>> この記事の先頭に戻る

“エンジンの力強さ”と“ブレーキの確かさ”で、その走りの虜に

F8スパイダー

そんなわけで今から考えると実にもったいないことだけれども、手元にあったほとんどの時間をベルリネッタとしてドライブした。RHTを開けて楽しむのは、本当に空気が美味しくて景色のいい場所に巡り合ったときだけでいい、などと思いつつ。

最近のフェラーリ(具体的には488のモデル末期からF8シリーズにかけて)のライドフィールは、熟成の極みというレベルに達している。市中ではよくできたスポーツサルーンのようなしなやかな動きを見せ、切れすぎず思い通りに動く前脚と相まって、とても扱いやすい馬である。初騎乗ですぐに親しめるという点では、史上最も扱いやすいミドシップスーパーカーの1台だ。

高速道路におけるGT性能も非常に高い。ドライブスタイルスイッチ“マネッティーノ”(ステアリングホイールにある)のモードをコンフォートやウェットにしておけば、まるでドイツ車のようにハンドルをビタっと中立に保ったまま、路面に吸い付くようにして走ってくれる。快適なグラントゥーリズモをいったん味わってしまうと、激しい他のモード、スポーツやレースなど別に試さなくていいや、と思えてくるから不思議なものだ。それほどドライバーへの挑発が抑えられるのだった。

F8トリブートと同じ、最高出力720ps/最大トルク770Nmを発生するV8ツインターボをリアミドに搭載する。

もちろんF8スパイダーの真骨頂は走りを楽しむ舞台でこそ発揮される。720psの3.9リッターV8エンジンは8000回転までストレスなくきっちり回った。そのパフォーマンスを公道で堪能することは法的に言って不可能だが、コーナーでの立ち上がりや上り坂の加速でその片鱗を感じることは十分に可能だろう。その力強さと同時にブレーキ性能の確かさをひとたび味わってしまうと、ワインディングロードの入り口に住みたくなってしまうほどだ。虜である。

クイックで正確なハンドリングもまた最新ミドシップスーパーカーの醍醐味だ。高度な制御の行き届いたシャシーは、ドライバーの気持ちを削ぐことは決してなく逆にもり立てるようにして、どんなコーナーをも制してくれる。安全に、速く走ることができる。720psものミドシップスーパーカーを思う存分に操るなんてことは、10年前までは想像もつかなかった。

F8スパイダー ロゴ

フェラーリにもいよいよ電動化の波が押し寄せようとしている。次世代はハイブリッドモデルになるだろう。何とSUVに加えてBEVのスポーツカーも用意されているらしい。逆に言うと、純内燃機関の伝統的なフェラーリを新車で味わうことは、これがラストチャンスになるというわけだった。

文=西川 淳 写真=橋本 玲 編集=iconic

<p>バンパーからボンネットへとつながり、ノーズ下部の空気をボディ上部へと排出することでダウンフォースを向上させる、F1由来のSダクトが備わる。</p>

バンパーからボンネットへとつながり、ノーズ下部の空気をボディ上部へと排出することでダウンフォースを向上させる、F1由来のSダクトが備わる。

<p>バンパーからボンネットへとつながり、ノーズ下部の空気をボディ上部へと排出することでダウンフォースを向上させる、F1由来のSダクトが備わる。</p>

バンパーからボンネットへとつながり、ノーズ下部の空気をボディ上部へと排出することでダウンフォースを向上させる、F1由来のSダクトが備わる。

<p>クーペのF8トリブートと同様に社内のスタイリングセンター(チェントロ・スティーレ)でデザインされた。</p>

クーペのF8トリブートと同様に社内のスタイリングセンター(チェントロ・スティーレ)でデザインされた。

<p>メーター部は中央にエンジン回転計を配置、その両側には各種情報を表示するインフォメーションディスプレイが配される。</p>

メーター部は中央にエンジン回転計を配置、その両側には各種情報を表示するインフォメーションディスプレイが配される。

  1. 3
LINE
SmartNews
ビジネスの装いルール完全BOOK
星のや
  • Facebook
  • Twitter
  • Instagram
  • LINE
  • Facebook
  • Twitter
  • Instagram
  • LINE
pagetop