オフロード性能を求めず、ラグジュアリィでスポーティに
2020年6月17日に発売となったトヨタ ハリアー。スポーティな走りだけではなく、高級車ライクなテイスト、そして、先進性あふれるスタイリッシュなフォルムなど、誰もが憧れる要素を詰め込んだクロスオーバーモデルだ。
この最新型で4世代目となったハリアーだが、実は同じハリアーの中でも仕立てが異なっていたり、レクサスブランドへと派生したRXシリーズがあるなど、日本では少々複雑な生い立ちがある。
初代ハリアーが登場した背景
初代ハリアーが登場したのは1997年のこと、北米マーケットでラグジュアリィSUVに注目が集まりはじめていた時代だ。
1989年から北米マーケットに展開していたレクサスブランドで当時ラインナップされていたLX450(ランクルのフラッグシップモデルであったランドクルーザー80ベース)ではやはりオフロード性が強すぎて、いくら着飾ってところでラグジュアリィを語るには不足があった。
しかし、トヨタは北米ラグジュアリィSUVマーケットをリードできるようなモデルを求めた。そこで開発されたのが初代ハリアー(レクサスブランドではRX)だった。
当時、北米マーケットにおけるラグジュアリィSUVは、ユーティリティや牽引性能を求めるならばGMのフルサイズ、親しみやすさといったカジュアル感ならばフォード エクスプローラーなどが人気を博していた。
一方で、ラグジュアリィなのに走破性が高く、さらにスポーティというキーワードにおいては、ジープ グランドチェロキーが絶対的なポジションを築き上げており、各ブランドがラグジュアリィSUV開発にあたってベンチマークとしていたほど。
とは言え、ハイレベルのオフロード走破性を前提としたグランドチェロキーの設計は、いくらスポーティを語ろうにも、乗用車ライクなスポーティテイストを出すのに苦労していたし、車両重量があることやFRベースゆえにキャビンスペースが大きく取れないといったウィークポイントが数多くあった。
初代ハリアーは、このグランドチェロキーのポジションを奪い取りにいったように思える。ボディサイズは、初代グランドチェロキーと比較すると、全長は+75mm、全幅は+15mmと、ハリアーのほうが若干大きいに過ぎないが、乗用車のFFプラットフォームをベースとしたことで室内は広々としていた。
さらに、オフロード走破性を突き詰めなかったことでオンロードにおける快適性やスポーティテイストなどを手に入れていた。つまり、グランドチェロキーのウィークポイントを消し去っていた。
ただし、当時はSUVにはまだまだオフロード走行をイメージさせるワイルド感が不可欠。そこで、「WILD but FORMAL」というキャッチコピーを与え、階段を上ったりラフロードを軽快に走るシーンを採用しながらも、フォーマルなシーンにも使えることをアピールしたCMを展開。タフとはいわずにワイルドという言葉を用いたところなどは秀逸であり、結果、日本はもちろんのこと、北米マーケットでも、ハリアー(北米ではレクサスRX)は大人気モデルとなる。
クロカン性能必須とされていたSUVマーケットに、クロスオーバーモデルとしての要素を多く与え、このほうがいいんじゃない?とばかりに一石を投じた、そんなモデルだったのである。