「SUV」と「ハッチバック」はどちらが優秀? フォルクスワーゲンの新型車2台を比較

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フォルクスワーゲン T-Roc

実用性をお洒落にまとめたT-Roc

車高も視点も高いSUVは、今や路上にそびえ立つように、移動式の摩天楼さながらの増殖ぶりだ。SUVブームといわれて久しいが、本格4WDは市街地や平坦路で走らせるには燃費がよくないし、キャンプ場やスキー場にも99.9%舗装路だけで辿り着ける現実を考えると2輪駆動、通常のFF(フロントエンジン・フロント駆動)で事は足りる。

ではそれでも、「都会的SUVクロスオーバー」なるものを選ぶ理由とは何か? そう立ち止まらせるのが、フォルクスワーゲン(以下VW)の最新のコンパクトSUVとスモールSUV、すなわちTロック(T-Roc)とTクロス(T-Cross)だ。

フォルクスワーゲン T-Roc
T-Rocの骨格にはクーペスタイルのアウディQ3と同じMQBを採用。ボディサイズは全長4242mm×全幅1825mmで最小回転半径は5mと取り回しの良い細やかさが特徴だ。

VWのSUVラインナップは、上からトゥアレグ、ティグアンを展開してきた。Tの頭文字で揃えつつ、ゴルフ並みの全長のSUVクーペとしてTロック、ポロを土台に上方向へ伸ばしたようなTクロスを追加し、いよいよ欧州からC、Bの各セグメントという、上から下までSUVラインナップが完成したのだ。

フォルクスワーゲン T-Roc
T-Rocの特徴でもあるツートンカラーのルーフは全グレードで選択可能。画像の車はブラックルーフが設定されているフラッシュレッドカラーを選択している。

Tロックの特徴は、良品だがコンサバな乗用車ブランドと位置づけられるVWが、初採用したツートンカラーのボディ。クーペを名のるため、リアウインドウはアウディQ3並みに思い切り前傾しつつ、極太で力強いCピラーはVWの象徴そのものだ。LEDライトやクロームで囲ったフロントマスクなどの、端正な質感処理もVWらしい。

フォルクスワーゲン T-Roc 内装
イエローもしくはブルーのエクステリアカラーを選択すれば、内装とボディカラーを合わせることもできる。より高級さを求めるならSportグレードに用意されるレザーシートオプションを選ぶという手もある。

とはいえ幅広Bピラーや後席ウインドウの煩雑なグラフィックなど、4ドアクーペ風デザインとしてイマイチなところはある。日本市場では限定販売だったが、リア窓をチルト開閉にしてフラッシュサーフェス化していたシトロエンC4カクタスの方が攻めていたことは確かで、その反面、Tロックのリア窓は下まで真っすぐ、ほぼ下ろせる。不便でもカッコいいより、カッコつけ過ぎないで実用的であることを、優先しているのだ。

フォルクスワーゲン T-Roc ラゲッジ
T-Rocのラゲッジ容量は445リッター、リアシートを倒すことで1290リッターまで拡大可能。長物用のトランクスルーも用意されている。

そこに価値を見い出せる大人には、Tロックはゴルフ7より魅力的だろう。ゴルフのトランク容量350リッターに対し、Tロックは445リッターもある。150ps/340NmというTDIの2リッターディーゼルは今どき珍しいぐらい、ディーゼル音を発散するタイプだが、走る・止まる・曲がるに関しては実直な仕事ぶりで、長距離走行のコスト減には力を発揮する。とはいえ同じディーゼルが、より前面投影面積の少ないゴルフ7で選べることは、覚えておきたい。

フォルクスワーゲン T-Roc
T-RocにはStyle、Sports、R-Lineの3グレードが用意され、フロンバンパーの意匠もグレードごとに差が設けられている。エンジンは全グレード2リッターディーゼルで価格は405万円から453万円。

要はTロックの良さとは、ゴルフ7から乗り換えてもネガがないことに尽きる。オルタナ的というより、あえてこれが選べる、従前のものに従う必要がない、新しさのための新しさなのだろう。従来のゴルフ顧客が、ゴルフ8ではなく電化を採ればID.3やID.4に進む可能性もある今、台替えとしてワンクッション挟むのにちょうどいいVWワールドというか、飽かずVW内にステイできるための一台なのだろう。

2024

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