警察予備隊の要請で誕生
さて、そのナナマルの紹介の前に、ランドクルーザーブランドについて簡単に触れておこうか。ランドクルーザーシリーズの系譜は、1951年、警察予備隊の要請によって誕生したトヨタジープBJ型からスタート。ヘビーデューティ系としてつまり作業車として様々な現場でも活躍していたが、そのコンセプトは1960年に40系(以下ヨンマル)へと引き継がれ、ショートボディだけではなくロングボディを設定してトランスポーターたる役割も与えられた。
そして、1984年にナナマルへとスイッチし、現在に至っている。ちなみに、ランドクルーザーといえば、200系とプラドがラインナップされているが、200系は1967年に登場した55系から、プラドはナナマルをベースにカジュアルとしたナナマルワゴンから派生している。この辺りはちょっと複雑なので詳しくはまたの機会に。
まずは、日本での販売が終了するまでのナナマルに触れておこう。ヨンマルのコンセプトを引きついだナナマルは、質実剛健たる走破性は妥協を許さず、当時としてはという前提が付くが、乗用車ライクをデザインから走りにまで採用。ボディタイプはショート、それをベースにした幌、そして、FRPトップを組み合わせたミドルを設定していたが、やがて、5ドアとなるセミロング(海外にはロングもあり)、さらにはATを追加し、より一般に受け入れられるモデルとなっていった。
1999年にはフロントサスペンションをリーフ式からコイル式へと改良。しかし、日本仕様のパワーユニットはディーゼルエンジンのみ。当時の排出ガス規制に適合させることが難しかったこともあり、国内での販売を終了した。
こうして、かつてのナナマルを振り返ると、ある意味、日本市場に合わせようとどこか引きずられていたところがあったように思えてくる。その後のナナマルはグローバルな展開を目指して日本向けという箍(たが)が外れたかのように大きく進化していく。
2007年には衝突安全基準を満たすためにフロントセクションに大きく手が加わり、それにともなって5ナンバー幅をベースとしていた全幅は、一気に1790mm(ワイドタイプは1870mm)まで拡大。ついでにとばかりに、グリルとランプユニットをフェンダーまで広げたフェイスとして、中東や豪州に広く受け入れられるテイストをそこにデザイン。いわゆる猫招きフェンダー(タイヤ上部をカバーするようなフェンダーデザイン)は消え去ったが、その分、堂々とした面持ちを手に入れていた。
期間限定で再販された“海外仕様”
10年ぶりに日本でナナマルを目にしたら、違う人になってしまったかのような印象を受けるが、実際にかつてと違う所も多い。そのひとつが、日本にはなかった4リッターV6ガソリンエンジン(しかもハイオク仕様)とMTのみとなったトランスミッションの組み合わせだ。
日本で販売することを考えたならばATは必須ともいえる要件だが、実は、ナナマルとATの組み合わせは日本市場のみだった。つまり、日本での販売終了後はナナマルにATは存在していなかった。だから、再販とはいえ、日本仕様のためだけにATを復活させることはコストの面からも難しかったという。
また、日本ではディーゼルだけだったナナマルに、ハイオク仕様のガソリンエンジンを組み合わせたことについても同様だ。エンジンパワーにおいて、不整地を走破するためには高トルク、パンチが求められるし、砂漠では高回転をキープして走り抜くというテクニックもあって、大排気量かつハイオク仕様が必須。さらには、ナナマルが活躍している地域ではガソリンの価格が日本ほど高くないこともあって、ガソリンかつハイオク仕様がスタンダードとなっていた。
いずれにしても日本仕様に仕立てることは理想なれど、その分、コストは上がってしまい、もちろん、それが販売価格を大きく引き上げてしまう。そこに、右ハンドル仕様(オーストラリア仕様)をベースにするという絶対的な要件も加わって、再販されたナナマルは、この仕様に落ち着いた。