俳優・中井貴一さん「オーダースーツは気の交歓。芝居にも共通する醍醐味」

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25年前に仕立てたスーツを携えて、中井貴一さんが日本を代表するテーラーを再訪。店主・渡辺 新さんとの対話で明かす、オーダースーツの“今”と“これから”の話。

>>>[前編]はこちら

敬意を込めて洋服を着るという意識は、
暮らしに豊かな“質感”をもたらします
壹番館洋服店 代表取締役社長 渡辺 新さん

中井貴一の好貴心_中井さんと渡辺さん
玄関先に設置された、大きなカウンターごしに談笑する二人。壹番館洋服店のリニューアルに伴って作られたこのカウンターは、樹齢500年のケヤキから切り出したもの。まさに壮観の佇まいだ。

スーツのお洒落は“マナー”の証。スーツ離れとともにマナーも希薄にならないか。それが心配ですね

『華麗なる一族』出演で再認識した室内服のマナー

中井 4月から始まるWOWOWのドラマ『華麗なる一族』で万俵大介を演じて、改めて実感したことがあるんです。それは、服装と“マナー”との関係。万俵大介は1960年代初頭の大富豪という役柄で、仕事中は常にダブルかスリーピースのスーツという服装なのですが、家に帰って上着を脱ぐと代わりにガウンを羽織って、アスコットタイをするんですね。今の感覚だと“なんで上着を脱いで、また別の上着を着るの!?”と思いますが、これが家での“マナー”なんだと思いました。ファッション好きとしても、この役をやれて本当によかったなと思いましたね。

渡辺 家での“マナー”ですか。リモートワークが浸透する今にあって、考えさせられるお話ですね。

中井 “マナー”という視点から服装を見たときに、現在のスーツ離れという現象が、マナーの低下に結びつきはしないかと危惧しています。マナーとは“人にいやな思いをさせないための気遣い”ですよね。それは立ち居振る舞いもさることながら、服装でも表されるものだと思います。レストランに行くときにスーツやジャケットでお洒落をしていくのも、お店やシェフに対する敬意を表すことです。そういうマナー意識が、スーツ離れとともに希薄になってしまうのは心配ですね。

渡辺 気遣いや敬意といったものがなくなってくると、いくら物質的に充足していても“質感”がなくなってしまいます。それはつまらないですよね。コロナ禍を経て、スーツはもはや仕事の制服ではなくなりつつあります。テーラーにとっては、100年以上前に明治天皇が“日本の正式な服は洋服である”と宣言されたときの呉服屋さんと同じ心境。でも、今だって和服は粋を表現する装いとして根付いていますから、スーツも同様に、これからは自分のこだわりや思い入れを表現する服になっていくのかなと思います。

2024

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