ゆとり世代でもスポ根!スパルタコーチと特訓の日々
丸山 現役時代、コーチとはどのようなご関係でしたか?
坪井 ついていけば間違いないと、絶対的な信頼を置いていました。厳しかったけれど、コーチも家族を残して私たちと共同生活をしながら指導してくださったので、熱意は感じていました。だから、コーチを泣かせまいとがんばっていましたね。
丸山 涙ですか。男性のスポーツではあまり見られない、女性特有のものですよね。
坪井 コーチも堪えながらですが、どうしても涙が溢れてしまうといったことがありました。ただ私はあまり涙が出ないタイプで、みんなを見て「あっ、ここは泣くシーンなんだ」と気がつくこともありましたね。
丸山 坪井さんは至ってマイペースですね(笑)。
坪井 なかでも思い出深いのは、リボンの3本投げ。手にしたリボン3本を3人に向かって投げる技なんですが、3人同時にキャッチできるまで数え切れない程練習しました。成功したときは、いつも厳しいコーチの笑顔を見ることができて嬉しかったですね。リボンは柔らかいものだけに扱うのが難しいんです。手汗で皺だらけになることもありますし。同じく柔らかいロープも難しかったですね。
丸山 好きな種目は何ですか?
坪井 クラブとフープです。
丸山 クラブは大道芸のジャグリングでもお馴染み。フープはフラフープのような手具ですよね。
坪井 ボールのように転がらないという点でも扱いやすいです。そうした種目ごとにコーチは演目も考えるんですが、複雑な連携技のアイデアがすばらしくて。空き時間には必ずナンプレか知恵の輪を解いていました。
丸山 きっと連携技のヒントを得ていたんでしょうね。坪井さんはいわゆる“ゆとり”の第一世代ですが、意外にもスポ根だったんですね。
坪井 コーチにはよく「私たちの時代は練習中に水一滴も飲めなかった」と言われました。それは理解できなかったですね(笑)。
丸山 今の現役選手の指導もまた変わってきているんでしょうね。
坪井 私の頃に比べると、さらに緩やかになっているように見受けられます。
丸山 僕の息子でゴルファーの奬王にも根性論は教えているんですが、彼のマインドはアメリカ人なので、なかなか伝わらなくて苦労していますよ。今後、新体操の本格的な指導者になることに興味はありますか?
坪井 よほど有望な選手がいたら、指導者としての道を考えるかもしれませんが、今は絵やヨガなど自分の好きなことを優先させたいですね。
丸山 個人の指導に徹するのは、なかなか難しいですよね。僕は多くの子どもたちにゴルフに親しんでもらいたくて、ジュニアファンデーションという活動に携わっていますよ。
新体操の引退後も輝ける場を理想はフィギュアスケート
丸山 今後、新体操のファンを増やすために何が必要だと思われますか?
坪井 新体操は芸術的なパフォーマンスができる競技です。長く続けられるゴルフとは違って、私のように二十歳前後で引退する選手が多いんですが、年齢に応じたパフォーマンスは可能なので、フィギュアスケートのアイスショーのように活躍できる場があれば良いですね。私は引退後、ラグビーのハーフタイムショーで踊ったことがあって、それも一つのアイデアだと思います。
丸山 身体の柔らかさはシルク・ドゥ・ソレイユレベルですから、生かせる場所はきっとありますよね。
坪井 ロシアなどは国を挙げてサポートする環境が整っていて、小さい頃から新体操の英才教育を受けることができます。日本でも新体操をパフォーマンスとして広めることで、魅力を知っていただければ嬉しいですね。
丸山 日本でも海外のように、オリンピアンのセカンドキャリアの道が拓けると良いですよね。
[MEN’S EX 2021年6月号DIGITAL Editionの記事を再構成](スタッフクレジットは本誌に記載)
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