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菅谷幹雄 東和プラム ギャラリーを見る(写真2点)

【キーパーソン】

’70年代は、オーダーメイドから既製服にシフトした時代。当時の「プラムイワテ」は、生産スピードの速さだけが重要ではなく、オーダーメイドの雰囲気を備えるスーツを既製服で目指した。しかし、日本人の技術者では困難だと思われた。白羽の矢が立ったのは、現役でベテランのイタリア人モデリスト、コスタンツォ・オーベルダン。イタリアの名門サルトリア「D.カラチェニ」で仕立ての技を磨き、大量生産で品質の高いスーツを生産する「ブルックス ブラザーズ」の技術責任者などを務めた、腕利きのモデリストだ。工場の開業に合わせて来日し、花巻の地に住んだ。2年の間毎日、イタリア特有のしなやかで着心地のいいスーツづくりの指導にあたった。

【技術】

「東和プラム」が、傑出した縫製工場として成長したのは、まさにコスタンツォ・オーベルダンが教え込んだ技術の継承である。とりわけ、“純正かま襟”と呼ばれる仕立て技は圧巻だ。平らな襟にアイロンを掛け、手の力加減で襟を曲げる作業を繰り返す超絶技巧。かま襟は、首回りに吸い付くような形状で、首の付け根にジャケットの重心が乗り、軽やかで着崩れのない極上の着用感をもたらす。現在も工場には、オーベルダンの教えを直に受けた超ベテランのふたりの職人が仕事を続けるほか、40?50代の熟練の技術者が中心となり、若い世代に技術を伝授する。

【モットー】

オーベルダンの技術の継承に加え、スーツは、着やすく、綺麗でなければならないとする社長の菅谷幹雄さん。ラペルの端を薄く仕立てることが、美しく見栄えのいいスーツになると言う。従業員は総勢71名、月産1100着の規模で、日本屈指の上質なスーツを生み出す。近々、パンツの生産も自社で賄う予定。いよいよジャケットとパンツの生産を一手に引き受けることで、スーツの出来栄えの総合的な向上を「東和プラム」は、さらに狙っている。

(1)既製の工程でも、オーダーメイドのテーラーと変わらない、手作業でつくり上げるのが「東和プラム」の'純正かま襟'。アイロンで襟をプレスしながら、手の力加減で襟をグイグイと曲げていく。

(1)既製の工程でも、オーダーメイドのテーラーと変わらない、手作業でつくり上げるのが「東和プラム」の'純正かま襟'。アイロンで襟をプレスしながら、手の力加減で襟をグイグイと曲げていく。

(2)ラペルのハ刺し。専用のミシンを使用して縫製するが、ステッチの数は実に細かくて多い。ラペルの縁を薄く美しく、柔らかくするために端から1.5mmのところにステッチを掛ける。

(2)ラペルのハ刺し。専用のミシンを使用して縫製するが、ステッチの数は実に細かくて多い。ラペルの縁を薄く美しく、柔らかくするために端から1.5mmのところにステッチを掛ける。

(3)オーベルダンから直に指導を受けた、超ベテランの名職人が披露したのは、上襟の'はしごがけ'。上襟と後ろ身頃の端を重ねずに、生地を突き合せてジグザグに縫製。首回りの快適な着心地を実現する技術だ。

(3)オーベルダンから直に指導を受けた、超ベテランの名職人が披露したのは、上襟の'はしごがけ'。上襟と後ろ身頃の端を重ねずに、生地を突き合せてジグザグに縫製。首回りの快適な着心地を実現する技術だ。

(4)無地の生地は、裁断専用の機械CAM(キャム)を使う。一方、チェック柄は、生地がずれないように1枚ずつ手で裁断する。まさにオーダーメイド感覚である。

(4)無地の生地は、裁断専用の機械CAM(キャム)を使う。一方、チェック柄は、生地がずれないように1枚ずつ手で裁断する。まさにオーダーメイド感覚である。

<b>Good President!</b><hr style='margin-bottom:20px'>リーマンショックと東日本大震災に見舞われ受注の減少が続いた当時、紳士服業界に顔が広い菅谷幹雄さんが、「東和プラム」の社長に抜擢された。スーツの美を熟知した大ベテランである。

Good President!
リーマンショックと東日本大震災に見舞われ受注の減少が続いた当時、紳士服業界に顔が広い菅谷幹雄さんが、「東和プラム」の社長に抜擢された。スーツの美を熟知した大ベテランである。

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