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加藤 ご自身を律する上で大切にしていることは?

北尾 『論語』に出てくる「下問(かもん)を恥じず」という孔子の言がありますが、自分より年齢や地位が若い人に質問するのを恥じないようにしています。僕は新入社員に毎回課題を出して採点するということを続けていて、今の若者たちは物心がついたときからパソコンやスマホに触れているので、ITに深い感性を持っている。我々のようなオンラインのビジネスを主とした企業として教わることがたくさんあるんです。商人の町であった大阪の船場では、「年寄りは若い人、若い人は年寄りを友だちにしなさい」と昔から言われてきました。若者は年長者の経験から学び、年長者は若者の感性から学ぶのが大切だということです。

加藤 逆に若者にしても年上から学ぶことがあると思います。

北尾 昔の大家族なんかも、年寄りは孫がいることで刺激があってボケ防止になるし、年寄りが孫の面倒を見てくれることで共働きの夫婦も助かるし、お互いがプラスになっていたわけですよね。でも今の東京や都市ではそんな大家族が住める大きな家はないわけで、そういう意味で今回の新型コロナウイルスの騒ぎでテレワークやリモートワークが盛んに言われるようになったことで、郷里へ帰って大家族で暮らしながら仕事を続けるといったカルチャーが生まれるかもしれない。地方創生と大きな声で叫ばなくても、そういうものが自然とできてくるかもしれない。これからはそういう時代ですよ。

加藤 ここまでのお話を伺っていると、論語などから学んだ教えが北尾さんの日常生活の中で生きていると感じます。

北尾 聖書でも何でも、古典というものは長い歴史のふるいにかかっている。その片言隻句でさえも我々に様々な知恵や指針を与えてくれます。昔の人も今の人も、日本人も西洋人も、人間性や喜怒哀楽の感情は変わらないんです。例えば新型コロナというウイルスにこれだけ科学技術が発達した時代においても脅かされ、見えざる敵にやられていて、人体ひとつ守ることができないことも、昔と変わらないわけです。だから僕は天を畏れ、天意を伺うようにしていて、毎日ソリティアを3回くらいやるんですけど、1回もクリアできないときはできるだけ仕事の大きなディシジョンメーキングをしないと決めています。

加藤 北尾さんのこれまでの人生の中で、大きな天意はどんなものだったんでしょうか?

北尾 一つは結婚、もう一つは英国ケンブリッジ大学への留学です。家内は体が丈夫ではないので、会社では「精神がたるんでいるから、風邪を引くんだ」という調子だった僕が、家内を通じて本当に弱い人がいることを知った。ケンブリッジ大学では英語力のなさゆえに言いたいことが十分に伝わらないし、何を言っているのか十分に理解できないことがあった。その結果、自分の弱みやバカになる必要性を知りました。でもいちばん大きかったのは家内との間に子どもができなかったこと。いろいろ努力しましたが天は僕に子どもを与えませんでした。「世のため人のため、恵まれない多くの子どものために生きることが天意なんだ」と受け止めています。

加藤 虐待児の施設に取り組む原点もそこにあったんですね。私も「天意」を見極め、背くことなく、歩いていけたらと思います。

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