様車は463kmとタイカンのラインアップ中で最長のモデルとなる。
想定外のアングルでドリフト走行も
タイカン4Sの国際試乗会の舞台は、フィンランド北部の北極圏にあるレヴィという町だった。スキーをはじめとするウインタースポーツやオーロラ鑑賞ができるリゾート地として世界的に有名で12月の平均気温はマイナス10度を下回る。バッテリーにとって過酷なこの地でタイカンの実力を試す狙いがあったわけだ。
ナビゲーションをセットしてまずは一般道を走る。EVらしく車内はおそろしく静かだ。それゆえスノータイヤのザクザクと雪を噛む音が耳につく。3チャンバー式エアサスペンションの恩恵もあって、雪でデコボコの路面からのゴツゴツした突き上げはほとんどない。地元のクルマの流れにのってまっすぐな道を80〜100km/hくらいで走行する。重心が低く高剛性なフロアは、ポルシェモデルの中でも最上ともいえる乗り心地を実現している。
タイカンにはいわゆる“ワンペダル”モードはない。基本的にアクセルを戻すとコースティングを行う。ポルシェはあくまでドライバーの意思でブレーキペダルを踏んではじめて回生を行う制御にしている。ただし、ペダルを踏んで回生が始まれば265kWの高い回生出力によって、最大で0.39Gもの制動力が発生するようになっており、実際は日常走行の約9割の制動は回生によって賄われるという。あまりにもディスクブレーキを使わないため、ポルシェとしては初めてブレーキパッドの交換時期を6年毎と規定している。
午後は凍結した沼地を活かしてつくられた特設コースを走った。長いハンドリングトラックや定常円、スラロームなどいくつものコースが用意されている。氷上の特設コースでは、「スポーツプラス」モードで、PSM (横滑り防止装置)のオンオフを試す。PSMの制御もきめ細やかで出しゃばりすぎることはない。このモードではアクセル開度に応じてオプションの「ポルシェエレクリックスポーツサウンド」によるモーター音を増幅したようなサウンドがスピーカーから聞こえてくる。
アクセルペダルの操作に対して、タイムラグなく瞬時にトルクが立ち上がるのはまさにEVならではの利点だ。定常円旋回路ではPSMをオフにすれば、想定外の深いアングルでドリフト走行が可能だった。EVであってもポルシェはポルシェ。スポーツカーメーカーとしての矜持といえる走行性能はさすがというほかない。
文/藤野太一 写真/ポルシェ ジャパン 編集/iconic






