シャレードとのビトゥルボのもつ絆とは? デ・トマソとダイハツのコラボ“国産車”(後編)

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シャレードとのビトゥルボのもつ絆とは? デ・トマソとダイハツのコラボレーションが生んだ“国産車”(後編)

時代を造ったクルマたち vol.11



ダイハツと“イタリアンテイスト”の蜜月

アレッサンドロ・デ・トマソの息子であるサンティアゴは現在、デ・トマソ家の資産であるモデナ中心部にあるホテルカナルグランデをマネージメントする立場にあり、かつ、デ・トマソ・モデナにあったヴァレルンガ・プロトタイプをはじめとするコレクションを管理する立場でもある。いつだったか、「そういえば(ホテルの)庭にダイハツの社長からの贈り物があるんだが、見たことあるかい? 」と連れて行かれたことがある。今もモデナの中心部にはダイハツとデ・トマソの絆を証明すべく、まがうことなき日本製の灯籠が鎮座しているのだ。

”灯籠と、アレッサンドロ・デ・トマソの息子であるサンティアゴ氏
“ダイハツとデ・トマソの絆を証明する”灯籠と、アレッサンドロ・デ・トマソの息子であるサンティアゴ氏

前回お話しした初代シャレードをベースとしたプロトタイプはモデナのデ・トマソ社にて製作された。当時のデ・トマソ社はトップであるアレッサンドロ・デ・トマソの下、アウレリオ・ベルトッキ(マセラティ伝説のテストドライバー、グエリーノ・ベルトッキの息子)がマネージメントを行い、まだ若き(アレッサンドロの息子である)サンティアゴ・デ・トマソが商品企画を担当していた。そう、シャレードのプロジェクトはサンティアゴが担当だったのだ。「あのデ・トマソ氏の子息ということで、こちらも緊張して付き合ったのですが、試作スタジオで自らクレイを削り粉だらけになったり、マセラティで街中をとんでもないスピードで飛ばしたり、驚くことばかりでした」と当時のダイハツ担当者は微笑む。サンティアゴも当時は相当にやんちゃでもあった(笑)。

デ・トマソ社の専属デザイナーであったピエランジェロ・アンドレアーニはこう語る。「マセラティ・ビトゥルボ系とシャレードのデザイン開発は私一人で、それも同時に行っていました。直線を基調に、しかもエレガンスにというアレッサンドロのコンセプトは両者に表現されていると思います」。当時の資料を眺めるなら、このコラボレーション企画が安易な思い付きで生まれたものでないことが分かる。デ・トマソとダイハツの2社でロゴの細部までしっかりと検討された経緯が浮かび上がってくるのだ。

シャレード デ・トマソターボ
2代目シャレードに設定されたシャレード デ・トマソターボ

2代目シャレードは、1983年に発売され、スペース効率を追求しながらも、より直線基調のスタイリングとなった。ターボ仕様もラインナップされ、翌1984年にデ・トマソターボが追加発売される。

同じパワートレインを積むデ・トマソ傘下イノチェンティのデ・トマソターボもほぼ同時に発売された。シャレード版は、イノチェンティ版と比較すると、低回転域からのターボラグを減らすことを主眼としたもので、超小型ターボチャージャーの装着にマッチしたセッティングとなっていた。

シャレード デ・トマソターボのデッサン
ピエランジェロ・アンドレアーニによるシャレード デ・トマソターボのデッサン

シャレード デ・トマソターボはエクステリア、インテリア共に、初代ベースプロトタイプのイメージがよく活かされている。特にフロントグリル周りは秀逸だ。くしくも2代目シャレードか直線基調となったことで、プロトタイプのイメージがよりマッチする形となった。

デ・トマソの大きなデカールはパンテーラを彷彿させたし、カンパニョーロ製マグネシウムホイールやピレリP8タイヤ、モモ製3スポークステアリングホイール、デュアルアウトレットのエグゾーストなど、当時のクルマ好きを唸らせる装備が特徴であった。

ダイハツはデ・トマソとのコラボレーションによって小型ハッチバックに小粋なイタリアンテイストを付加することができたのだが、そもそもダイハツにはイタリアンデザインとの絆が存在していた。1963年にコンパーノ ベルリーナとスパイダーとして日本で初めてイタリアンデザインによる量産車作りを開始していたのだ。カロッツェリア・ヴィニヤーレとのコラボレーションがこのデ・トマソ バージョンの20年以上前に誕生していたのも一つの縁であろう。

少し話は逸れるが、このコンパーノのプロジェクトも、後にイタルデザインをジウジアーロと共に起こす宮川秀之のコーディネーションによるものであった。カロッツェリア・ギアのオーナーに納まったデ・トマソと共に日本を訪れ、日本の自動車産業の可能性を彼に説いたのも宮川だ。(いすゞ117クーペの頃の話だ)。この宮川のインプットによってデ・トマソがダイハツからエンジン供給を受けるというプロポーサルの遠因となったのではないかとも筆者は考える。

2024

VOL.341

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