輸入車を中心にディーゼルが日本市場でシェアを伸ばしている。実際、年間走行距離の伸びやすいドライバーにはガソリンや電気よりも適したソリューションだし、軽油が余りがちなエネルギー事情の日本では、まだ伸びていい余地はある。
ティグアンのボディとエンジン(写真2枚)
とはいえ2015年にアメリカで発覚した排ガス不正事件の余波で、フォルクスワーゲンの日本市場導入は後手に回っていた。そのディーゼルエンジンが日本の規制値とほぼ同じレベルのユーロ6.2対応に進化したことで、2月にパサートTDIが日本上陸したのに続き、今回ティグアンの4モーションにも、2リットルの150ps・340NmのTDIを搭載モデルが追加されたのだ。
ボルボやメルセデス・ベンツにBMW、プジョーらに後れをとったとはいえ、VWのディーゼル攻勢第2波が売れ筋のSUVに及んできたことは歓迎すべきだろう。7速DSGの4モーション仕様を投入するのは、豊富なパワートレインを誇るVWならではの冴えた戦略といえる。加えてティグアンの150ps・340Nm というTDIエンジンはボルボのD4やプジョーのBlueHDi180といったハイエンド・ディーゼルよりも、欧州ではスタンダード寄りの強いスペックであり、それらに伍するのはパサートTDIの190ps・400Nmという訳なのだ。
電子制御油圧式のハルデックスカップリングによるAWDであることは、ティグアンTDI 4モーションの大きなアドバンテージに違いないが、1730kgという車両重量はかなり重い。ところが走り出して感心するのは、ライバルに比べてスペック的には譲るはずのトルクの出方が、予想以上にスムーズで心地よいことだった。シャフトシールやベアリング類が見直された新世代の7速DSGの協調制御が巧いことに加え、4モーション搭載によって荷重を増した後車軸側のホイールベアリングが強化された効果もあるだろう。初速のつき方が滑らかで、走行音自体も静かなのだ。
エキゾースト音はとくにディーゼルであることを隠すタイプではなく、アイドリングでカラカラ音は多少するが、走行中の車内ではそうした周波数の音がきっちり遮られ、静粛性は高い。内装はよくいえば機能的、悪くいえば事務的ながら、緻密な質感がある。フルデジタルのメーターパネル内にナビ画面を映し出せるし、ヘッドアップディスプレイも備わるなど、視認性や運転環境の面では申し分ない。