「見て・触れて・感じる」躍動する香港アートシーンの今【大人の週末香港旅_03】

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「見て・触れて・感じる」、躍動する香港アートシーンの今

「見て・触れて・感じる」、躍動する香港アートシーンの今

中国本土はもちろん、アジア太平洋地域へのゲートウェイとしても機能している香港は、東洋と西洋の文化が交錯する場所であり、建築や芸術、音楽、映画などが東西の融合を体現している。そんな文化的背景もあって、香港特別行政区政府は、香港をアジアにおける文化と創造性の都市として位置付けている。

なかでも注目すべきエリアが、西九龍文化地区。ここには、上海や北京など、中国本土を結ぶ高速鉄道の駅があり、コロナ禍を経た今、本土からの観光客が見込めることなどもあり、香港政府は西九龍地区一帯をアートハブにする構想を推し進めているのだ。さらに、香港は、世界最大級のアートフェア「アート・バーゼル」の舞台になっていることでも知られるとおり、アクセスの良さ、人種の多様性、そして、アートコレクターにとっては税金面でのメリットも後押しとなって、アート界でもアジアのハブ的存在となっている。

そこで今回、コロナ期間中にオープンした西九龍文化地区のランドマークとも言える2大施設を訪れた。旅先だと、ちょっとテンションが上がって、普段しないことを愉しめることがある。そう、香港旅はアートとの距離を縮めるチャンスになるかも!?

香港の食べ歩きは「昼と夜」を賢く使い分けるのが正解【大人の週末香港旅_02】

香港発! 現代アートのハブ、『M+』の存在感を体感!

アジア最大規模のモダンアートミュージアム『M+(エムプラス)』

2021年11月にオープンした、アジア最大規模のモダンアートミュージアム『M+(エムプラス)』は、新しく埋め立て造成整備された西九龍文化地区に造られていて、このエリア自体が広大な敷地面積を誇る。

モダンアートミュージアム『M+(エムプラス)』の外の景色
建物南側には広大な緑地を整備。市民の憩いの場、交流の場として活用されていた。屋外のデッキスペースでは、緑を眺めながら、のんびりとした時間を味わえる。
モダンアートミュージアム『M+(エムプラス)』のメインホール
左:1階のメインホール。吹き抜けの大空間。右奥が受付カウンターになる。 右:柱周りのデジタルサイネージ作品に仕立てられたドナーウォール (美術館への寄付者たちの氏名を記した壁面)は日本のウェブデザイナー中村勇吾さんが制作を手がけたもの。

建物1階は四方向からのアクセスができる、とても開かれた構造になっているのが特徴だ。建築設計は、テートモダンや東京・青山のプラダを設計したことでも知られるスイスの建築家ユニット、ヘルツォーク&ド・ムーロン。延べ床面積1万7000m2の展示空間は33のギャラリーに分かれており、20世紀以降の絵画・写真・映像・建築・デザインといった広範囲に及ぶ「視覚芸術」をテーマにした美術品がそれぞれ展示されている。コンクリートの自由さを活かして、ダイナミックに展開される高さや奥行きのある空間は、欧米各国の美術館と比べても引けを取らない素晴らしさだ。

モダンアートミュージアム『M+(エムプラス)』の螺旋階段
2階から3階への螺旋階段。このスペースを中心として周囲に多数のギャリーが配置される構造になる。
モダンアートミュージアム『M+(エムプラス)』の展示
香港や中国など、アジア諸国はもちろん、米国や欧州、日本からやってきたアート、デザインコレクションを展示する。

どこかで見た!? 日本人にも身近なアート作品が随所に

「East Galleries」は、アジアを中心としたデザインや建築の変遷をテーマ別・年代別に紹介しており、「M+」のリードキュレーターである横山いくこさんがキュレーションを担当している。「Made in Japan」や日本人アーティストの作品を含めた、アジアの美術が数多く展示されているので、日本人にとってはアートをより身近に感じられる施設、と言えるかもしれない。今回はその中から、いくつかの代表的な展示を紹介したい。

モダンアートミュージアム『M+(エムプラス)』の展示
(左)左から、1972年「Lamp (Oba-Q) 燈」、アクリルサイドテーブル、1988年「ミス・ブランチ」 (右)アクリルのフラワーベース。
倉俣史朗さんの作品

1960年代後半から空間デザイン、家具デザインで革新的な作品を発表した日本を代表するデザイナー倉俣史朗さん。生涯にわたって好んだアクリルでは、透明で浮遊感のある作品を多数生み出した。アクリルの作品群をはじめ、家具やプロダクトのスケッチ原画など、希少な作品が多数収蔵されていた。

倉俣史朗設計の寿司店「きよ友」
「M+」がコレクションとして購入した、倉俣史朗設計の寿司店「きよ友」。外観内観もそっくりそのまま再現された。

アクリル作品に加え、「East Galleries」コレクションで大きな話題となったのが、新橋(東京)の鮨店をまるごと移築した「きよ友」。倉俣さんが1988年にデザインを手がけたものを、展示のために「M+」がなんとまるごと買い取り、解体して香港で組み直したのだそう。

倉俣史朗設計の寿司店「きよ友」
曲線を描いた天井や御影石のカウンター、当時の食器まですべて日本から移築された。

倉俣さんがデザインした家具などは「MoMA」をはじめ、世界中の美術館に展示されているが、店舗をまるごと美術館が購入して公開する試みは稀。家具やプロダクトを始め、多くの空間デザインを手掛けた倉俣史朗さんの功績を次世代へと伝えることができる、「M+」ならでは秀逸なキュレーションといえるかもしれない。

田中一光さんと山口はるみさんの作品
左:山口晴美「1977 Summer,poster for PARCO」 右:田中一光「Issey Miyake1997poster」

そして、「East Galleries」にはもう一つ、見逃せないグラフィックの展示がある。日本のデザイン界に大きな功績を残した巨匠、田中一光さんの作品をはじめ、山口はるみさんがエアブラシで描いたPARCOのポスターの原画を見られるのだ。1970〜80年代に掛けての広告クリエイションの黄金期をパルコとともに築いたイラストレーターとして知られ、ハイセンスでセクシーな、新時代の女性像を提示することで、当時の女性たちの都会的なライフスタイルを後押しした。

亀倉雄策さんと福田繁雄さんの作品

さらに、東京オリンピックのロゴマーク(左)で、グラフィックデザイナー亀倉雄策さんの名を知ったという人は多いはず。1964年の東京オリンピックのロゴマークは、赤と金だけの実にシンプルな組み合わせだが、見るものに強烈なインパクトを与えた。そして、日本を代表するグラフィックデザイナーをもう一人。福田繁雄さんが、1970年に手掛けたカゴメトマトケチャップのポスター。一度見たら忘れられないユーモアがあふれる。

NTTドコモが開発した携帯電話の絵文字や「たまごっち」など日本のプロダクトの展示

こちらは偶然見つけた展示だが、私たちがかつて親しんできたNTTドコモが開発した携帯電話の絵文字やバンダイの「たまごっち」など、懐かしのプロダクトとの再会があり、芸術に専門的な知識や知見がなくても愉しむことができる展示にもなっていた。ありとあらゆる日本のプロダクトが展示されており、世界に誇れる日本のものづくり、また香港における日本文化への関心度の高さを窺い知ることができた。

どこかで一度は見たことのある馴染みのデザインでも、こうしてアジアとしての視点から俯瞰されることで、改めてそれらの魅力を再発見することができた。これだけの数の希少な展示を一同に鑑賞できるミュージアムは、アジアでは「M+」以外まず見つけられないだろう。アート好きなら一日いても飽きることはあるまい。

「M+」からの絶景

そして「M+」が建っているのは、埋立地の東側突端部分。そう、実はこのミュージアムは絶景ミュージアムだったのだ。ご覧のように、ヴィクトリア・ハーバー越しにIFCビルの絶景が! というように、「M+」はかなり広大な展示面積で、ペインティングから立体、映像、体験型展示など、見応えもたっぷり。想像以上に充実のラインナップだった。

時に、取っ付きにくく感じてしまう学術的な要素を軸にしたキュレーションを行う一般的な美術館と違って、独自の世界観で作品群をまとめる展示は、現代アート初心者にとっても非常に入りやすく、まさに「M+」ならではのセンスを感じた。

そういえば、館内展示を巡る前に横山さんがこんな説明をしてくれたことを思い出した。「西洋や東洋、女性とか人種といったような、国家や性別などの、従来からの画一的な括り方というよりも、もっと自由に20世紀から21世紀のアート全体を俯瞰しながら、“トランスナショナルな視点”を持ってアジアの作品と世界との関係性を取り上げ、伝えることが重要だと思っています」。僅かな時間ではあったが、展示を見終えた時にその言葉の意味が少しだけ理解できたような気がした。

「M+」の休憩スペースでは、こちらにも注目!

「M+」内の休憩スペースの本棚

「M+」内の休憩スペースの本棚の一角に何と、小誌『MEN’S EX』を発見! 香港でもクラシコ・アジアの核を担っているショップ「アーモリー」を中心に、スーツ人気は健在!

URL: https://www.mplus.org.hk/en/

【香港故宮文化博物館】
デジタルを駆使した“先進的な鑑賞体験”に触れる

香港故宮文化博物館

北京の故宮博物院から貸し出された約900点の貴重な宝物を展示している、9つのギャラリーからなる「香港故宮文化博物館」。中国文化好き、そして、超絶技巧が施された工芸品好きには堪らない展示の数々を堪能できる。歴史博物館と聞くと、どうしても古くさいという先入観をもたれがちだが、この香港故宮はひと味違っていた。デジタル技術を駆使して歴史に触れたり学んだりすることができるスペースが展示室の合間に設けられていて、来場者は飽きずに愉しみながら展示室を巡れる工夫がされていたのだ。まずは、その辺の面白さから紹介していきたい。

ちなみに、館内は持ち込み荷物の大きさ制限がある。(通常サイズのバッグなら問題ない)入口では持ち込み手荷物の保安検査もあり、やはり全体に「M+」よりもセキュリティが厳重だ。

「寝転がったり、触ってみたり」、遊びながら学べる!

香港故宮文化博物館内の展示
迫力ある映像と音楽を駆使し、エンターテイメント性を交えながら展示物のストーリーを学べる仕掛けが至る所に。
香港故宮文化博物館内の展示
左:寝転がりながら天井に映し出される映像を見ることができる。 中・右:モニターに向かって、筆や指先を使って文字を描きながら古の文字を学べるスペースも。これなら子供たちも愉しみながら学べる。
歴史上の人物に自分の顔をはめて写真を撮れるプリクラのようなアトラクション
歴史上の人物に自分の顔をはめて写真を撮れるプリクラのようなアトラクション。撮影した画像はQRコードでその場で読み取って携帯に保存ができる。子供はもちろん、大人たちも夢中で遊んでいた。

紫禁城の皇帝と皇后の足跡を辿り、18世紀の宮廷生活を追体験

紫禁城の皇帝と皇后の足跡を辿り、18世紀の宮廷生活を追体験

香港故宮文化博物館内に9つあるギャラリーにはそれぞれ、「紫禁城での生活道具」、「清の皇帝と皇后の肖像」、「伝統的なクラフト」、「馬の芸術と文化」と言ったようなテーマが与えられており、明・清王朝時代の日用品から、支配階級のエリートがそのステータスを誇示した贅沢品まで、多岐にわたって鑑賞を愉しめるようにレイアウトされていた。

香港故宮内の休憩スペース

北京の紫禁城(故宮)と違って、香港故宮はグッとモダンな建築。「M+」同様に、とても広々していて、ご覧のようなゆったりした休憩スペースがとにかく多い。聞けば、総床面積のうち展示スペースは3割程度だそうなので、いかにフリースペースがたくさんあるのかがわかる。

来場者は付近のベンチチェアに座りながら、会話を楽しんだり、携帯を見たり、館内マップを読んだり……、思い思いに過ごしていた。そして、故宮ももちろん、絶景ミュージアム! 「M+」にはない展望テラスが数ヶ所あって、外に出てハーバービューを楽しむこともできるし、テラスに面したアトリウムの階段状スペースに座ってのんびり休憩することもできる。

香港故宮からの景色

博物館は西九龍文化地区の西端に建っているので、西向きのテラスからは天気にもよるが、絶景サンセットも愉しめるはず。20時までのオープン日(金・土・祝日)が狙い目かもしれない。

街全体がアートを核に大きく変革しようとしている香港の今を、現地で体感してみてはいかがだろうか? グルメやショッピングもいいけれど、アートに触れるために香港へ……。そんな大人の週末旅をコロナ明けの香港で是非、叶えてほしい。

URL: https://www.hkpm.org.hk/tc/home

「旅の疲れを翌日に残さない」、賢い大人の選択肢とは?

ビジネスラウンジ「ザ・ピア」の受付カウンター
第1ターミナルの65番ゲート付近をエスカレーターで下ると現れるビジネスラウンジ「ザ・ピア」の受付カウンター。

久々の海外旅行となれば、近場で時差の少ない香港とはいっても、気候の変化や移動の疲れなどで、いつも以上に体調を崩しがち。翌日から仕事もあるし、移動の疲れを残さないための体調管理も大事だ。そんな時こそ、ビジネスクラスの利用が最適だろう。

香港-羽田間のフライトでもビジネスクラスが使えるキャセイパシフィック航空なら、広々としたラウンジで食事を愉しみ、シャワーを浴びて寛いだ後は、搭乗後間も無くフルフラットベットでぐっすり休むことができるのだ。アジアの国際輸送拠点として重要な役割を担うキャセイパシフィック航空は、香港国際空港をホームグラウンドに、現在世界30以上の国・地域、80都市以上へグローバルなネットワークを展開している。

香港最大級、キャセイの新ビジネスラウンジ「ザ・ピア」へ潜入!

キャセイパシフィック航空の新ビジネスラウンジ「ザ・ピア」

香港のキャリアとして世界各地にラウンジを構えているキャセイパシフィック航空。なかでも香港の規模は最大級で、「ザ・ウイング」、「ザ・ピア」にはそれぞれファーストクラス、ビジネスクラウスのラウンジが備わり、「ザ・デッキ」のビジネスクラスラウンジを加えると合計5つとなる。今回、コロナ禍の2021年2月に新しくオープンした一番広くて豪華な「ザ・ピア」を利用した。

アクセスは第1ターミナルの65番ゲート付近をエスカレーターで下れば到着。受付で搭乗券とラウンジ入室資格を示すもの(会員カードやラウンジチケット)を提示すればOK。ラウンジ内は右上の写真にある表示の通り、縦に細長くなっており、エントランスに近い「フードホール」側から順番に巡っていけば、迷わずに隅々まで利用することができる。

ビジネスラウンジ「ザ・ピア」の食事
料理は基本ビュッフェ形式で自由に食べることができるが、一部、カウンターで注文してその場で茹で上げてくれる麺類などもあり、ライブ感を愉しめる。お好みで、焼豚ライスなど、ご飯物を自由に組み合わせることもできる。名物はこちらの坦々麺だが、実は、ワンタン麺もとても美味しかった!
ビジネスラウンジ「ザ・ピア」の食事
ピザは何と厨房で生地から作る窯焼きという本格派。その他にも生ハムやラザニア、トマトベースのスープ、サラダなど、充実したメニューでビュッフェが愉しめる。
ビジネスラウンジ「ザ・ピア」のヨガスペース、ラウンジのソファなど

お腹を適度に満たした後は、トランジット客にとっては嬉しいヨガスペースでストレッチをしたり、広々としたラウンジのソファで自由に寛げる。少し横になりたければ、ソファーベットで仮眠を取ることもできるのは嬉しい限り。ラウンジの入り口は賑やかなダイニングスペースだが、奥に行くにしたがって、より落ち着いた空間になっていく分かりやすいレイアウトで快適に過ごすことができた。

キャセイパシフィック航空の機体
キャセイパシフィック航空のビジネスクラスの搭乗

ラウンジで寛いでいると、あっという間に搭乗時間に。搭乗開始のアナウンスが流れ、優先搭乗が始まる。コロナ明けの香港旅の最後を、快適に締め括ってくれるのが、キャセイパシフィック航空のビジネスクラス。

ビジネスクラスのシート
全長191cmのフルフラットシートはワンプッシュでベッドモードと離着陸モードとに切り替えることができる。
ビジネスクラスのシート

ビジネスクラスは1-2-1の横4席で、各座席が斜めに配置された大型シートが迎えてくれる。座席を斜めにし、さらにヘッドレスト部分にパーティションが設けられていることで、通路を往来する乗客や隣席の乗客の目線をあまり気にせずに落ち着いて過ごせた。

デジタルデバイスの充電類は、大型ヘッドフォンが格納されているキャビネットにシンプルに配置され、機内エンターテイメントは、「StudioCX」システムで、映画や音楽コンテンツを18.5インチタッチパネル式の高解像な個人モニターで自由に楽しむことができる。もちろん、手元にはエンターテインメントをコントロールできる、4.3インチのモニターハンドセットも装備されているので、操作の不自由はない。

この3年半くらいの間、簡単には海外を行き来することが難しくなってしまい、例え香港のような片道5時間程のフライトでも、かなり遠くの街になってしまっていた気がする。しかし、コロナが明けたこれから、今回訪れた香港はもちろん世界各都市へ、キャセイパシフィック航空を利用した空の旅なら、誰もが安全に安心して出かけられることを改めて実感した。

[取材協力]
香港政府観光局
DiscoverHongKong.com
キャセイパシフィック航空
https://www.cathaypacific.com/cx/ja_JP.html

取材・構成・文=伊澤一臣

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