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「恐怖に押し潰されそうなときは父の筆書きの手紙を読み返すんです」(野村さん)

野村忠宏さん

丸山 伝説のゴルファー、ベン・ホーガンの言葉に「朝一番のティショットが不安の半分以上を取り除く」というのがある。それほど初戦はゴルフでも大事ですよ。

野村 初戦は絶対に負けられないプレッシャーもあるので、そんなときは父が毛筆で書いた手紙を試合直前に読み返します。

丸山 やっぱり侍の家系なんだ(笑)。

野村 妻からの手紙も併せて読む。身内からの応援メッセージは、恐怖でどうしようもないときでも素直に心に響くし、勇気が湧きます。

丸山 いい話ですね。ずっと見守ってきたお父様と奥様は、侍のよき理解者なんだろうね。

野村 そうやって試合に臨むので、試合後は荒ぶる気持ちを鎮めるのには時間がかかる。優勝の喜びを実感できるのは翌日だったりしますね。

丸山 アスリートが沸騰することは大事ですよ。ましてや、柔道は命をかけた格闘技であるし。

侍の休日はストイック。ひたすら刀を磨いている!?

丸山 休日はどんなふうに過ごしていましたか? 例えば現役時代は?

野村 実は趣味という趣味は、特にありませんでした。

丸山 美味しいものを食べたりも?

野村 現役中は求めもしなかったです。

丸山 侍だからひとりで刀を磨いていたのね(笑)。

野村 楽しいことや美味しいものを知って、そちらに意識がいくのが怖かった。自制する自信がなかったので自ら規制しました。

丸山 すごい世界だよね。ゴルフとは真逆だもの。僕は子どもの頃から年上の人たちにくっついて、大人の世界を覗いていたけれど。

野村 今は丸山さんのような魅力的な方と知り合ったり、自分の知らない世界を見たりすることが楽しいけれど、現役時代の休日は本を読んだり、映画を観たり、買い物をしたり、とことん寝たり。そのときにやりたいことをしていました。

丸山 買い物といえばお気に入りのテーラーがあるとか。

野村 大阪の「ビスポークテイラーDMG」とは15年来の付き合いです。人前に立つ機会が増えて、きちんとした服を着たくなったんです。既製品でも入らないことはないけれど、胸囲や腕に合わせるとお直しは必須なので。

丸山 だって消防士みたいにロープを登る練習もこなしてきたんだもの、上半身の筋肉は半端ない。現役時代と比べて体型の変化は?

野村 体重は増えました。ただ、これまで大きな怪我を4回してきて、それをカバーする筋肉が必要なので、最低限のトレーニングは続けています。

(つづく)

[MEN’S EX 2020年4月号の記事を再構成]
撮影/筒井義昭 スタイリング/松純〈丸山さん〉 文/間中美希子 撮影協力/FLUX CAFE

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