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ウインドウペーンのスーツは第1ボタン上でラペルがロールする“ジュンミツ”仕様
ウインドウペーンのスーツは第1ボタン上でラペルがロールする“ジュンミツ”仕様。ウエストは絞り込まれ、着丈は長めに設定されている。シャツはダブルカフスで、胸元にはシルクチーフをパフトで挿している。
Illustration by Mr.Slowboy

“服の本流”を見つめ直す。
それが英国ブームの端緒だった

1990s
ブリティッシュvsイタリアン

’90年代に入ると、英国スーツの聖地であるサヴィル・ロウのスタイルが注目されるようになります。ギーヴス&ホークス、ハンツマン、アンダーソン&シェパードといった超名門です。とはいえ、それらは現在とは比較にならないほど敷居が高い存在でした。英国出張に訪れた我々も、知人のツテを辿ってやっと入店を許されるレベルでした。トランクショーも今のように簡単に行えるものではありませんでしたが、ビームスではファーラン&ハーヴィーのオーダー会を開催するようになって、彼らの工房を見学したりもしていました。

シャツやニット、コートなども英国製のものを幅広く取り扱うようになり、デボネアのネクタイやボーリング アランデルなどのシャツ、ドナチーやバランタインのニット、グレンフェルのコート、ハスキーのキルティングジャケットなどをバイイングしていました。ただ、既製のスーツやジャケットだけは国内のファクトリーにブリティッシュスタイルで別注したオリジナルが中心。後に触れますが、英国では既に生産体制にかげりが見えてきたのです。

’90年代中盤に差し掛かると、ブリティッシュのニューウェーブが世を席巻しました。リチャード ジェームスやティモシー エベレスト、オズワルド ボーテングなどの「ニューテーラー」たちです。彼らは伝統的な英国テーラリングとは一味違う、斬新なテイストを取り入れたスーツで世界的な名声を獲得。日本でも大いに話題となりました。

時を同じくして、日本ではイタリアのファクトリーブランドが徐々に評価を高めていくようになります。当時の英国では、ブランドやファクトリーのオーナーが自社を手放したり、生産ロットが大きすぎて思うように服作りができなかったりといった問題が表面化していました。そんな中、細かいリクエストにも柔軟に対応し、英国とは一味違う柔らかい雰囲気の仕立てを得意とするイタリアのファクトリーが注目されるようになっていったのです。ルイジ ボレッリやギ ローバー、スーツではイザイアやベルヴェストがその走りでした。というわけで、’90年代中盤はブリティッシュとイタリアンが勢力を二分するようになり、それがしばらく続くのだろう……と思いきや、ここでかつてないほどのビッグウェーブが訪れることになります。そう、いわゆる「クラシコイタリア」です。

Beams Creative Director
中村達也 Tatsuya Nakamura

中村達也氏

Profile
1963年生まれ。アイビーでファッションに目覚める。大学時代にビームスでアルバイトを始め、卒業後に入社。フレンチアイビー、ブリティッシュ、クラシコといったムーブメントをリアルタイムで経験。日本のドレスファッション史における最重要人物の一人。




[MEN’S EX Summer 2022の記事を再構成]

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