SIHH取材 DAY 4
ベネディクト・カンバーバッチさんも来場
1950年代に登場して以来、時代に合わせてさまざまに変化しながら、ロングセラーとして人気を得てきた、ジャガー・ルクルトのアラーム機能時計が「メモボックス」だ。
僕も昔、小型のポケットウォッチ型のメモボックスを愛用していたが、アラームをセットしておいた時間が来ると、結構な音量でベルが鳴り、目覚めたい時間や、約束の時間などを教えてくれるので便利だった。
今年はそのメモボックスが、ポラリス・シリーズの一本として登場したから、その便利な機能を使ってみたいと考えていた時計ファンには嬉しいニュースとなるだろう。
ジャガー・ルクルトの「ポラリス」は、1960年代にそのルーツを持つ、メモボックス機能を持つダイバーズウォッチで、水中でも設定した時間が経過したことを、振動で伝えてくれる時計であった。この時計はごく少量しか生産されなかったため、コレクターが探し求めるレア・アイテムとなっている。
ポラリスというのは北極星のことで、この時計が登場した1960年代というのが、宇宙探査に沸いた時代であったためネーミングされたのかも知れない。また当時最新鋭であった、アメリカの原子力潜水艦の名前でもある。
ポラリス・メモボックスの50周年を記念して作られた、ポラリスの新シリーズにはこのほか、自社開発のクロノグラフに、ワールドタイマー機能を備えたモデルや、回転式インナーベゼルを持ち、それで経過時間を読み取ることができる三針モデルなど、バラエティ豊富に作られている。
ところで今年2018年は、ジャガー・ルクルトのルーツである会社が発足して185年目なのだそうだ。フランスと国境を接するジュウ渓谷の、ル・サンティエの町で、数々の名作ムーブメントを作りだし、最初期にはスイスやフランスの高級ブランドを下支えし、そしてまた自社のブランドを通じて、回転するケースで風防を護るレベルソや、空気の温度差をエネルギーに動くアトモスなど、時計の世界に革新の風を吹き続けてきた、偉大なマニュファクチュールの、さらなる未来に期待したいと思う。
Profile
松山 猛 Takeshi Matsuyama
1946年京都生まれ。作家、作詞家、編集者。MEN’S EX本誌創刊以前の1980年代からスイス機械式時計のもの作りに注目し、取材、評論を続ける。SIHHは初回から欠かさず取材を重ね、今年で28回目。
撮影/岸田克法 文/松山 猛