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「“主婦とシェフのコラボ”。食卓の担い手の多様化を提案していきます」──髙島宏平さん

スーツはビジネスマンの戦闘服と言う髙島宏平さんは、生産農家を訪れるときも必ずスーツだ。必要ならそのまま畑にも入る。それは信頼を得るためなのかと聞くと、信頼じゃなく違和感を持ってもらうためと言う。

「あのスーツを着ていたヤツと印象づけたい。実際それですぐに覚えてもらえますよ(笑)」

食品ビジネスをゼロから立ち上げた髙島さんなりの戦略なのだろう。彼が食に目を向けたのは、大学院修了後に入社した外資系会社でIT系のコンサル業務をしていたとき。インターネットは今後どういう領域で使えば社会に有益かと考える中で行き着いたそうだ。

「食について調べると非常に矛盾や無駄が多いことに気がついたんです。年々食に対しての安全意識が高まっているのに、消費者には本当に安全な食品を見分ける術がない。一方生産者も素晴らしい食材を作っている人ほど経済的に厳しかったりする。そうした問題もインターネットを使えば解決できるんじゃないかと考え、安心・安全で美味しい有機野菜を食卓に届けるサービスを始めたんです」

食品業界に人脈も知識もないため苦戦したが、少しずつ契約農家が増え、業績も右肩上がりに。規格外商品の「ふぞろい野菜」や絶滅品種の野菜に焦点を当てた「リバイバルベジタブル」などのヒット商品も生まれた。

さらに添加物を極力使わない加工品や、プレミアム時短をコンセプトとしたミールキット「Kit Oisix」も好評を博し、2013年に東証マザーズ上場。’17年には有機・無農薬野菜販売の草分け「大地を守る会」と、’18年には「らでぃっしゅぼーや」と経営統合し、’20年4月に東証一部に市場変更も果たした。また今年はステイホームによる需要も増えた年だったろう。

「それ以前に、働き方の多様化や女性の社会進出を背景として食卓に対する新しい価値観が芽生えはじめた気がします。たとえば当社は有名レストランのレシピと食材をご家庭に届けるサービスを行っていましたが、これが緊急事態宣言解除後も好調。おそらくメインは有名店のレシピで、サラダなどはご自分で作っていらっしゃるのでしょう。これを当社では“主婦とシェフのコラボ”と呼んでいるのですが、簡便だけれど豊かな食卓にしたいという今のニーズにマッチしていると考えます。今後もこうした時代の流れを汲み取ったサービスを展開していき、食卓も生産者もハッピーになる手助けをしたいですね」

食を通じて様々な支援活動を積極的に推進

食を通じて様々な支援活動を積極的に推進

NPO法人「TABLE FOR TWO International」の理事として世界の食糧問題に関わる活動に参加するほか、2011年の大震災後には一般社団法人「東の食の会」の発起人として復興支援活動をするなど、髙島さんは様々な社会貢献活動も行っている。

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