難解極まりない超複雑な機械式時計の仕組みを“優しく”解説する『超弩級 複雑腕時計図鑑』がMEN’S EX特別編集によって発売に。ここでは、その中身をピックアップしてご紹介する。
4大複雑機構の基礎知識(2)
伝統的な複雑機構を象徴するパーペチュアルカレンダーとトゥールビヨン、ミニッツリピーター、スプリットセコンド・クロノグラフの仕組みを知れば、搭載モデルのスゴサと深さが理解できる。
トゥールビヨン
Tourbillon
重力の方向を平均化させる回転する調速機構
懐中時計や腕時計は、携帯時に必ず姿勢(時計の向き)差が生じ、それに伴い重力の方向も変わる。これが精度に悪影響を与えると気づいたアブラアン-ルイ・ブレゲが考案し、1801年に特許を取得したのが、トゥールビヨンである。重力の変化に最も影響を受けるテンプと脱進機とを、キャリッジ(ケージ)と呼ばれるパーツに格納。キャリッジごと回転させることで、姿勢差で変わる重力方向を平均化しようと、ブレゲは考えたのだ。
通常ゼンマイの駆動力は、いくつかの歯車を経てガンギ車に伝えられ、アンクルを動かし、テンプを振動させる。対してトゥービヨンでは、駆動力はキャリッジの回転に使われる。上の写真でトゥールビヨンの外周にあるのが、キャリッジの歯車。その内側には固定歯車があり、これに沿ってガンギ車はキャリッジとともに回転して自らを駆動し、アンクルとテンプを動かす。常に動く脱進機とテンプを収め、スムーズに回転させるために、完璧な重量バランスが求められる。