「肝臓のために1週間の断酒」は正しいか?【酒飲み必見】

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「休肝月」で1ヵ月飲まなくても数値が悪化する人

お酒を飲み始めると、ついつい飲みすぎてしまいがち——。適量を超える飲酒は肝臓を傷め、中性脂肪、脂肪肝、動脈硬化を促進させる毒となります。書籍『薬を使わずに「生活習慣病」とサヨナラする法』を出版した総合内科専門医の秋津壽男氏が、お酒との正しい付き合い方について解説します。

「肝臓のために1週間ほど断酒」は正しいか?
Photo:PIXTA

肝臓の数値は「1週間の断酒」で正常になる

「中性脂肪が高い」

「脂肪肝の疑いがある」

健康診断で、このように指摘された人は、肥満対策と合わせて、飲酒習慣も見直していきましょう。

アルコールは、肝臓で最終的に酢酸に作りかえられて無害化されます。この途中で合成される「アセトアルデヒド」という物質が、血管を傷つけ、動脈硬化を進めると考えられています。つまり、お酒の飲みすぎが、脂肪肝のみならず、動脈硬化から脳卒中や心筋梗塞を招く可能性もあるということです。

お酒が大好きという人は、飲み方を今すぐ見直すに越したことはありません。まず、1週間ほど、お酒を断ってから、血液検査を受けてみてください。

「毎日、晩酌を欠かさない」という人には酷な話かもしれませんが、アルコールを断つビフォア&アフターの数値の変化が、その後の対策を左右します。肝臓が、まだ本来の再生能力を保っていれば、γ-GTPは、1週間の断酒で十分、正常値にまで回復します。それにともなって、中性脂肪もストンと下がるはずです。

1週間、お酒を断ってみて、数値が正常化したらギリギリセーフ。といっても、元の飲酒習慣に戻していいというわけではありません。今までの飲酒習慣で、中性脂肪やγ-GTPの数値が悪くなった。この事実をなかったことにしてはいけません。「お酒を飲みすぎていたせいで数値が悪かったんだ」と、原因が特定できたのですから、あとは対策あるのみです。

「休肝月」を設けても肝臓が悪化した患者

肝臓は非常に再生能力の強い臓器です。20代や30代までは、お酒が好きで検診のたびに肝臓の数値が少々悪くても、お酒をやめればすぐに健康な状態に戻ります。しかし、飲酒習慣を見直さないまま30代を過ぎ、40代、50代にもなると、さすがの肝臓も徐々に回復力が落ちていきます。

私の患者さんにも、こんな人がいました。会社の定期検診で肝臓の数値が悪く出てしまい、検診後の診察で「休肝日」を設けるよう医師に言われたそうです。そこで、その人は1ヵ月ごとに「お酒を飲む月」「飲まない月」と決め、飲む月は好きなだけ飲み、飲まない月はいっさい飲まないようにしてみました。お酒を飲む月に肝臓がダメージを受けても、飲まない月に回復してくれれば、プラマイゼロだろう、というわけです。

しかし、思惑どおりにはいきませんでした。その人の要望で毎月、血液検査を行なったところ、徐々に肝臓の数値が悪くなっていったのです。それに呼応するように体重も中性脂肪も徐々に増えていってしまいました。いくら肝臓の回復力が優れており、肝臓を休める期間を設けるといっても、大きなダメージを与え続ければ、次第に傷んでいくのです。

1日に日本酒0.7合、ワインならグラス1杯が適量

もし、お酒を断っても数値が悪いままだったら、残念ですが、すでに肝臓がだいぶ傷んでいるということです。健康長寿を願うのならば、「お酒は打ち止め」と考えて、断酒することをおすすめします。

でも、1週間、お酒を断って数値が正常化したのなら、脂質異常症(高中性脂肪血症)でも脂肪肝でも、まだ救いようがあるということです。救いようがあるうちに対策すれば、一生、元気な肝臓でいられます。せっかく正常値に収まった数値を、また異常値にしてしまわないために、飲酒を適量に調整していきましょう。

適量を超える飲酒は、中性脂肪、脂肪肝、動脈硬化を促進させる毒となります。お酒を薬から毒へと転じさせない「適量」は、「1日に日本酒0.7合」。ビールならば350ミリリットル缶1缶、ワインならグラス1杯程度です。酒豪を自任する人には、かなり物足りないように思えるかもしれません。でも、適量を守れば、毎日飲めるし、一生飲めると考えれば、それほど残念な話でもないはずです。

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