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マリオ ペコラのコートに遭遇

学校が終われば、生活費を得るために夜は毎日、ウェイターとして働く佐藤さん。あるとき、「業界人の集まる店があるから、そこで働けば仕事がもらえるかもしれないよ」と友人から聞いて和食レストランで働くことにした。それがパリの高級和食店として非常に人気の「伊勢」。著名デザイナーが多く訪れるなど、業界関係者が多い店だ。働き始めると、のちの佐藤さんの運命を左右する出来事が起こった。とびぬけて見事なコートを着た男性客がいるのだ。どちらのものですか？と尋ねると、その人は「ミラノのマリオ ペコラ」で仕立てたものと教えてくれた。

無計画のままミラノへ向かった

余りのカッコよさに矢も盾もたまらなくなった佐藤さんは、すぐさまミラノのマリオ ペコラの店を訪れることを決めた。しかし、「マリオ ペコラ」という名前以外は何もわからない状態。インターネットもない時代、佐藤さんの考えはシンプルだった。

「いい服だったからミラノの目抜き通りを歩けばすぐに店が見つかるだろうと思っていました。ところが、モンテナポレオーネ通りのどまんなかでショップに飛び込み、店員に尋ねても誰一人として知らない。『え？　ファッションの仕事をしているのに、マリオ ペコラを知らないの？　この人ダメだなぁ』くらいに思っていました（笑）。すると、有名店のラルスミアーニの店員がイエローページで調べてくれて、住所がその場から100mほどの場所だとわかったのです。実はこの時初めて、イエローページで探す手があったなと気付きました（笑）」。

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撮影／久保田彩子　取材・文／川田剛史