V8エンジンに残された時間はそう長くはない

エクステリアでは、22インチの大径アルミホイールを装着し、その奥にはブラックに塗装されたブレンボ製のブレーキキャリパーがのぞく。リアまわりを見ると、エキゾーストパイプが4本出しになっている。V8のエンブレムはボディサイドにさりげなく配されているだけで、派手な演出があるわけではなく、見る人が見ればわかるといった差別化が図られている。

インテリアデザインはベースモデルとかわらないものの、スエードクロスのステアリングやレザーと人工スエードのダイナミカを組み合わせた表皮のシートなど、最上級グレードにふさわしい仕立てとなっている。シートに腰掛けると着座位置が高く、視界はとても良好だ。シフトレバーはダッシュボード上に配置されており、左手をのばせばちょうどいい位置にあって操作しやすい。その脇には、ランドローバーお得意の走行モードシステム「テレインレスポンス2」の操作ダイヤルなどが備わる。V8専用のセッティングとなっているようでオンロードをはじめ「草地/砂利/雪」「泥/轍」「砂地」といった悪路のシーン別に最適制御してくれるすぐれものだ。
そして、ダイヤルの真上にあるセンターモニターには、フロントとミラー内蔵のカメラ映像を合成して通常はドライバーの死角となるボンネットをシースルーしたような映像をつくり出し路肩や段差、障害物を確認できる「クリアサイトグラウンドビュー」をはじめ、前後左右の傾斜角(スロープアシスト)やリアルタイムの駆動状況などを表示することも可能だ。


最大トルク625Nmを2500回転から発生するだけあって、街中ではほぼ2000回転前後で事足りる。この回転域で走っていると静粛性高くラグジュアリーカーのような雰囲気が味わえる。一方でアクセルペダルに力を込めると猛然とダッシュをはじめ、そして最高出力525psを発揮する6500回転を目指しエンジンが吹けあがる。V8サウンドもとてもスポーティなもので気持ちが高揚する。

現行型はモノコックボディで4輪独立懸架となったこともあり、かつてのトラックのような乗り味はまったくない。エアサスペンションの効果も絶大で、大きな段差を乗り越えたときのショックもうまくいなし、乗り心地はとても良好だ。そしてステアリング操作に対しても大きな遅れなどない自然な反応をみせ、また独自のエレクトロニック・アクティブ・リア・ディファレンシャルにはヨー・コントローラーが採用されていることもあって、コーナーでも意外なほどに軽快な走りをみせる。

ちなみに2023年10月末時点での2024年モデルの販売構成比は90が8%、110が90%(130が2%)、V8の割合は90が23%、110では12%で、いずれも大半がディーゼルを選んでいるという。しかし、V8ならではの走りを存分に味わいたいなら、オススメはショートボディの90との組み合わせになる。おそらくV8エンジンに残された時間はそう長くはないだろう。いずれレアで通にウケる選択になるに違いない。
文・藤野太一 写真・ジャガー・ランドローバー・ジャパン、郡大二郎 編集・iconic