旧石器時代一番最初に提供されるのは、旧石器時代「鹿」。クロモジの枝を添えて供される、鹿のコンソメと、干し肉をイメージしたジャーキーで、当時の人々が鹿を狩り、こんな風に食べていただろうというイメージから。特に辛味が強い、長野で採集してきた山椒を目の前で炒って温めて仕上げる。ペアリングは、まだ酒を嗜む風習がなかっただろう、ということで、クロモジ茶。
旧石器時代馬肉のたたきは、当時野生の馬が野山を駆け回っていた、ということから。柔らかいもも肉をごま油と大葉で和え、ウニと山わさびのクリームと合わせた。
旧石器時代今回のイベントのことを聞いた、静岡・焼津の著名な魚屋、サスエ前田魚店の前田尚毅さんから届いた、アンモナイトそっくりの見た目の「ながらみ貝」。ニンニクと沖縄の島胡椒、ピパーツでアーリオオーリオ風に。えぐみのない優しい旨味、特に海の豊かさをそのまま表しているような、肝の旨味の深さが格別。
縄文時代旧石器時代から縄文時代にかけては、石を焚火の中で焼いて取り出し、その上で魚を焼いて食べたという記録があるのだとか。炭で温めた石の上で、カサゴと伊勢海老を焼いて食べる。カサゴは軽く塩を振って旨味を凝縮させて霜降りに、伊勢海老はそのまま。焼くことで香りがたち、中心部がほんのり温まることで、味わいをよりはっきりと感じられる。
縄文時代縄文時代に行われていた、地面に穴を掘って焼けた石、そして塩漬けにした肉を入れ、落ち葉を被せて上で火を焚いた「縄文蒸し焼き」に着想を得た皿。素焼きの土の鍋を大地に見立て、綺麗に洗った山葡萄、クロモジ、朴などの香りのよい落ち葉の中で、天然の舞茸と、熊のラルド(脂)を乗せたニンギョウタケを自らが持つ水分で蒸し焼きにして。キノコ、熊、長野の山で採れた食材を同じ山の落ち葉と共に焼くことで、山のストーリーが完結する。
古墳時代金目鯛は縄文時代に行われていた粘土を使った蒸し焼きに着想を得た。金目鯛は朴葉で包んだ後、縄文土器を思わせる赤土の粘土で、ポール・ボキューズ氏のシグネチャーを思わせる魚の形に仕上げ、焼き上げた。
古墳時代提供する際のデクパージュは、縄文時代に使われていた道具をイメージし、浜田氏自ら手作りした黒曜石のナイフで。
奈良時代奈良時代に作られていた、牛乳を煮詰めて作った古代のチーズ「蘇」に、蟹の殻のビスクを加えてソースにし、ズワイガニとほうれん草、ナラタケを入れたグラタン。バターを使わず、乳脂の旨味よりも、乳糖の甘みを感じる優しい仕上がりは、日本の味のバランスだ。
平安時代平安時代には、中国から中国茶道が伝わった。春菊のパウダーで「お茶」を点て、鮎の頭や骨から取った出汁を加えて注ぐ。
平安時代焼いた鮎、甘いトマトのコンフィ、シシトウガラシ、ディルの花。「パスタに合う食材をまとめた」一口ごとに味の印象が変わる万華鏡のような料理だ。抹茶に見立てた春菊パウダーのスープと、絶妙なマリアージュを奏でる。
江戸時代コース半ばで、提灯を持って登場。照明を落とした雰囲気にもマッチして、幽玄な雰囲気。
江戸時代提灯から出てきたのは大徳寺納豆などの旨味でマリネしたあん肝に柚子のメレンゲを合わせた皿。「まさに、チョウチンアンコウでしょう」と、浜田氏。
昭和時代昭和時代にはなんとカレーも登場。鰹昆布出汁にキャラメリゼした玉ねぎ、トマト、魚の出汁などが入っている。上にはカキフライ。後から好みで山椒をかけて、重層的な芳香と辛味を楽しむ。ラッシーのような乳酸発酵のニュアンスがあるにごり酒と共に。「宇宙から見た地球のイメージで」なるべく海の幸と山の幸を組み合わせるようにしている。器はNYでも活躍する陶芸家で、盟友でもある青木良太氏のもの。あえて細かい打ち合わせはせず、ざっくりとしたイメージを伝えてできてきた器、それから受けたインスピレーションで料理を作る。お互いをよく知るからこそのジャムセッションだ。
現代デザートは、黒いちじくに白ごまのヌガティーヌと和紅茶のアイスクリームを合わせた。いちじくとごまは和食でよく見られる組み合わせだが、日本料理の組み合わせが、日本の食材に合うのはとても自然なことだ。デザートにも、チョコレートやヘーゼルナッツ、ピスタチオなど、日本で育たない食材は登場しない。