PHCも採用した、個性的な“Cセグハッチバック”
2022年1月に日本市場でデビューしたシトロエンC4&Ë-C4エレクトリックに、ひと足早く、本国フランスで試乗する機会を得た。
元をただせば欧州Cセグメントのハッチバック、フォルクスワーゲン ゴルフ8とかプジョー 308やルノー メガーヌ、国産車でいえばマツダ3やスバル インプレッサ辺りと同等の車格、クラスであるはずだ。近頃はホンダ シビックやアウディ A3、トヨタ カローラのように、必ずしもハッチバックだけにこだわらないモデルも増えているし、ハッチバックといいつつ、リアハッチゲートが思い切り寝かされて、70年代のファストバックか何かを彷彿させるものも増えてきた。
だが新しいC4とË-C4エレクトリックの外観には、驚かされた。先代のC4がむしろ超コンサバなハッチバックで、ネガ潰しの末に成り立つような完成度の一台だったのに比べ、新型の外観は、一度見てしまったら二度と他のものに見えない。そういう刷り込みパワーに満ちている。
キャビンのカタチは流麗だけれど、ショルダーラインの高さと垂直気味のフロントマスクはSUVライクでさえあり、左右両端がそそり立つボンネットと片眼が横置きY字状のLEDヘッドランプユニットは、かなり個性的だ。
それでも広いリアスペースと380リッターものトランク容量という、実用性を確保していることを感じさせつつ、先々代C4、つまりセバスチャン・ローブ全盛期のWRCマシン、C4クーペのような2段式ガラスのハッチゲートすら受け継いでいる。筋金入りのシトロエン・エンスージアストも、初めて目にした一見さんも、はっとさせる外観なのだ。
その上、今次のC4&Ë-C4エレクトリックは「アドバンストコンフォートシート」と呼ばれる、最近のシトロエンが得意とする分厚いクッションのパッケージをしっかり採り入れてきた。
座り心地の柔らかさだけでなく、水平のラインが思い切り伸びていくように、つまり広々感じさせる視覚的効果ごと、よくデザインされている。
それでいて手元近さを感じさせる10インチワイドのタッチスクリーンや、視線の上下移動が少なくて済むヘッドアップディスプレイに、柔らかいのに左右方向のホールド性は的確なシートまで、ドライバーの側に必要なものが寄せられてくるような、エルゴノミーの良さが光る。意味のない広々感やユルふわ路線ではなく、こういう数値で表せないエルゴノミーのまとまり具合や、ウール風やレザー風の素材感は、フランス車がいまや格別に強い領域だ。
助手席側のダッシュボード正面は3段仕立てで、タブレットホルダーに書類などが入れられる引き出し、そしてグローブボックスという凝った造りだ。見た目の豪華さより、エルゴノミーと実用性、素材感のバランスでかなりの高次元にある。