
ワインディングに差しかかると、またグッド・サプライズが待っていた。左右に急に切り返すような場面でこそルーフの高さや重さを感じさせることもあるが、なかなか軽快で楽しめるハンドリングなのだ。鼻先が重くなりがちなディーゼルを積みつつ、フロント周りの剛性が音を上げない基本骨格は、さすがといえる。しかも試乗車はR-ライン仕様で、カタログ・モデルではオプションとなる「DCC」、アダプティブシャシーコントロール、つまりコンフォートやスポーツなどのドライブモード選択に応じてダンパー減衰力を変化させられる機構が備わっていた。前者では確かに足が柔らかく上下動を増すし、後者では足回りが締まってロールが抑えられていることが、はっきり実感できた。ちなみにこの機構は足回りだけでなく、エンジン出力カーブやシフトスケジュールにも影響する統合コントロールなので、環境への配慮優先の「エコ」やパーソナライズの効く「カスタム」も用意されている。

またシートも硬過ぎず、後席の足元スペースも広々としており、居住性もよく造り込まれている。インテリアは全体的に無難な印象だが、引き算を利かせた機能的なデザインでクロームをはじめとする光モノの面積も控えめ。地味ながら快適性は高いのだ。 いってみればティグアンTDI 4モーションの魅力は、CセグSUVにしてはいい意味で重量感のある乗り心地、Dセグ以上のクラスでは普及し始めたもののCセグではまだまだ高級装備といえるアクティブシャシーコントロールをオプションで選べる点にある。控えめなスペックのディーゼルエンジンでワンクラス上の質感やライドを味わえる、という意味でお勧めだ。というのも単なる燃費狙いならFFモデルに同じエンジンを積むべきだし、そうしないことでCセグとしては高いが、Dセグに比べたらお買い得価格を掲げているのだ。