第5回「青山学院大学」陸上競技部 長距離ブロック監督 原 晋さん[前編]
「カトパン」ことフリーアナウンサーの加藤綾子さんが一流のトップに組織マネジメントや成功のヒントを探り、そっとシェアする「一流思考のヒント」連載。今月は、青山学院大学陸上部を箱根駅伝に4連覇に導いた名将・原監督。選手の才能を見出し、適材適所に配置し、伸ばしていくその手腕とは——?
※最後に加藤綾子さんのスペシャルフォトギャラリー付き!
Profile
加藤綾子 Ayako Kato
1985年生まれ。2008年フジテレビ入社。2016年よりフリーアナウンサーになり、さらに活躍の場を広げる。現在はフジテレビ「ホンマでっか!?TV」、NHK「世界に発信!SNS英語術」にレギュラー出演中。
原 晋 SusumuHara
1967年生まれ。中国電力で競技者〜サラリーマンを経て、2004年に青山学院大学体育会陸上競技部長距離ブロック監督に就任し、2009年に33年ぶりに箱根駅伝出場。2015年初優勝、2018年4年連続総合優勝。
下には様々なことを経験させてチャンスを与える。そのうえで彼らの最大能力を見る。その目がない人が上に立ってはダメです
(原さん)
専門外の世界にも切り込み人間の幅を広げる
加藤まずは箱根駅伝四連覇、おめでとうございます! エースが卒業して、選手が入れ替わっていく中で、毎回どうやって強いチームをつくっていかれているのかを、今日はまずお伺いしたくて。
原地層を積み上げていくようなものでして、10年後のチームのあり方や大義を掲げて、そのために実現できる半歩先の目標をつくって、チームが一枚岩となって繰り返し努力していく。大きな建物を建てていくのにも似ていて、土台を積み上げていくから崩れないんです。
加藤選手によって、アドバイスの仕方を変えたりもされるんですか?
原人を見て言い方を変えてしまうと、木でいうと幹の部分がブレてしまう。あくまでそこは崩さずに個々と向き合っていくことを考えていますが、青山学院の場合は、うちのカラーに合った学生だけを入れるようにはしています。
加藤青学カラーとは?
原自分の言葉を持っている表現力のある子でしょうか。というのも、僕の指導は首根っこをつかんで走らすわけではなくて、ポイントごとにキーワードを伝えて、それを線に置き換えていく作業は学生にさせるんです。だから、イマジネーションがない子は青学では成り立たない。
加藤それをスカウトの際に見抜くのは大変そうですね。
原いつも「今から10の質問をしますので、答えてください」と言うんです。身長、体重、他にも血液型や好きな教科、5千メートルの自己ベスト……。そして最後に「自慢話をしてください」と伝えるんですが、そのときに自分を表現するボキャブラリーを持っているかが大切です。だから、逆に自分で考えたくない、監督から事細かに指導されたい学生は、うちでは伸びません。
加藤ただ、個々の才能を伸ばしていく術も、原監督は絶対的にお持ちだと思います。
原多くを求めないことじゃないですかね。あるいはうまく誘導することじゃないでしょうか。監督に言われたからやっているんじゃない。「僕はあなたの夢の実現のサポートをしているだけであって、あなたがやりたくないことを無理やり押し付けません」というスタンスで「この目標はあなたが考えたんだよね」と問いかけ、最後は当人にやると言わせる。
加藤自主性や主体性を植え付けるということでしょうか。
原それはきれいな言い方で、つまり、逃げ道はつくらせないということでしょうか(笑)。