知的で素敵なLUXURY LIFE 50の実例
膨大な情報に溢れる現代。経験と知識をどう得て、賢く楽しむか? を、衣食住遊~学・整まで、50の実例に。日常に“光=LUX”を与えてくれる新しい価値観をぜひご覧ください。
[実例35/学]
“偉人と対話する読書”で、人間力を高める

PIVOT CEO 佐々木紀彦さん
『東洋経済オンライン』編集長を経て、オンライン経済メディアNewsPicksの初代編集長に。2021年にPIVOT(ピボット)を設立し、CEOに就任。
PIVOT公式チャンネル
経営、テクノロジー、マネー、キャリア、ビジネススキルなどをテーマに、スキルセット・マインドセットを高める学びコンテンツを配信する人気YouTubeチャンネル。佐々木さん自身が大ファンというサッカーの情報も充実。
「生き方に“惚れ”てしまうような心の師匠と“出会う”ことで、人としての懐が深まります」── 佐々木さん
真に懐の深い人になること、すなわち人間力の向上は、ビジネスで良い関係を築くうえでも非常に重要だ。近年高い人気を博す映像メディアPIVOTを運営し、最先端で活躍する多くのビジネスマンと交流を持つ佐々木紀彦さんが、その有効策として勧めるのが読書だ。「私が読むものの大半は過去の偉人の書いた本です。これは偉人との対話」と読書を推す理由を切り出した。
「管理職や部下を持つ立場になると人間力が試されるようになります。人は40歳を超えると体力や柔軟性も衰えますから、若い世代にはかなわなくなる。そこで試されるのが人間としての総合力です。やはり長く社会に必要とされる方は、なにかを持っています」。
佐々木さんによれば、読書で過去の偉人から学べば、自身の知見が深まり、若くなくても自分の信念や判断の軸を見直し、人間の総合力を高められるという。
「本を通じて偉人の功績を追体験し、共感できる人物に惚れて、心の師匠を見つけてください。人は限られた経験に基づいて、物事を判断してしまいます。が、過去の偉人の本を読むことで、自分の視野が広げられるのです」。
では、佐々木さんの心の師匠は? と問うと、まず上がったのが福沢諭吉だ。慶應義塾の基礎を築き、時事新報(戦前の日本五大新聞の一つ)や、日本初の社交クラブである交詢社を設立。教育、メディア、社交で、日本の新時代を切り開いた功績に佐々木さんは大きく共感したそうだ。
また、室町時代の猿楽師である世阿弥も、心の師匠の一人。「有名な『初心忘るべからず』は世阿弥の言葉です。ほかに世阿弥の言葉に離見の見があります。これは舞いながらももう一人の自分を作り、舞台を離れた場所から自身を見る、つまり客観視するようにという教え。人は自分を客観視する能力を失なったときに老いていくのだと思います」。
佐々木さんが、これらの偉人を敬愛するのは、現代よりもはるかに苦難の多い時代を自分の力で乗り越えたからだ。
「現代は生きる苦労や厳しさが軽減されています。その結果、生活にハリがないと感じる人も多いのではないでしょうか? 私自身も現代人との付き合いにあまり魅力を感じないから、本を読んでいるのかもしれません。若いうちに多く読んだおかげで、立ち返るべき場所ができてよかったと思っています」。
一方、現代社会では読書の習慣が薄れてきている。佐々木さんは、SNS上で、あらゆる情報が動画化されていることも、その理由にあるだろうと考えている。
「スマホが当たり前の時代だからこそ、一人になる時間が大切で、自分と向き合うのに読書はいい。アメリカでは、また紙の本が評価され売り上げが上がっています。やはり、紙の本はスマホと違い、気が散らなくていいし、大事にすべきです。目にも優しいですもんね」。
贅沢の意味が大金の浪費から心の充足に変化してきた、現代においてラグジュアリーライフと読書は密接な関係にある。とはいえ、しばらく読書から離れていて、何を読めばよいものか、という方も多いだろう。
佐々木さんに聞いたところ、そんなときは「古典も含め、過去から定評のある本を。風雪に耐えて残ってきたものには、それだけの価値があります。好みもあるので、いろいろと試して共感できるものを選んでください」とのこと。
これを機に、読書を通じて心の師匠を探し、自分の心を深めてみてはいかがか。
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[MEN’S EX Summer 2025の記事を再構成](スタッフクレジットは本誌に記載)