新しさではBEVに軍配が上がるが…

ディーゼルの完熟味にすっかり心を奪われてしまい、Ë-C4エレクトリックがどうなのか、心配しながら乗り換えたが、こちらはまた別の世界観を見せてくれた。同じオリジンのe-CMPプラットフォームをベースに50kWhのリチウムイオンバッテリーを載せた100%のBEVで、本国発表値では最大レンジとして約350㎞を謳っている。が、2022年モデルでは改良によって、WLTP値による航続距離が357㎞に引き上げられることが、つい最近発表された。260Nmの最大トルク、136ps(100kW相当)の最大出力は変わりない。
本国発表値で1540㎏と、ディーゼルより車両重量が嵩むため、低速域での乗り心地はやや足が張り気味、かつトルクもディーゼルより遠慮気味なので、ダイレクト感はともかくモリモリ感は薄い。だがPHCと2670mmのロングホイールベースの恩恵か、速度域が上がるにつれて粗が消え、大きな入力をもフラットにいなす余裕の方が、徐々に優る印象だ。
エンジンでなくモーターで走る分、静粛性や振動の無さという点では、ディーゼルをしのぐ。しかも空恐ろしいのは、タイヤの転がり音のような走行音をも抑え込む、ボディの剛性感と密閉性の高さ。この状態に慣れてくると、確かにディーゼルの時とは異なる種類の「マジックカーペット・ライド」であることに、気づかされるのだ。
コンセプト自体の真新しさとアイテムとしての鮮度、という意味では、Ë-C4エレクトリックに軍配が上がる。だがディーゼルが終わった技術ではないこと、むしろ過去を踏まえながらアクチュアルに前進できる一台になりうることを、C4 BlueHDi130は高らかに宣言するでなく、琴線に触れるように、それとなく示唆してみせる。
それはEVかディーゼルかの選択を迫るのではなく、どちらもアリと思わせるもので、いずれを選んでも後悔させないことに主眼が置かれている。C4とË-C4エレクトリックはどちらも期待以上に優しい、もしくは優しく寄り添えるだけの内実を秘めた、そんな一台といえる。
文=南陽一浩 写真=グループPSAジャパン 編集=iconic