読者諸兄には時計好きの方も多いと思うが、機械式時計の基本構造、ムーブメントの仕組みやメカニズムまで、詳細に理解している方はまだまだ少ないのでは?と想像する。そんな方に向けた、腕時計の仕組みを“世界一わかりやすく”解説した本『世界一わかりやすい 腕時計のしくみ』が誕生。その中から一部をピックアップしてご紹介する。
定番機能のしくみ[耐震装置のしくみ]
先人の英知は、機械式時計にさまざまな機能をもたらしてきた。経過時間が計れるクロノグラフ、時差のある地域の時刻がわかるGMT……なかには天体の動きを表示する極めて複雑なモデルもある。本記事では、ベーシックな3針モデルの多くに備わる、耐震装置に絞って解説する。

定番機能のしくみ
耐震装置のしくみ
腕時計は、懐中時計よりも衝撃を受ける危険性が高い。そこで1930年代からさまざまな耐震装置が考案された。守るのは、機械式時計の心臓部であるテンプだ。
[耐震装置の役割]

テンプは、ベーシックなムーブメントの可動パーツの中で最も速く頻繁に動き、かつ重いため、衝撃に弱い。耐震装置は、強い衝撃を受けた際にテンプが壊れないよう、振動を逃す役割を果たす。これまでいくつもの耐震装置が考案されてきたが、取り付けられるのはすべてテンプの軸受け。衝撃がテン真に集中するからだ。また、1950年代に設計のルーツをもつ高級ムーブメントの中には、ガンギ車の軸受けにも耐震装置を用いたものがある。