最も身近な複雑時計であり、デザイン性も高く、メカ好きからファッション好きまでを魅了するクロノグラフ。そんなクロノグラフ180本を紹介するバイヤーズガイド『超本格クロノグラフ大全』から、その中身をピックアップしてご紹介。
【注目のクロノグラフ】
プロスペックス SPEEDTIMER メカニカルクロノグラフ SBEC009
SEIKO(セイコー)
’60年代の傑作「SPEEDTIMER」が設計思想、デザインを引き継ぎ復活
持ち前の高い技術力により、日本の腕時計業界を常にリードしてきたセイコー。それはクロノグラフにおいても同じだ。極限の記録に挑むアスリートを支えてきた同社にとって、1960年代はエポックメイキングな製品を次々に世に送り出した時期でもある。まず、’64年の東京オリンピックに向けて懐中型のストップウォッチを開発する。スタート/ストップ機構に“ハートカム”を採用した本作は、それまで不可能とされていた0.01秒単位の高精度な計時を実現し、大会の成功に大きく貢献した。同じく’64年、ストップウォッチ機能を腕時計に搭載した国産初のクロノグラフ「クラウン クロノグラフ」を発売。5年後の’69年には垂直クラッチを取り入れた世界初の自動巻きクロノグラフ「1969スピードタイマー」を開発し、優れた計時精度を発揮するとともに、耐衝撃性も向上させた。
2021年、セイコーが発表した新シリーズ「SPEEDTIMER」は、それら’60年代の革新的技術を受け継いだクロノグラフである。最初のレギュラーモデルとして登場したSBEC009の押しやすいハンマー型プッシュボタンは’64年の国産初クロノグラフに着想を得て、高い操作性を追求。適度な厚みと重量感のある新型ブレスレットが快適なフィット感を保証する。また、新開発の自動巻きキャリバー8R46は、垂直クラッチやコラムホイールといった「1969スピードタイマー」の技術をより進化させて搭載した。クロノ針を確実に瞬時帰零させる三叉ハンマーもセイコー独自の技術だ。
さらに、シャープな形状の時分針やチャコールグレー文字盤など、デザイン面でも’64年の国産初クロノグラフを踏襲。針&インデックスに施したヴィンテージ風のルミブライトとともに、ネオクラシックな印象を醸し出す。セイコーの技術と伝統を結集した1本といえよう。
1969スピードタイマーより息づく技術を継承する8R46
シースルーバック越しに見える新型の機械式クロノグラフキャリバー8R46。垂直クラッチやコラムホイールなど、「1969スピードタイマー」から脈々と息づく技術を取り入れた。