電気やV6では実現できないフィーリング
昨年の12月、北イタリアの積雪地帯に開かれた雪上特設コースでおそらくはこれで最後となるV8エンジン搭載のマセラティ各モデルを堪能するという機会に恵まれた。筆者が試したのはクアトロポルテ トロフェオとギブリ トロフェオのFR V8セダンに、SUV のレヴァンテV8ウルティマ(ブル・ロワイヤル)である。
雪上トラックにおいて最もドライビングを楽しめたのは、やはり最も“小さい”セダンのギブリだった。試乗車は残念ながら334ウルティマではなかったけれど、雪上でのドライブフィールは変わらないはず。パワーとサウンドを堪能しながらコンパクトなボディを振り回す楽しみも、これが最後だと思うと残念でならない。マセラティラインアップの中で今、最もオススメの実用と趣味を両立するモデルだと思う。
雪上でもバランスが良く比較的カンタンに操れたのがクアトロポルテだ。ギブリに比べてホイールベースが長いため、反応がほんの少しマイルド。敏感な雪上ではその“ほんの少し”がモノをいう。もっとも、運転しやすいがためについ調子に乗ってコースアウトすることも多かった。
ギブリも、そしてクアトロポルテもV8を積むトロフェオでは、右足を踏み込んだとき即座に感じる力強さが半端なく大きい。エンジンの力強さがダイレクトに車輪へと伝わっているようにも思える。この感覚、電気自動車ではなかなか実現できないし、V6エンジンでも難しいと思うのだが…。
山間の特設コースからいくつか峠を下って宿泊するホテルまでドライブした。途中、前が見えないくらいに吹雪く。そんな山道を走ったのはレヴァンテV8ウルティマだ。
大型SUVのレヴァンテもまたV8を積んだトロフェオが最もマセラティらしい。筆者のお気に入りでもある。背が高いだけで、その走り質感はセダン系とほとんど変わらない。特にハンドリングの素直さが、路面環境の悪い道では嬉しい限り。V8エンジンのパワーを解き放てない環境であっても、その静かな振動とノイズをしみじみと楽しんだ。のぶとい唸り、それはそれで心地よい。
マセラティ最後のV8エンジン搭載モデル。限定車もそうでないグレードも、今年のオススメモデルであることは変わらない。
文=西川淳 写真=マセラティ 編集=iconic






