
ビームスのクリエイティブディレクター、中村達也さんが所有する貴重なお宝服の中から、ウンチク満載なアイテムを紹介する人気連載「中村アーカイブ」。「ベーシックな服もアップデートされていくので、何十年も着続けられる服は意外と少ない」という中村さんだが、自身のファッション史の中で思い出深く、捨てられずに保管してあるアイテムも結構あるのだとか。そんなお宝服の第40弾は……?

【中村アーカイブ】 vol.40 / リーバイス 501

1983年に購入したものです。今でこそ日本中どこでも買えるリーバイスの501ですが、私が高校生だった’70年代後半頃は、新潟でリーバイスを売っている店はほとんどありませんでした(なぜかLEEやWRANGLERは売っていました)。
大学生になり上京してまず購入したのがリーバイス501と505の2本。ボタンフライでシュリンクトゥーフィットのストレートの501、プリシュランクでスリムなストレートの505が当時のリーバイスの2大定番であるという知識だけは、ファッション誌を読んですでに知っていました。なので、田舎から出てきた洋服好きの少年にとってこの2本は絶対に持っていなくてはならないマストアイテムでした。
その2本を週に何回も穿くので洗濯の回数も頻繁になり、裏返しにして洗剤を入れないで洗うと色落ちしにくく、いい色落ちをするということもファッション誌の情報で知っていましたが、そんな面倒なことをする余裕もないまま、普通に洗剤を入れて他の服と一緒にガンガン洗うので色落ちのペースが速く、色が薄くなると濃い色のものを買い足し、その度に本数が増えていくという感じでした。
その後スーパーカジュアルブームが起き、爆発的にはやったCLOSED(クローズド)のペダルプッシャーのジーンズを、浮気心もあり1年くらい穿きましたが、その後は結局リーバイスに戻り、BEAMSにアルバイトとして入社する1984年あたりはC17(シーセブンティーン)やLIBERTO(リベルト)と言ったフレンチジーンズに興味が湧きつつも、やはり自分にとってはリーバイスの501と505が定番であることは変わりませんでした。
BEAMSに入社すると、先輩たちは縦落ちしたいい色の古着やデッドストックの501を穿いていました。私が持っていた501はいわゆる赤耳(セルビッチ デニム)の’80年代に普通に売られていた501だったので、色落ちの雰囲気は明らかに違います。
多くのスタッフが当時は古着店で無理をして高い値段でオールドの501や505を買っていましたが、自分は元々アメカジマニアではなかったのでそこまでの執着心はなく、結局フレンチアイビーのブームもあり、リベルトなどのフレンチブランドのデニムを穿く機会が増えていきました。
その数年後501のセルビッチデニムが廃止されると、’90年代にアメリカ製の復刻モデルを数本購入しましたが、オリジナルの501は結局この’83年製のものが最後に買った501となりました。
何本も所有していた501や505は穿きつぶしてほとんど処分してしまい、いま所有しているのは、この’83年製のものと’90年代に購入したアメリカ製の復刻モデルの2本だけになりました。
サイズも小さくなり穿けなくなってしまいましたが、20代の頃にマストアイテムだった501の最後の一本なので、手放さず持ち続けようと思います。
ヴィンテージデニムにはあまり興味のない私ですが、自分で穿きこんで色落ちしたこの501を見ると、古いデニムも今更ながらなかなかいいものだと思ってしまう今日この頃です。