アイビーのジュニア世代が生み出したスタイル
M.E.: アイビースタイルから派生したスタイルと理解してよいのでしょうか。
鈴木: 流れはアイビーなんですよ。ジュニア世代は、幼いころからアイビーテイストの洋服を着せられて成長していますから、その影響を受けています。アイビーリーグは、古くは英国から移民として米国へ来た人たちが、英国のインテリジェンスを広めるうえで生まれていった学校です。
しかし、ジュニア世代全員が、アイビーリーグに進学できるわけではありません。その結果、アイビーリーグに準じる予備校(=プレップスクール)ができはじめたわけです。先述の通り、彼らの趣味嗜好はファミリーから継承して養われていました。でも、親の世代と同じ格好をしていません。
M.E.: その点が興味深いですね。目立ったスタイルの違いはありますか?
鈴木: まず、プレッピーはスーツを着ません。タイドアップも比較的少ない。一方、アイビーリーグでは、みなネクタイを締めているし、スーツも、テーラードジャケットも着用します。(装いが)一つの権威ですから、着るものが権威や誇りを表していると上の世代から教わるんですね。それが重要なテーマでもあったでしょう。
ところが、予備校はそこまで窮屈ではない。敷居もアイビーリーグほど高くないから、「ネクタイを外そう」、「上下揃ったスーツでなくてもいいんじゃないの?」と。ジャケットにしても、しっかり肩パッドの入ったものではなく、カジュアルなものが主流となっていました。そこがスタイルとしては大きな違いですね。
M.E.: 一部の人たちの好みだったわけですが、それがどのように流行として広がったのでしょうか?
鈴木: プレッピーは当時、アメリカでヒットしたものを取り入れていました。プレッピースタイルを紹介した本にも、Tシャツの着こなし方などが紹介されています。でも、紹介されるままに着るのではなく、いかに自分たちらしく見せるかが重要。
次第に、彼らの装いを目にした人たちの関心も集め、プレップスクールに通っていない人の間でも、同様の着こなしが楽しまれるようになりました。実はレディースは、メンズ以上に広がりを見せたんですよ。それが波及して、日本でのプレッピーの流行につながりました。