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田村さんスキーだけを目的とすると、当然ながらスキーができない人は雪山に来ない。以前、僕が苗場スキー場でリフトで上がった所にトランポリンやテントサウナを設置したイベントを開催したんだけれど、そうするとスキーがあまり得意じゃなく、それまで山頂まで来たことがなかった人も、上がってくるようになった。山の上からの絶景を見て「こんなに雪山が綺麗だなんて、今まで知らなかった」って言うんだよ。

佐々木さん日本の雪山は、世界でも指折りの恵まれた環境なんだよね。雪質の良さや降雪量の豊富さはもちろん、アクセスもいい。スイスで北海道と同じような雪質の山で滑ろうとした場合、車を何百キロも走らせないといけないから。でもそれが日本なら、朝一の便で東京を発って、北海道に着いて、極上のパウダースノーを楽しんで、その日の最終便で東京に帰れば、日帰りだって可能! 今、インバウンドで海外の人が大勢日本の雪山に来ているけど、みんなその希少さ、便利さをわかっているんだよ。日本の雪山がいかに恵まれているか、日本人が一番知らないんじゃないかな。

田村さん訪れる人だけでなく、雪山の楽しみを提供する側の課題も多いと思う。スキー場もホテルも、あくまでスキーリゾートという提案しかしていない。スキーだけでなく、雪そのものを楽しむスノーリゾートという感覚に変えていかなければいけない。そうすると、昔はスキーによく行ったけど、年齢を重ねて自信がなくなったという人にも、また雪山に来てもらえる。

佐々木さんとにかく、もったいないのひと言。これまで海外の雪山を散々見てきたけれど、雪山に関してはヨーロッパよりも日本の方が素晴らしいと断言できる。それに気づいていない日本人が多いのは、雪山リゾート地の街づくりにも現れている。海外からの観光客ばかりだから、インバウンド狙いのお店がほとんど。都会でも見かけるようなお店ばかりになると、日本人は尚更行きたいと思わないよね。

田村さん佐々木さん
谷川岳での田村さん(右)と佐々木さん(右から2番目)。佐々木さん曰く「雪山を満喫できるのは、山を熟知した地元の山岳ガイドや救助隊の人達がいればこそです」

佐々木さん日本のウインターリゾートにおいて、長野県の野沢温泉は成功例だと思う。スキー場と温泉地が、ローカルカルチャーを基軸として絶妙に調和している。地の物をふんだんに取り入れた食事処、温泉地をぶらりと巡るのに打ってつけな外湯の充実、そして都会から帰ってきた若い人達によるカフェなどの新たな提案も素晴らしい。

田村さんローカルカルチャーとの連携はすごく重要だよね。ただ大きな箱を作って、その中に色んなものを詰め込む従来のやり方ではもうダメ。ホテルや宿以外にも行ってみたいスポットを作ることで、スキー客以外の人も楽しめるようになる。

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