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入門に最適な“最後のヴィンテージ・リーバイス”

M.E. 大人のヴィンテージ入門、第一回に解説いただくのは、大基本のリーバイスです。年代によってシルエットもディテールも様々で、初心者はどれを選んでいいものか悩みがちですが、まず手に入れるならどういったものがよいのでしょうか?

西口 最初の一本としてなら、501の「66」モデルがいいのでは。1970年代をピークに製造されていたもので、“ヴィンテージ・リーバイス”といわれるジーンズのなかでは最も新しいモデルになります。ちなみに66より後になると “ヴィンテージ”ではなく“オールド・リーバイス”と呼ぶのが一般的です。

M.E.  66モデルの特徴はどういったところですか?

西口  ディテールを挙げると様々な部分がありますが(上コラム参照)、最も大きな特徴はシルエットですね。年代とともにワタリや裾幅、股上の深さなどが多様に変化してきた501ですが、66モデルは細身のテーパードシルエットで、テーラードジャケットをはじめとする大人の洋服に合わせやすいのが魅力です。

M.E.  それが初心者におすすめな理由のひとつというわけですね。

西口  そうですね。さらに、66モデルの中でも「66前期」と呼ばれるものがヴィンテージ入門としておすすめです。その理由は、色落ちの表情。前期ものは“縦落ち”といわれる、縦方向に白い筋が入るような色落ちを見せるのに対し、後期ものは全体が満遍なく色落ちしていきます。前期と後期でデニムの染料が変わったという説が有力ですね。縦落ちはヴィンテージ・ジーンズにおける醍醐味のひとつですから、それを味わえる66前期がおすすめというわけです。ちなみに価格的にも、66より前の「XX」や「ビッグE」といったモデルより手頃。そういったところも入門向きな理由ですね。そしてもちろん、この時代の501はセルビッジ(耳付き)デニムを使用しています。

M.E.  なるほど。ところでセルビッジデニムがよしとされるのはなぜですか? 裾を折り返さなければわからないディテールですが……

西口  セルビッジデニムは、穿き込むとアウトシーム部分に美しいアタリが出てきます。なので、耳付きデニムを使用したものとそうでないものとでは、エイジングの表情に違いがあるということですね。ちなみに501の場合、1980年代を中心とする“赤耳(レッドライン)”時代を過ぎると、しばらくセルビッジデニムが使用されなくなります。

M.E.  耳付きならではのエイジングと美しい縦落ちを楽しめて、かつ高価すぎない。だから66前期がヴィンテージ入門におすすめというわけですね。

玉石混交のヴィンテージ。選びのポイントは?

M.E.  次に、店頭での選び方についてお伺いします。ヴィンテージのジーンズはダメージや色落ちの進み具合などによって価格にかなり差があったりしますが、どういったものを狙うのがいいのでしょうか?

西口  まずチェックしたいのは裾部分。前のオーナーによって丈詰めがされている場合、裾のアタリがなくなっていたり、全体の色落ちに対して裾だけ真新しい表情になっていたりするものが見られます。こういったものは避けたいところですね。ですから、ヴィンテージ・ジーンズ選びではウエストのサイズだけでなくレングス選びも重要なポイントになります。多少長い程度であれば、折り返して穿くのもアリですね。それから、ダメージに関してはもちろん少ないものが理想的なのですが、良好な状態のものは価格も高くなりますのでバランスを見つつご検討ください。裏返してみて、リペア跡のないものがおすすめです。あとは色落ちですが、66前期に関してはリジッドと比べて60%くらい色が残っているものが合わせやすいと思います。ただ、春夏に穿くならもう少し色落ちが進んだものもいいですね。より軽やかな雰囲気になります。ちなみにこちらの写真のもので40%くらいの色残りという感じでしょうか。

M.E.  なるほど参考になります。ところでサイズに関しては、あえてジャストより大きめのインチを選ぶこともあると聞きますが……

西口  確かにそういう考え方もありますね。私も少しリラックスした雰囲気で合わせたいときには、インチアップして穿くこともあります。ただ66モデルの場合はきれいなスリムシルエットが身上ですから、まずはジャストサイズからお試しいただくのもいいかと思いますね。テーラードジャケットと合わせるなら、ジャストのほうがまとまりやすいと思います。

西口流・ヴィンテージを“今”に着こなす秘訣

M.E.  もうひとつ気になるところとして、ヴィンテージ・リーバイスをどう大人っぽく着こなすかという点があります。西口さんが意識しているポイントはどういったところですか?

西口  これは非常に難しい問題というか、永遠のテーマのひとつですね。昔から洋服業界では「501をお洒落に穿けなければプロにあらず」といわれます。66に限らず501は“究極の普通”といえる洋服。どんなコーディネートもできるわけですが、それゆえにどう着こなすかが難しい。自分の経験値がこれほど試されるアイテムはないと思います。私も小学生のころからリーバイスを穿き続けて、本当に色々と試したうえで今に至っていますから、まずはご自身のセンスに任せてトライ&エラーを繰り返してみるのがいいでしょうね。そのうえで、あえてアドバイスをさせていただくとしたら、ジャストフィットの66前期モデルをドレスアイテムとミックスして合わせるのがおすすめです。テーラードジャケットや本格靴といったものですね。冒頭でお話ししたとおり66は細身のテーパードシルエットなので、ドレスアイテムとも抵抗なく合わせやすいのです。なおかつ、新しいものと古いものの共存による “化学変化”を楽しめるのが面白いところですね。両者がお互いを引き立て合うことによって、本来とはひと味違った顔が見えてくる。それこそがミックススタイルの醍醐味といえるでしょう。

M.E.  ただ“すんなり馴染む”だけではなくて、新しい魅力が現れてくるということですね。といったところで、第一回はここまで。次回はアイテムを変えて、大人のヴィンテージ入門を解説いただきます!

<p>「66モデルより前に製造されていた501は赤タブのブランド表記に大文字のEが用いられていたのに対し、66モデルでは小文字のeが用いられています。これは”スモールe”と呼ばれ、製造時期を識別する指標のひとつとなっています」</p>

「66モデルより前に製造されていた501は赤タブのブランド表記に大文字のEが用いられていたのに対し、66モデルでは小文字のeが用いられています。これは”スモールe”と呼ばれ、製造時期を識別する指標のひとつとなっています」

<p>「前期と後期に分けられる66モデルですが、その判別にはヒップポケット内側に注目。ここが裾と同様のチェーンステッチになっているものは66後期、写真のようにシングルステッチになっているものは66前期と分類されます」</p>

「前期と後期に分けられる66モデルですが、その判別にはヒップポケット内側に注目。ここが裾と同様のチェーンステッチになっているものは66後期、写真のようにシングルステッチになっているものは66前期と分類されます」

<p>「よく見ると、フロントボタンの裏側に”6”と刻印されているのがわかります。これも66前期モデルであることを表す特徴。目立たないディテールですが、ヴィンテージ好きの間では年代を判別する重要な材料として知られています」</p>

「よく見ると、フロントボタンの裏側に”6”と刻印されているのがわかります。これも66前期モデルであることを表す特徴。目立たないディテールですが、ヴィンテージ好きの間では年代を判別する重要な材料として知られています」

<p>「66に限らず、古着のジーンズを選ぶ際に気をつけたいのが裾。穿きこんだ後に丈詰めがされている場合、ここのアタリが真新しいものになっています。そうなると味わいは半減。なので、購入した後も丈詰めはしないのが基本です」</p>

「66に限らず、古着のジーンズを選ぶ際に気をつけたいのが裾。穿きこんだ後に丈詰めがされている場合、ここのアタリが真新しいものになっています。そうなると味わいは半減。なので、購入した後も丈詰めはしないのが基本です」

<p>ジャストサイズの66前期モデルに、スティレ ラティーノのダブルブレザーとアニエスベーのボーダーTをコーディネート。新旧のアイテムを織り交ぜた西口流ミックススタイルだ。「色落ちしたジーンズは、ブルー系でまとめることが多いですね」とは本人の弁。色数を絞ったシンプルな装いながら、ヴィンテージジーンズならではの表情が印象的な洒脱さを醸し出している。</p>

ジャストサイズの66前期モデルに、スティレ ラティーノのダブルブレザーとアニエスベーのボーダーTをコーディネート。新旧のアイテムを織り交ぜた西口流ミックススタイルだ。「色落ちしたジーンズは、ブルー系でまとめることが多いですね」とは本人の弁。色数を絞ったシンプルな装いながら、ヴィンテージジーンズならではの表情が印象的な洒脱さを醸し出している。

<p>すらりとした細身のシルエットが66モデルの真骨頂。後ろ姿もスマートだ。ちなみにイタリアではリーバイスのシルエットをお直しして穿く人も多いが、西口さんはヴィンテージ・ジーンズに関してはオリジナルを尊重して基本的に手を加えることはないそう。</p>

すらりとした細身のシルエットが66モデルの真骨頂。後ろ姿もスマートだ。ちなみにイタリアではリーバイスのシルエットをお直しして穿く人も多いが、西口さんはヴィンテージ・ジーンズに関してはオリジナルを尊重して基本的に手を加えることはないそう。

<p>ヒップポケットにはバンダナを折りたたんで挿している。「ポケットチーフ的な感覚でプラスしていますね」と西口さん。春夏はジャケットを脱ぐ機会も増えるが、そんな場面でもさりげない洒落心を薫らせる演出だ。</p>

ヒップポケットにはバンダナを折りたたんで挿している。「ポケットチーフ的な感覚でプラスしていますね」と西口さん。春夏はジャケットを脱ぐ機会も増えるが、そんな場面でもさりげない洒落心を薫らせる演出だ。

<p>靴はエンツォ ボナフェのビットローファー。ジーンズとの合わせは古くからの定番として知られていて、西口さんもしばしば用いる足元コーディネートだ。ジャケットのボタン、靴のビット、手元のリングをすべてゴールドで統一している点にも注目。</p>

靴はエンツォ ボナフェのビットローファー。ジーンズとの合わせは古くからの定番として知られていて、西口さんもしばしば用いる足元コーディネートだ。ジャケットのボタン、靴のビット、手元のリングをすべてゴールドで統一している点にも注目。

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