3種類のPHEVをラインアップする“ベストセラー”
ポルシェのセールスが好調だ。コロナ禍においても右肩上がりの成長を遂げてきた。それを牽引するのがSUVモデルだ。2022年の総販売台数でも1位がカイエン、2位がマカンだった。2023年の第3四半期までをみても、1位がマカン、2位がカイエンとなっている。
そして、2023年4月の上海モーターショーでカイエンの新型がワールドプレミアされた。まだ日本でも納車が始まったばかりであり、ポルシェのベストセラーモデルとして、第4四半期からは販売台数をのばしていくことは間違いないだろう。
新型はいわゆるマイナーチェンジ版である。しかし、“ポルシェ史上、最大級の広範な製品アップグレード”とうたうだけあって、変更点はエクステリアだけでなく、インテリア全体、インフォテインメントシステム、ライティングシステム、エンジン、モーター、シャシーと広範にわたる。
ポルシェのグレード展開は、ベースモデルにはじまり、S、ターボ、GTSと拡充されていくのが通例だが、カイエンのそれは電気自動車への移行期でもあって少しばかりややこしい。導入当初は、まず3リッターV6の素の「カイエン」、それをベースとしたPHEVの「カイエンE-ハイブリッド」、従来の2.9リッターV6から4リッターV8ツインターボエンジンとなった内燃エンジンモデルの「カイエンS」が設定された。ボディタイプは、SUVとクーペの2種類がある。
このたび新たに追加されたのが、2種類のPHEV、「カイエンS E-ハイブリッド」と、フラッグシップの「カイエンターボ E-ハイブリッド」だ。これにより新型カイエンには3種類のPHEVモデルが設定されたことになる。ポルシェでは総称して「カイエンE-Performance」と呼ぶ。
これら「カイエンE-Performance」が搭載するモーターおよびバッテリーなどはいずれも共通のもの。モーター出力は先代比で30kW増の130kW(176ps)、モータートルクは460Nm、バッテリー容量は17.9kWhから25.9kWhに増大したことで、電気のみによる航続距離は最長90km(WLTPモード)を実現する。
エクステリアは、まずヘッドライトの形状が変更された。目頭のあたりを見ると、先代では丸みがあるが、新型では尖ったエッジの利いたデザインになっていることがわかる。新型は全車にマトリクスLEDヘッドライトが標準装備となったが、新たに「HDマトリクスLEDヘッドライト」がオプション設定される。これは各ヘッドランプあたり3万2000以上の画素で構成され、他車を識別すると、ハイビームを画素単位で遮断しドライバーの眩惑を防ぐというもの。
ヘッドライトの変更にあわせてボンネットのデザインもより立体的に、バンパーの開口部もより大きくスクエアな印象になった。リア部分では、先代では横一文字のリアコンビネーションランプの中央部分がくぼんでいたが、新型では1本の力強いラインに見えるデザインになった。カイエンオーナーじゃなければ見逃してしまうような細やかな変更を加えるあたりはポルシェらしい手法といえるものだ。
インテリアは全面刷新といえるほど大幅に変更された。電気自動車「タイカン」の要素を取り入れたもので、メーターパネルは、ナセル(日除け)のないフリースタンディングデザインの12.6インチ曲面ディスプレイを採用。センターディスプレイのほかオプションで助手席専用のディスプレイも用意された。オートマチックギアセレクターは、ステアリングホイールの隣に移設し、これによりセンターコンソールにスペースが生まれ、ブラックパネルデザインの大型エアコンディショナーコントローラーを配置するなどしている。