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弾数が残るラングラーなら入手のハードルも高くない

M.E. 今回、解説いただくのはウエスタンシャツ。カウボーイスタイルと密接に結びついたアイテムだけあって、多くのジーンズメーカーが製造してきた服です。その代表格といえばリーバイス、リー、ラングラーの御三家ですが、なかでもラングラーのウエスタンシャツを推す理由はどこにあるのでしょうか?

西口 三大ジーンズブランドのウエスタンシャツはどれも素晴らしい名品なのですが、この連載は「ヴィンテージ入門」がテーマということで、入手のしやすさも考慮してラングラーを選びました。後ほど詳しくお話ししますが、今の装いに取り入れやすいのは1980年代製のウエスタンシャツ。ところが、この時期のリーバイスやリーは現在かなり流通量が少なく、サイズや状態を吟味しながら入手するのが困難なのです。ラングラーのものなら今でも比較的弾数が多く、価格も手頃。ですので、ビギナーの方でもハードルが高くないのではと思います。

M.E. なるほど。ちなみに、’80年代のウエスタンシャツが着こなしやすいのはどうしてですか?

西口 一番は襟型ですね。当然のことながら、ウエスタンシャツも時代によってデザインやディテールが違います。なかでも大きく変わるのが襟の形で、’70年代のものは襟羽根が長いレギュラーカラー、’90年代のものはワイドカラーになっています。対して、今回お持ちした’80年代のものはやや小襟のレギュラーカラー。これが非常に使いやすいのです。今のジャケットに合わせてもよく馴染みますし、一枚で着ても首周りのバランスがいいですね。

M.E. そういうわけなんですね。ちなみに’60年代のウエスタンシャツというのもあるのでしょうか?

西口 ラングラーに関しては、現在の市場で見かけることはほとんどありません。ちなみにリーも同様です。リーバイスはときおり出物がありますが、かなりの高値がつけられるのが普通ですね。

M.E. プレミアム・ヴィンテージということですね。話は戻りますが、ラングラーのウエスタンシャツに関して、襟型以外に魅力となるのはどんなところでしょうか?

西口 やはり生地ですね。ペラペラせず分厚すぎないウエイトで、一枚でもインナー使いでも着やすい。それから、ジーンズと同様に色落ちを楽しめる点も魅力です。こちらは60%くらい色が残っている状態で、洗濯を重ねるとより明るいブルーになっていきます。ジーンズのように同じものを何枚か所有して、色落ちの具合に合わせてコーディネートを変えるのも面白いですね。ちなみに、もしデッドストックやミントコンディションのものを見つけた場合、洗うと縮みが出ますのでサイズ選びにご注意ください。

M.E. 確かに、意外と見落としがちなので気をつけたいところですね。サイズはやはりジャストを選んだほうがいいのでしょうか?

西口 もちろんあえてオーバーサイズで着るのもいいと思いますが、タイドアップもできるシャツなので、ジャストで選んだほうが着こなしの幅が広がることは確かです。ネックサイズに加えて裄丈のバリエーションもあるので、両方ジャストなものに出会えたらラッキーですね。

M.E. 状態だけでなくサイズも吟味する必要があるがゆえに、弾数が残っているラングラーが探しやすいということですね。ではここから、着こなし方に関してもお話を伺いたく思います。西口さんは普段、どんなコーディネートをされていますか?

西口 まず、テーラードウェアと合わせるのが定番です。リーバイスのヴィンテージジーンズにウエスタンシャツ、そしてナポリ仕立てのジャケットといった感じですね。あとは、ブリティッシュアメリカンなムードでコーディネートすることも多いです。たとえばレジメンタルストライプのタイを締めてツイードジャケットを羽織り、パンツはヴィンテージチノといった具合です。

実はどんな服にも合う万人のためのシャツ

M.E. どちらもテイストのミックス感が西口さんらしいですね。

西口 そうですね。あとはシャツ一枚で着るなら、米軍もののパンツにオールデンを合わせてアメリカンに着てもいいですし、M-47パンツにジェイエムウエストンでフレンチテイストにしてもいい。非常に幅広い服装に対応するシャツなんです。

M.E. 肩の切り替えやバックヨーク、ポケットのデザインなど、結構アクが強そうに見えますが、実は凄く汎用性が高いんですね。

西口 そうなんです。米国西部がルーツということで、普通のデニムシャツよりもローカル色が濃いアイテムなのですが、それでいてしっかり“万人のためのウェア”として完成されているところが素晴らしいと思いますね。実際、’80年代以降はアメリカンの枠を飛び出して、実に多様なスタイルに取り入れられてきました。テーラードジャケットのようなドレスウェアを合わせる着方も、ウエスタンシャツの歴史を考えればごく自然であるともいえます。

M.E. そうなんですか?

西口 冒頭で話に出たとおり、ウエスタンシャツはカウボーイのスタイルから発祥したものですが、彼らの正装は白のウエスタンシャツにカウボーイジャケットを合わせ、足元はエキゾチックレザーの靴というものだったそうです。つまり、色こそ違えどフォーマルな場面にも用いられていたシャツということで、ドレスウェアと地続きのバックグラウンドをもっているのです。

M.E. なるほど! テーラードジャケットと合うのは、しっかり文化的な裏付けがあるというわけですね。

西口 そうですね。まあ、少々後付けのような理由ではありますが(笑)、そういう符合を密かに楽しみながら着るというのもひとつのロマンではないかと思います。

M.E. 本誌読者の方々なら、大いに共感いただけるお話だと思います。普通のデニムシャツと似ているようで、ちょっとキャラの違うアイテムとして楽しめますね。

西口 おっしゃるとおりです。現行品を求めることもできますが、独特の味わいやメイド・イン・USAというマインド的な満足感において、ヴィンテージには代え難いものがあります。市場から枯渇する前にチェックしてみてはいかがでしょうか。

<p><b>バランスのいい襟型</b><br />
「襟羽根が長すぎないレギュラーカラーは’80sラングラーならではの魅力。今の洋服と合わせても違和感がありません。ちなみに襟の中にはカラーステイが縫い付けられています」</p>

バランスのいい襟型
「襟羽根が長すぎないレギュラーカラーは’80sラングラーならではの魅力。今の洋服と合わせても違和感がありません。ちなみに襟の中にはカラーステイが縫い付けられています」

<p><b>横付けタグは米国製の証</b><br />
「品質表示タグが織りネームの側面に縫い付けられているのは米国製時代の特徴。その後は下に付くようになります。“CRAFTED WITH PRIDE”という謳い文句も味があっていいですね」</p>

横付けタグは米国製の証
「品質表示タグが織りネームの側面に縫い付けられているのは米国製時代の特徴。その後は下に付くようになります。“CRAFTED WITH PRIDE”という謳い文句も味があっていいですね」

<p><b>独特の装飾性も味わい満点</b><br />
「現行品にも共通する魅力ですが、カフスの三連ボタン、肩の切り替え、バックヨーク、フラップの形状など、独特の装飾性がウエスタンシャツの醍醐味。装いのスパイスとして最適です」</p>

独特の装飾性も味わい満点
「現行品にも共通する魅力ですが、カフスの三連ボタン、肩の切り替え、バックヨーク、フラップの形状など、独特の装飾性がウエスタンシャツの醍醐味。装いのスパイスとして最適です」

<p><b>カーゴパンツにもクリースを入れて</b><br />
武骨な印象が強いカーゴパンツだが、西口さんはセンタークリースを入れて品よく穿いているのに注目。シルエットもスッキリと見える。ちなみに靴はクロケット&ジョーンズのフレンチローファー。</p>

カーゴパンツにもクリースを入れて
武骨な印象が強いカーゴパンツだが、西口さんはセンタークリースを入れて品よく穿いているのに注目。シルエットもスッキリと見える。ちなみに靴はクロケット&ジョーンズのフレンチローファー。

<p><b>遊び心の効いたディテールにも注目</b><br />
よく見るとブレザーのボタンがすべて違う色になっている。こういったさりげない遊び心もこなれた印象だ。ベルトは米バロンズハンター、チーフは英シーワード&スターンで、小物使いも多国籍。</p>

遊び心の効いたディテールにも注目
よく見るとブレザーのボタンがすべて違う色になっている。こういったさりげない遊び心もこなれた印象だ。ベルトは米バロンズハンター、チーフは英シーワード&スターンで、小物使いも多国籍。

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