多くの個を束ね、組織を成功に導いている一流のトップには、どんな思考があるか?会社のマネジメントにも役立つ”ヒント”を加藤綾子さんがそっと探り、お届けする。
第15回 「ニトリホールディングス」代表取締役会長兼CEO 似鳥昭雄さん[前編]
※最後に加藤綾子さんのスペシャルフォトギャラリー付き!
Profile
加藤綾子 Ayako Kato
1985年、埼玉県出身。2008年、フジテレビ入社、看板アナウンサーとして活躍。’16年、フリーアナウンサーとなり、’18年には『ブラックペアン』(TBS)で女優にも本格挑戦。現在は『ホンマでっか!? TV』(CX)、『世界へ発信! SNS英語術(NHK)、『MUSICFAIR』(CX)にてMCを担当。
似鳥昭雄 Yusuke Horie
ニトリホールディングス代表取締役会長兼CEO。1944年、樺太生まれ。’67年、似鳥家具店を札幌で創業。’72年、似鳥家具卸センター株式会社を設立。’78年、社名を株式会社ニトリ家具に、’86年、株式会社ニトリに変更。2010年、持ち株会社へ移行。’17年には500店舗を達成。近著に『リーダーが育つ55の智慧』(角川書店)。
「”人とは違うこと”ばかり考えてやってきたし、次々とやってくるピンチも慣れてしまえば、逆境こそチャンスと思うようになります」
(似鳥さん)
変化に対応できる社員を作らないといけない時代
加藤昨年の秋の「日本 メガネドレッサー賞」では、同じ受賞者として壇上でご一緒させていただき、光栄でした(※似鳥さんは経済界部門、加藤さんは文化界部門を受賞)。実はニトリの商品には普段からお世話になっていて。
似鳥何をお持ちですかね?
加藤掛け布団と、部屋に飾っている時計と写真立て、あとニット帽をかぶっている雪だるまのライトです(笑)。お店に行くと生活に密着した欲しいものが必ずあって、すごいなぁと思っています。
似鳥例えばクリスマスの商品企画は、一年前から始まります。前年のヨーロッパやアメリカのクリスマスシーズンに調査に、または展示会に行って、毎年違う流行を作るんです。
加藤流行に乗るんじゃなくて、作るんですね。
似鳥その通りです。最先端の流行を毎年バージョンアップするっていうのかな。家の中のファッションはうちが日本をリードして、コーディネートを提案していこうという考えでやっています。日本も今でこそ豊かになりましたけど、私が23歳で札幌に家具店を立ち上げて、1972年に27歳で初めてロサンゼルスへ視察に行ったとき、この国はアメリカに少なくとも50年は遅れていると思いましたね。その頃の日本は食事も家族の団欒も全てちゃぶ台だけで済ませていたし、家具といってもタンスや鏡台くらいで、寝るときも布団を敷いて終わりです。ダイニングテーブルもチェアも、ベッドもソファもない時代でした。だから、私の使命は家具を売って儲けることじゃない。アメリカ並みに日本の暮らしを豊かにすることに自分の一生を捧げて、それを生きがいにしようと決めました。
加藤ホームファッションのコーディネートを豊かにすることが、日本の暮らしを豊かにすると。
似鳥そうです。日本では大金持ちしかできない暮らしを、向こうでは普通のサラリーマンが手に入れている。つまり、商品が日本の半分以下の価格で市場に出回っていて、なおかつモダン、クラシック、コンテンポラリーというスタイルごとに売り場がコーディネートされていて、お客は好きなスタイルを選べるわけです。しかもカーテンやカーペット、寝装品や食器類も売られていて、家庭の中の全てのものを扱うことが、豊かな暮らしなんだと思いました。
加藤それが現在のニトリのかゆいところにも手が届く商品構成につながっているんですね。
似鳥帰国後、それまでは家具だけだった商品構成を変えて、カーペットや絨毯を採用していきました。例えばカーテンを買おうとすると、新築ともなればオーダーで30万円くらいかかる。でも、うちでは既製品を作って、10分の1の3万円くらいで売れないかと。そうすることでファッションと同じように、春ならピンクや花柄、秋なら暖色で厚みのある生地…と春夏秋冬でカーテンを掛け変えることもできる。2、3年で捨てても惜しくないですよね。
加藤インテリアでも一年を通してコーディネートを考えることができるって、楽しいですね!