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そして最後は沖縄拳法空手道の代表的な型であるナイハンチを教わる。ナイハンチ立ちで横に移動しながら行うシンプルな型だが、重心を揃えて移動することを身に付けられる重要な型だ。ナイハンチの立ち方でしっかり立つと、重心は安定するが頭を横に向けるだけで重心はその方向に移動するのだとか。

日常生活のなかでは、無意識にバランスを取ろうと重心を引き戻しているのだが、それをやめてその方向に重心を移動しながら突きを出すのがこの型の稽古だ。そうやって意味を説明してもらうと、よくわからない動作の連続に見えていた型も、深い意味が隠されていたことが実感できる。

沖縄拳法空手

余計なことをしないことで力を引き出すのが武道

菊野選手によれば「武道は筋力の足し算ではなく、いかに”いらんこと”をしないかという引き算」なのだそう。人間の体は小柄な人でも50kgくらいは体重がある。その重さが揃ってボーリングの球が転がるようにぶつかれば、その威力は想像を絶するものになるはずだ(ボーリングの球が当たっただけでも痛そうだが、重さは7kg程度らしい)。人間は普段、バランスを崩さないように重心をコントロールしているが、それをやめて重心を揃えてぶつけるようにすることが型を稽古する意味らしい。

沖縄拳法空手

ナイハンチの型は、畳一畳分のスペースがあれば稽古できるシンプルなもの。菊野選手も「出かけた先のビジネスホテルでもできるので助かってます」と笑う。ただ、今回教えてもらった重心を揃えることや、手先から引っ張るように動くことを意識すると、シンプルな型でも奥が深いことが痛感できた。やってみると「今は重心の動きを止めようと地面を蹴ってしまった」とか、「肩に力が入って手先から動くことができなかった」と”いらんこと”をしてしまっていることが多いのだ。

沖縄拳法空手

しかし、繰り返し稽古していると重心の位置や手の動きなどが少しずつだが上達してくる。シンプルな動きでも、自分の意思通り体がコントロールできるようになってくると面白くなってくるもの。「達人と呼ばれる人の動きを見ていると、体をとても緻密にコントロールしていることがわかります。筋力やスピードは歳とともに衰えてきますが、体の動かし方はいくつになっても上達するので、年齢に関係なく強くなれるんです」とは菊野選手の言葉。年齢に関係なく強くなれて、しかも稽古が面白いのだから言うことはない。

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