盤石のスタビリティでロングドライブも疲れ知らず

シフト操作は、内燃エンジンモデルと同様のもの。ステアリングコラム右側にあるシフトレバーを押し下げればDレンジに入る。動き出しは極めて滑らかで、とても車両重量が約2.4トンもあるとは思えない。市街地を流しているだけでその乗り心地のよさが伝わってくる。サスペンションはフロントに 4 リンク式、リアにマルチリンク式を採用。そして連続可変ダンピングシステム ADS+とエアサスペンションを組み合わせたAIRMATIC を標準装備する。
もう一つEQEの特筆すべき点はその静粛性の高さにある。BEVだから静かなのは当然と言われそうだが、タイヤやボディや風切り音などエンジンがなくてもクルマにはノイズ発生源はたくさんある。先の空気抵抗を低減したシームレスなボディスタイリングだけでなく、資料によると快適性を損なう低周波ノイズを防ぐために、ボディの構造部の空洞部分の多くに防音発泡材を充填。高周波の風切り音に対しては、ドアやウインドウのシールに特殊な防音対策を施すなど、細部にわたって徹底的に手が入れられているという。
そしてステアリング操作に対してクルマの動きがとても自然だ。前後重量配分48:52とほぼ均等で、後輪駆動というベースの良さがあるだけに、まるでスポーツカーのように気持ちよく走ることができる。高速道路を走行していても先の静粛性の高さはそのままに、盤石のスタビリティで、ロングドライブもまったくの疲れ知らず。このEQEは、いわゆる四輪操舵のリア・アクスルステアリング(最大10度)を備えており、車線変更時などの安定性を高める一方で、市街地などでは、最小回転半径はなんと4.9mとCクラスをも上回る小回り性能を実現している。
またこれまで輸入BEVにはなかったV2H(Vehicle-to-Home)機能を備えた点も朗報だろう。これは、オプションの機器を使用することで車載バッテリーを家庭用の電源として使えるというもの。家庭の太陽光発電システムで発電した電気の貯蔵装置となるほか、停電や災害時などには非常用の電源として家庭に送電し予備電源として利用できるというものだ。
いまや日本の自家用車の年間平均走行距離は1万kmに満たず、ある保険会社の調査によると約6000kmというデータもあるという。きわめて単純な試算だが、このEQEなら年間10回充電すれば、まかなえてしまう計算になる。家庭に充電器を設置できるのなら、もうBEVがいいと思わされる出来栄えだった。
文=藤野太一 写真=河野敦樹 編集=iconic