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場所の見当をつけてトリガーポイントを探してみよう

慢性腰痛の名医が勧める、自分でできる簡単「腰痛ケア」
PIXTA画像を基に作成

トリガーポイント・マッサージで最も重要なのは、とにかく、自分の腰痛のもとになっている「トリガーポイント」を発見することだ。加茂院長によると「痛みのある場所の周辺筋肉を押したり、もんだりして、最も強く痛みを感じる箇所を探す」「少しずつ押す場所をずらしていく」などするのがコツらしい。

右のイラストの×印と説明を参考にして、細かい名称や場所にはこだわらず、グリグリしながら探してみよう。「これ」と思える場所が見つからない場合は、範囲を広げて探してみるとよい。なお、イラストの×は見やすいように片側だけにつけてあるが、実際は左右両方にトリガーポイントがある。

■おなか側(3ヵ所の×付近)
・腸腰筋(ちょうようきん)は、前屈姿勢や足の引き上げ動作で使われる筋肉。鼠径部(そけいぶ)の上にトリガーポイントがあると、背中の腰椎付近に痛みが出る。

■背中側(1番上の×付近)
・腸肋筋(ちょうろくきん)は、背中でタテに延びる大きな筋肉のひとつ。腸骨(骨盤の上の縁)のあたりにできたトリガーポイントが、腰痛や下肢痛を引き起こす。

■背中側(おしりの筋肉)
・じっと座っていられないような臀部の痛みは、大臀筋(だいでんきん)のトリガーポイントが関係している。
・腰痛の多くと関係しているのが中臀筋(ちゅうでんきん)。腰の仙骨(骨盤の中心部)あたりから股関節にかけて痛みを感じる場合は、ここのトリガーポイントをほぐすとよい。
・小臀筋(しょうでんきん)にトリガーポイントがあると「座骨神経痛」と誤診されやすい。太ももの外側や後面、下腿から足首まで痛みやしびれが広がっているときも小臀筋が関係している。



指でグリグリするのもいいが、加茂院長が推奨するのは、テニスボールを使う方法だ。横になったまま、人の手を借りなくてもできる手軽さがいい。

◎テニスボールの効果的な使い方

・床に置いて、背中やおしりのトリガーポイントに押し当てる。体重をかけるようにしてグリグリする。
・おしりの横側は、身体と壁でボールを挟み、身体を押し付けてマッサージしてもOK。

「ちょっと腰が痛いな」と感じたら即マッサージ!を習慣にしてみてはいかがだろう。

今日からできる腰痛に強い”自分”の作り方

トリガーポイント・マッサージ以外にも、日頃の生活に採り入れて、腰痛に強い「自分」を作る方法がある。

◎セルフ認知行動療法

「痛みは筋肉のトラブルにすぎない」と自分に言い聞かせながら、次のような行動を実践!痛みに対する不安をやわらげ、安心感が持てるようになる。

・鍼灸治療を受ける
・カウンセリングを受けたり、心療内科などにかかったりする
・無理しない程度に意識的に身体を動かす
・好きな音楽を聴きながら近所をゆっくり散歩する
・親しい人と一緒にポールウオーキングをする
・楽しめる趣味を見つける、没頭できる楽しみを持つ

など。

いずれも特別なことではないが、腰痛がひどくなると、こんなことさえやらなくなり(できなくなり)、体を動かさない⇒腰痛が悪化する⇒気力がなくなる⇒ますます体を動かさなくなる…の悪循環になってしまう。

「慢性痛の方の脳は、ほぼ『痛み』に占領されてしまっている状態です。痛みに意識が向いてしまうあまり、痛みが止まらない、新たな痛みを作り出してしまうといったことが起きている場合が少なくありません。認知行動療法は、そうした脳の癖を軌道修正する効果があります」(加茂院長)

◎姿勢からくる「筋肉ストレス」を発散する

いつも同じ姿勢で仕事をしている、無理な姿勢をとり続ける、など「身体的ストレス」がある程度を超えると、いくら休憩しても回復しないようになり、筋筋膜性の腰痛になる。予防するには、途中で姿勢を変える、こわばった筋肉をほぐすなどして、身体的ストレスがかかりやすい状況をなるべく減らす工夫が必要だ。

「ストレスには『心理的ストレス』と、物理的に筋肉に負荷をかける『身体的ストレス』があります。

タクシーの運転手さんに腰痛持ちが多かったり、デスクワーク中心の人が首、肩、背中の痛みに悩まされたり、介護の仕事の人が腰・足に痛みを抱えやすかったりするのも、同じような姿勢や動作を毎日続けることが原因です。気をつけましょう」(加茂院長)

◎無理なストレッチはやらない

健康にとっていいことだらけと思われているストレッチだが、慢性腰痛等の痛みに対しては、逆効果になる場合もある。筋をストレッチする(伸ばす)のではなく、ゆるめることを考えよう。

・やってみて、痛みをより強く感じるような場合はストレッチを控える
・痛みがあるときは「カウンターストレイン」(筋肉の緊張をときほぐす整体術のひとつ)がお勧め

◎方法

1.痛い筋肉に力が加わらない、一番楽な姿勢を見つける
2.その姿勢を90秒ほど保つ
3.ゆっくりと姿勢をもどす

「痛い筋肉を無理にストレッチすると、筋肉はほぐれるどころか収縮して慢性痛を悪化させてしまいます。痛みは筋肉がけいれんすることで起きているので、ケアする際には、筋肉をゆるめてやることを第一と心得てください」(加茂院長)

腰痛は、日本人の国民病と言っても過言ではない。その背景には「きれい好き、時間厳守、ワザや道を極めるという傾向が強い。ということは神経質(不安傾向)→検査好き、こだわりが強い(このことは医師にもいえる)といった特性がある」と加茂院長は考えている。

つまり、もうちょっと「大ざっぱで、時間にもルーズになって、こだわりを捨てる」ことができたら、腰痛患者は減るのかもしれないが、それは無理だ。

せめて、今回ご紹介した方法を実践し、予防に励んでいただきたい。

加茂 淳(かも・じゅん)

加茂整形外科医院(石川県小松市)院長。金沢大学医学部卒業。富山県立中央病院、石川県立中央病院にて整形外科医として研修。1982年小松市に加茂整形外科医院を開業、現在に至る。整形外科専門医、リウマチ専門医、心療内科登録医。これまでに治療してきた患者のカルテは7万件以上。手製のホームページに寄せられる患者からの相談に、1件1件、丁寧に回答していることでも有名。医院、ホームページ共に、慢性痛難民の駆け込み寺になっている。

ダイヤモンド・オンライン

[ダイヤモンド・オンラインの記事を再構成]
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